2010年4月アーカイブ

『卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし』宇江佐 真理

卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫)卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫) (2007/07/14) 宇江佐 真理

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のぶは憧れの同心正一郎に嫁いだが夫婦仲はしっくりいっていない。
鷹揚とした優しい舅忠右衛門、口は悪いがさばさばとした性格の姑ふでの存在がのぶの気持ちを救ってくれる。
しかしとうとうのぶは離縁を心に決めて家を出ることに・・。



八丁堀を舞台とした人情モノ連作集。

女を信じることがことができない正一郎との優しくいたわってくれるのは、うまいものを書き留めて暮らすような食道楽の舅である。

色々と伝説を残している変わり者の舅忠右衛門が優しくて良い。

一作ごとに食べ物とのぶの心理や夫婦関係をからめて表現してあるのだがそれがとても巧い。

ただ、正一郎の態度があまりにひどくどうも感情移入できない。
こちらも心が冷えてくるような夫婦関係を読み進めていくのは暗い気持ちになる。

もちろん温かいシーンもあるのだが、人情モノならもう少しほっとした気持ちで読みたいと思ってしまった。

なぐさめを感じる忠右衛門の最後も寂しいもので、作品としては上手くまとまっているとは思うのだが、個人的にはあまり好みでなかった。


読了日:2010.4.29
★★★☆☆

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2010年4月30日

ruru (15:54)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『ころころろ』畠中 恵

ころころろころころろ (2009/07/30) 畠中 恵

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若だんなの目から光が失われた!
仁吉・佐助はもちろん周りの妖たちは若だんなのために生目神を探すことに・・。
「しゃばけ」シリーズ8作目。

今回は若だんなの光を取り戻すためにあちらこちらで奮闘する妖たちの短編連作集となっている。

佐助が妻おたきと暮らす「けじあり」は過去の話?それとも・・と混乱してしまった。

時間の流れも感じ方も人とは違う神を相手に、さすがの妖たちもなかなか思うようにことを進めることができない。
しかしその分それぞれにストーリーがあって一つ一つの話として楽しめた。
 
若だんなも最後の最後にはまた推理力のあるところを見せてくれるのだが、やや出番が少なめだったのが残念。

今回は神とは何か?をテーマにしているのだが、しゃばけシリーズらしく何となく人間味を感じられるところが良い。

読了日:2010.4.27
★★★★☆

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2010年4月29日

ruru (21:35)

カテゴリ:国内小説一般畠中 恵

『プラチナタウン』楡 周平

プラチナタウンプラチナタウン (2008/07/23) 楡 周平

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大手商社四井に勤めるエリートサラリーマン鉄郎は旧友の誘いで故郷宮城で町長となる。
150億円の借金と進む過疎を打開すべく、巨大老人ホーム建設計画で逆転を狙う。

財政破綻間近の東北の過疎地を舞台に、気が滅入るような現実的な社会問題をまとめてからっと解決させている。

医療と娯楽の充実があれば過疎地にも人は集まるし、老後の暮らしとしても田舎の方が充実するわけで上手い組み合わせでこんな風に解決できれば良いのにと思ってしまう。

もちろん小説なのでとんとん拍子に話が進み過ぎるところはあるが、考え方一つ、意外なところで上手くいってしまうところも面白い。

無駄の代名詞の箱物でも、人がいるからこそ生きるというのがよくわかる。

実際はここまで過疎地にかける大企業がないということはやはり利が取れないということか。

風刺的でポジティブなストーリー展開が良かった。


読了日:2010.4.25
★★★★☆

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2010年4月26日

ruru (21:39)

カテゴリ:国内小説一般楡 周平

『ひとつ灯せ―大江戸怪奇譚』宇江佐 真理

ひとつ灯せ―大江戸怪奇譚 ひとつ灯せ―大江戸怪奇譚 (2006/08) 宇江佐 真理

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山城河岸の料理茶屋「平野屋」の清兵衛は、息子に店を譲ったとたんに暇を持て余して死を考えるようになり心の病で臥せってしまう。
ところが、見舞いに来た友人の甚助が部屋の片隅に向かって念仏を唱えた途端に体が軽くなり元通り元気になることができた。
不思議な体験をした清兵衛は甚助に誘われるまま「話の会」という怖い話をし合う集まりに顔を出すようになる。


「話の会」は百物語とはやや違い、作り話は一切してはならない。
自分や周りの人が経験した不思議な話を持ち寄る会である。

百物語と言うと大体幽霊や妖怪のような話になるが、この話ではどちらかというと人間の浅ましさや恨み、恐ろしさがじわじわときいてくるようなぞっとする話が主である。

しかも「話の会」メンバーそれぞれにふりかかってくる現実にある不思議な話なので余計に怖い。

といってもホラーと言うかんじでもなく、妖怪モノでもなく、人情モノの温かさもなく・・ジャンルが曖昧な感じもするが、構成の上手さはさすがである。
メンバーそれぞれが主となり従となり進んでいくので世界観はしっかりとしていて引き込まれる。

ただあまりにもやりきれないような終わり方だったので読後感があまりよくなかったのが残念。
話の流れとして心温まるような終わり方になるはずもないのだが、どうにも救いがないような気がした。
清兵衛が前に進むことができたという捉え方をすれば考え抜かれた最後だと言えるのだが、感情移入して読んできた他の登場人物たちの締め方に苦々しい思いを感じてしまった。

読了日:2010.4.22
★★★★☆

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2010年4月23日

ruru (00:42)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『ひょうたん』宇江佐 真理

ひょうたんひょうたん (2005/11/19) 宇江佐 真理

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本所北森下町の古道具屋「鳳来堂」。
亭主の音松は定式幕でこしらえた半纏を愛用していることから「幕張」と呼ばれている元遊び人。
しっかり者の妻お鈴は、毎夜のように集まる音松の仲間のために店の前で煮炊きをするのが常となっている。
「鳳来堂」に持ち込まれる古道具から見えてくる江戸人情物語集。


頼りなくふらふらしていながらも、人としての芯をしっかりと持っている音松。
豊かではない家計を預かるお鈴は、古道具が持ち込まれるたびにちょっとした打算を働かせようとするのだが、毎度音松にたしなめられてしまう。

商売人として当然とも言えるお鈴の合理的考えは全く悪ではなく、読んでいて「そうだ!そこで売ってしまえ!」などと共感しきりなのだが(笑)、人情第一損得なしの音松の対応が結局のところ心を温めてくれるところがにくい。

お鈴は音松のすることにいつもハラハラしているが、最後はやはり音松を尊敬してしまう。
そんな夫婦関係も良いし、普段は邪魔に思いながらもいざという時には頼れる幼馴染たちの存在も良い。

親子関係、夫婦関係、兄弟関係・・と時にぶつかり合い時に深く求め合うような人間心理の機微の描写が素晴らしい。
 
勧善懲悪のわかりやすい時代小説も面白いが、江戸に息づく人々の暮らしをバーチャルで体験できるようなリアリティが魅力である。
読んでいるうちにこの町の中にどっぷりと自分が入り込んでしまい、最後に近づいてくると寂しくなってしまう。
ちょっと哀しい終わり方のせいかこの世界に未練を残してしまうのも作者の計算なのだろうか・・。

なんてことはない人々の生活が描かれているだけなのだが、心が豊かになってくるような気がする・・宇江佐真理さん、しばらくはまること間違いなし。


読了日:2010.4.20
★★★★★

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2010年4月22日

ruru (15:53)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『尼首二十万石』宮本 昌孝

尼首二十万石尼首二十万石 (1997/08) 宮本 昌孝

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鎌倉東慶寺に駆込んできた大工の妻てる。
百姓のむすめという出自に疑問を抱いた和三郎は江戸まで出向いて探りを入れることに。
意外なてるの正体とは・・。『影十手活殺帖』シリーズ始まりの表題作他。


シリーズを遡りやっと最初の一話へたどり着いた。
和三郎と紀乃の出逢いを読むことができて満足だが、単発の作品として読んだらそれほど面白いとは言えないような気がする・・。
パターンはいつも通りだが、割とあっさりとした筋立てで市助もいないのが残念。

一点和三郎が実子でないことには驚いたが、今後何かストーリーに絡んでくるのだろうか。
例えば実は武士の子なので紀乃との結婚には釣り合いが良いとか?

単行本自体あだ討ちという共通テーマはあるものの、時代も江戸、室町、戦国とまちまちで登場人物もがらりと変わる短編が集められているので一話ごとに頭を切り替えなければいけないのも読みにくい。

長谷川平蔵やら織田信長やらと著名な歴史人が登場してくる楽しさがあるので、各個のエンターテイメント小説としては面白く読むことができた。


読了日:2010.4.21
★★★☆☆


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ruru (14:48)

カテゴリ:国内小説一般宮本 昌孝

『深川にゃんにゃん横丁』宇江佐 真理

深川にゃんにゃん横丁深川にゃんにゃん横丁 (2008/09) 宇江佐 真理

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江戸は深川に喜兵衛店という長屋がある。
路地には猫が多くにゃんにゃん横丁の通り名で知られていた。
雇われ大家の徳兵衛、自身番書役の富蔵、店子のおふよら幼馴染3人は、いつも店子たちのために心をくだいているのだが問題は次々起こってくるものである・・。

時代小説づいている今日この頃。
にゃんにゃん横丁というタイトルのゴロと可愛い挿絵につられてジャケ借り。
ミステリ物ではなく、50代の幼馴染たちが店子たちや野良猫らの世話に奔走する人情物の短編連作集である。

本当は大家なんてやりたくなかった徳兵衛だが、ついつい店子の世話を焼いてしまう。
下町人情たっぷりの長屋生活が書かれていて、ほっこりと温かい気持ちになったり、ほろりと切なくなったりと情深い人間関係が心に染みてくる。

大きな事件も斬った張ったもないが、庶民の暮らしの中で起こるいざこざを助け合って解決していくような展開が良い。

話に合った可愛い挿絵もとてもポイントが高い。

猫たちもしっかりと重要な役割を担っていて"にゃんにゃん横丁"という設定もしっかり生きている。

続編があっても良さそうだが、割としんみりとした最終話が収められているのでこれで完結のような気がするのがやや残念。


読了日:2010.4.13
★★★★★

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2010年4月14日

ruru (01:35)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『影十手活殺帖』宮本 昌孝

 

影十手活殺帖 (講談社文庫)影十手活殺帖 (講談社文庫) (2002/06/14) 宮本 昌孝

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夫と離縁したい妻たちが駆込む鎌倉東慶寺。
情に厚い寺役人の市助、忍びの末裔で門前の餅屋の息子和三郎、東慶寺に奉公中の公儀お庭番息女紀乃らが、女人救済のために駆込女たちの背景を洗い邪魔者を排除していく。

 

先日読んだ『おねだり女房 影十手活殺帖』の前作。

和三郎と紀乃の馴れ初めなどがわかるのかと思っていたら更に前作があるらしく、既に二人の関係は定着していた・・。

 

その点は少し拍子抜けしたが、駆込女が抱えてくる様々な事情や背景に浮かび上がる悪事などを解決していくという設定には慣れてしまったので楽しめた。

 

主軸はお節介な離婚調停といったところで、それぞれの事情は現代に通じるものも多く違和感無く読むことができる。

 

ただの夫婦仲のこじれではなく背景に揺らぎない悪が存在してくるので、和三郎の活躍も華々しいものとなっている。

すぐに殺して排除する辺りが単純すぎる気がするが、娯楽時代小説としては王道と言えるだろうか。

 

女性の言葉や立ち振る舞いなど、極めて男性視点だと思うところは多々あるが気軽に読めて面白かった。

 

読了日:2010.4.10
★★★★☆

 

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2010年4月12日

ruru (12:31)

カテゴリ:国内小説一般宮本 昌孝

『アコギなのかリッパなのか』畠中 恵

アコギなのかリッパなのかアコギなのかリッパなのか (2006/01/14) 畠中 恵

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大学生の聖は中学生の弟を養うために引退した大物議員大堂の事務所で事務員として働いている。
仕事の内容はお茶出しから、大堂の下に持ち込まれる面倒な相談事の解決まで。
『しゃばけ』シリーズで有名な著者による現代ミステリ。

 

舞台を現代に変えても、軽快な文章とふんわりとした生活ミステリ短編集という点は同じで面白く読むことができた。
いつもながら推理小説というよりはちょっとした謎解き程度なのだが、肩がこらずに読めるのが良い。

事務所に持ち込まれる現役議員たちの相談事が中心なのだが、意外と雑用的な議員の仕事周りが窺えるのが興味深く、議員事務所で働きながらも政治に全く興味がない若者が主人公という設定が面白い。

短編連作集なので、就寝前に軽く読める娯楽小説として最適。


読了日:2010.4
★★★★☆

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ruru (11:10)

カテゴリ:国内小説一般畠中 恵

『真昼の花火』吉村 昭

真昼の花火真昼の花火 (2010/02/11) 吉村 昭

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布団の打ち直しを家業とする主人公が、勤務先の繊維メーカーで化学繊維を使用した洋風布団の宣伝担当となる。
打ち直しを必要としない新商品の宣伝に奔走しながら、家族と会社の板ばさみに揺れる心情を描いた表題作他4作。

 

随筆と小説が2編ずつという不思議な構成の一冊だった。
どうやら単行本未収録作品をまとめて出版したらしい。

一番気に入ったのは随筆の『牛乳瓶』。
戦前~戦後の故郷の町の様子を牛乳屋に注目して書いた作品である。
町の生気や人の生きる様が繊細な視点で書かれていてじんわりと胸を打つ。

表題作『真昼の花火』は少し前の企業小説といったところか。
初出が1962年となっているので、高度成長期の真っ只中に書かれている。
昔ながらの家業と最先端を行こうとする勤務先企業の間で翻弄される男の心情が、我がことのように押し迫ってくる。
静かな筆致ながら迫力を感じる作品である。
結末がやや性急な気はしたが、時代背景を反映しながら描き出される人間心理がリアリティに溢れている。

吉村氏の作品はいつも上品な印象。
たまに無性に読みたくなる。

読了日:2010.4.
★★★★★

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2010年4月 6日

ruru (11:14)

カテゴリ:国内小説一般吉村 昭

『100歳詩集 逃げの一手』まど みちお

100歳詩集 逃げの一手100歳詩集 逃げの一手 (2009/11/11) まど みちお

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詩人まどみちおさんの100歳を記念して発行された詩集。
有名な童謡の作詞をかなりされているので子供から大人まで知らない人はいないだろう。

少し前にNHKの特番があったが、まだまだ力強く創作を続けているご様子だった。
本当にすごい。

社会的ニュースから健康や体のこと、言葉遊びに興じたようなものまで様々な詩が集まっている。

瑞々しい感性と先達の言葉の重みを感じることができる一冊。

読了日:2010.4. 

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2010年4月 5日

ruru (19:49)

カテゴリ:詩集

『こいしり』畠中 恵

こいしりこいしり (2009/03/27) 畠中 恵

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お気楽な遊び人で有名な麻之助は、神田の町名主の跡取り息子である。
普段は頼りない麻之助だが、その推理力はなかなかのもの。
親友の清十郎、吉五郎と共に町名主の下へ持ち込まれる奇奇怪怪な相談事を解決していく。

 

早速『まんまこと』の続編を読んでみた。

何となくだらだら引き延ばされるのかと思っていたお寿ずとの結婚がすんなり進んでしまったので少し驚いた。
夫婦で意外と仲良くやっているようなのでそれもまた良しと思って読んでいると、毎回お由宇の存在に含みを持たせるくだりがあったりしてどうも落ち着かない。
麻之助の人となりを大きく変えた出来事として恋愛を持ってきているので仕方がないことかもしれないが、もうさっぱりと進んでも良いのではないだろうか・・。

ただ、結婚しても変わらぬ麻之助のお気楽ぶりと名推理ぶりのギャップは面白い。


清十郎や吉五郎といった悪友や貞たち子分?らの個性も豊かでしっかり物語に根付いている。
世界観がしっかり作り上げられているので、読み始めるとすんなりと江戸は神田の彼らの世界へ引き込まれてしまう。

 

持ち込まれる相談事もバラエティに富んでいて良い。
「百物語の後」などは『しゃばけ』と通じるものがあるなあ、などと楽しめた。

 

今後も是非シリーズとして続いていって欲しい。

読了日:2010.3.5
★★★★☆

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ruru (18:23)

カテゴリ:国内小説一般畠中 恵

『ママの友達』新津 きよみ

ママの友達 (光文社文庫)ママの友達 (光文社文庫) (2010/02/09) 新津 きよみ

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専業主婦典子の元に差出人不明のまま突然送られてきた中学時代の交換日記。
その直後メンバーのリーダー格だったハセジュンこと長谷川淳子が殺されたことを知る。
「NEXT YOUR TURN!」日記の最後のページはハセジュンで終わっていた・・。

かつての仲良しグループは45歳になり、それぞれ全く異なる人生を歩んでいた。
中学生の娘の反抗期に悩む専業主婦の典子、子供を産んだばかりのシングルマザーの明美、既に孫までいながら夫の態度に苦しむ久美・・。

 

交流が途絶えていた彼女たちの現在が緻密に描き出されていき、その心理描写があまりにリアルで巧い。
濃密なようで希薄な女の人間関係や母としての立場、出産・子育て・不妊に嫁姑、介護・・・”何にでもなれる”45歳という年齢を見事に現している。

 

”心理サスペンス”というほどのハラハラ感はなく、殺人事件自体が軽い扱いである。
あらすじから想像してしまうドキドキのストーリー展開とは程遠かったので、キリキリと追い込まれるようなミステリを期待していると裏切られる。

 

しかししっかり書き込まれたそれぞれの登場人物の心情に感情移入してしまい、また共感できる箇所が多いので読後感は充実している。
ミステリと言う形に合っているかは微妙なところだが、作家の力量には感服。

 

読了日:2010.3.31
★★★★☆

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2010年4月 1日

ruru (20:22)

カテゴリ:国内ミステリー新津 きよみ

『おねだり女房 影十手活殺帖』宮本 昌孝

おねだり女房 影十手活殺帖 (講談社文庫)おねだり女房 影十手活殺帖 (講談社文庫) (2010/03/12) 宮本 昌孝

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縁切り寺として名高い鎌倉東慶寺に駆け込んでくる「駆込女」の背景には様々な思惑や揉め事がある。
情深い寺役人の市助と忍びの末裔でもある餅菓子屋の和三郎が、女を助け時に探りながら真実を暴き出していく。

 

駆込女を題材にしているのが面白い。
ただ人情ミステリのイメージで読み始めたものの意外と斬って斬られてと血なまぐさかった。
帯にあるような「男女の機微」といった細やかな心理描写を書いた作品というよりは捕り物系事件簿と言えるのではないだろうか。

夫と離縁したい女が東慶寺にやってきたところからストーリーが始まり、すぐに女に肩入れする優しい市助とそんな市助を敬愛する和三郎という組み合わせが丁度良い。

 

まあ男性の視点で書いた女像だなあと苦笑したくなるところも多々あるが、短編連作集で軽く読めるところが楽で良い。


読了日:2010.3.31
★★★★☆

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ruru (15:19)

カテゴリ:国内小説一般宮本 昌孝

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