2010年9月アーカイブ

『続 御書物同心日記』出久根 達郎

続 御書物同心日記 (講談社文庫)続 御書物同心日記 (講談社文庫)
(2004/02/13)
出久根 達郎

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『御書物同心日記』続編。

御文庫の本が紛失したり寄贈目録の確認のために旗本屋敷へ出張をしたりと、書物に関わる地味な作業や事件が描かれている。
2作目にてやっと御風干(本の虫干し)が終わった。
将軍用蔵書の管理が大変だったことがよくわかる。

古本屋有志が集まって催す「眼福満腹会」が粋だ。
これは美味しいものを食べ、珍しい本を愛でるというもの。

とにかく地味なストーリーなのだが、本好きなら絶対に飽きない不思議な作品になっていて面白い。
淡々と、しかしノンストップで読んでしまった。

読了日:2010.9.
★★★★☆

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2010年9月30日

ruru (14:43)

カテゴリ:国内小説一般出久根 達郎

『御書物同心日記』出久根 達郎

御書物同心日記 (講談社文庫)御書物同心日記 (講談社文庫)
(2002/12/13)
出久根 達郎

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将軍の御文庫である紅葉山文庫に勤める新米の御書物同心丈太郎。 同僚の角一郎と共に初めて経験する御文庫のしきたりや書物に関わる出来事を描いた江戸の連作短編集。

あらすじ紹介に「~奇妙な事件が相次いだー。」と含みを持たせているが、事件と言うよりは出来事という程度。
主人公が御書物同心だけあって、八丁堀などとは違う。
起こる"事件"は書物がらみの恐ろしく地味なものばかりである。
出所が知れない書物があるとか、鼠が逃げたとか・・はらはらさせられるような起伏はなく、話は淡々と進んでいく。
また人情物というほど人情に触れているわけでもなく平坦な印象の時代小説である。

しかしなんだか面白い。
何しろ御書物同心という役職にスポットを当てているところが珍しい。
書物の折れ目や汚れの記録を取ったり、風干ししたりと限りなく地味な作業に真剣に従事する武士たちの姿が興味深い。

たかが書物とは言え、将軍様の目に触れる物。
何かあれば腹を切ることもあるれっきとした武士の職務である。
皆粛々と書物に挟まるゴミを取り除いたり、修復作業に勤しんでいる。
書物にこれだけ神経を使っていたことに驚かされるが、考えてみれば現在でも古文書などは似たような扱いだろう。

また丈太郎懇意の古書店がらみの話もあり、城内と江戸の町、武士と町人の世界がバランス良く描かれているので飽きることが無い。
職務に忠実な丈太郎と、ばかばかしい仕事だと言い切ってしまう角一郎のコンビも丁度良い。

本に囲まれていたいという気持ちは江戸時代も現代も同じ。
地味ながら本好きの心をくすぐる一冊となっている。

読了日:2010.9.20
★★★★☆

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2010年9月21日

ruru (11:22)

カテゴリ:国内小説一般出久根 達郎

『生死不明』新津 きよみ

生死不明 (ハルキ文庫)生死不明 (ハルキ文庫)
(2003/09)
新津 きよみ

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池端弘子の夫茂が行方不明になってからもうすぐ3年。 弘子は自宅で書道教室を営むことで生計を立て、想いを寄せる男性もできた。 夫への気持ちが薄らぎ離婚請求可能な3年目を心待ちにする弘子の下へ、「ご主人は生きています」と書かれた手紙が届く。 揺れる女心と明かされていく男の過去・・。

友人夫婦の紹介で夫と出会い、スピード結婚した弘子。
新婚半年目にして夫が失踪したことに衝撃を受けるが、月日が彼女を変えていく。
いつのまにか夫が行方不明のままでいることを望むようになっているのだ。

3年経てば離婚請求ができ、財産分与で一軒家を手にすることもできる。
失踪後に知ってしまった夫の別の顔に幻滅もしていた。
書道教室で自立もでき、生徒の淳一とその父親である信久と近しくなった弘子は新たな家庭を持つことを夢見るようになっていた。

離婚請求ができる3年を目前に届く夫が生きていることを告げる手紙や電話。
弘子はこれらを握りつぶし、時が過ぎるのを待とうとする。

身元不明の遺体があれば確認へでかけ、出来る限り手を尽くして夫を探してきた。
しかし今となっては戻ってきて欲しくない・・。

良心、恋心、保身や打算など揺れ動く女心の心理描写が巧みである。
徐々に絡み合っていく人間関係があまりにも都合が良すぎる点は否めないが、ストーリーも意外性があって飽きない。
生々しい心理描写の素晴らしさが設定のマイナス面を超えているため、読後感は満たされている。

読了日:2010.9.17
★★★★☆

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2010年9月18日

ruru (11:07)

カテゴリ:国内ミステリー新津 きよみ

『悪党』薬丸 岳

悪党悪党
(2009/07/31)
薬丸 岳

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元警官の佐伯修一は、同じく元警官だった小暮が経営する探偵事務所で働いている。 ある老夫婦から受けた依頼は、かつて息子を殺し今は社会復帰している男を捜し出し、その男を赦すべきか、赦すべきでないのかを知りたいというものだった。 自分自身姉を強姦殺人で亡くした経験を持つ修一は、己の心中にある葛藤を抱えながら調査対象の男に近づいていく・・。

心神喪失や未成年の犯罪、性犯罪などのテーマを取り上げている作者の今回の作品のテーマは"赦し"である。
主人公である探偵修一の揺れ動く心中を主軸に、各章ごとに依頼者である被害者遺族たちが抱える苦しみや葛藤を取り上げながら同時並行で進んでいく。

中学生の頃に姉を未成年者による強姦殺人で亡くした修一は、常に犯罪者への憎しみを抱えて生きている。
犯人たちは既に社会に復帰しているが、彼らの現在に執着せずにはいられない。
探偵事務所に訪ねてくる依頼者たちも、月日の流れに癒されることもなく止まった時間の中から抜け出せずにいる。
修一は彼らと自分を重ね合わせながら、加害者たちのその後を追い、接近していく。

徹底して被害者遺族の苦しみを追うこととなるので怒りと哀しさで胸がいっぱいになってしまうのだが、次々と展開していくドラマに引き込まれて一気に読んでしまった。

加害者が泣いて詫びれば赦せるのか?
まともに社会復帰もできずに不幸な暮らしをしていれば満足なのか?
それともいっそ死んでくれれば心の重荷が取れるのか・・。

これは死刑制度にも通じる議論だろう。

作中描かれる"悪党"たちは今も犯罪に関与している者もいれば、事件のことなど無かったように社会生活に溶け込んで幸せを掴んでいる者もいる。
しかしどの加害者たちにも反省と謝罪の気持ちは無い。

どうすれば赦すことができるのだ?と修一は老夫婦の息子を殺した坂上に問われて返答ができない。
坂上は言う。

「赦すことなどできないだろう。悪党はそのことを自覚しているんだ。だから、赦してもらおうなどという七面倒くさいことは考えないし求めないのさ。」

"赦し"の形は遺族によって違うのではないだろうか。
遺族が自由に刑罰を決められるようにしたら死刑執行が増えるだろうか?
死んで詫びて欲しいと思うこともあれば、生きて償って欲しいと思うこともあるだろう。

こういったテーマの本は後味が悪いことが多いが、本作ではそれなりの落としどころに落ち着いていったので読み終えたという充足感があった。
常に社会的なテーマを選択しながらも、エグさに走らず、真摯に小説化していくところが好印象。
次回作にも期待。

読了日:2010.9.17
★★★★☆

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ruru (02:19) | コメント(1)

カテゴリ:国内ミステリー薬丸 岳

『Theコンプレックス』齋藤 薫

TheコンプレックスTheコンプレックス
(2009/10/26)
齋藤 薫

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美容ジャーナリストによる女のコンプレックスを題材にした短編小説集。

容姿、年齢、恋愛や家族などの人間関係。
多岐に渡って21人の女のコンプレックスに焦点をあて、彼女たちの内面を浮き彫りにしていく。

同級生、同僚、親子・・関係がある女たちがリレー方式で主人公となる形式が面白い。
年代も30代~50代と幅広く、それぞれの世代ならではの悩みもあれば、普遍的な悩みもあって共感しやすいのも良かった。

齋藤薫と言えば"美容"のイメージだが、こちらは根底に美はあるものの女性心理の追求となっている。
美容を通して磨かれたであろう観察眼を存分に生かした作品だったと思う。

また、初の小説と言うことで最初の数編はエッセイ的で小説の意味があるのか疑問だったが、段々とはまり込んでいき最後は1つの連作集を読み終えたような気持ちになれた。

結末がやや衝撃的だったが、前向きな終わり方でもあるので全体的なバランスも巧く面白く読むことができた。

読了日:2010.9.15
★★★★☆

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2010年9月16日

ruru (11:23)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『セラフィーヌ』フランソワーズ クロアレク

セラフィーヌセラフィーヌ
(2010/07)
フランソワーズ クロアレク

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女流画家セラフィーヌ・ルイの生涯。
素朴派またはアウトサイダーアートなどと言われている。

先日映画「セラフィーヌの庭」を観たのだが、更に詳しく知りたくなって読んでみた。

映画に合わせて出版されたというのが丸わかりの映画の内容に沿った本だった。
こういった本の特徴か訳の問題かスラスラ読み進めるのはなかなか億劫な文章だし、映画を観ていなければこれを読んでもさっぱり面白くないのではないだろうか。

映画の内容をなぞっていく作業はもう一度映画を楽しめるようで悪くは無いが、それ以上の詳細な情報が入っているわけでもないのは残念だった。
セラフィーヌの人生をなぞりたいならやはり映画がオススメ。
映画は息苦しさを感じるほど真に迫った良い映画だった。

読了日:2010.9.12
★★★☆☆

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2010年9月13日

ruru (08:43)

カテゴリ:自伝・伝記

『僧正殺人事件』S・S・ヴァン・ダイン

僧正殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集) (創元推理文庫)僧正殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集) (創元推理文庫)
(2010/04/05)
S・S・ヴァン・ダイン

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マザーグースの一節に見立てられた連続殺人事件。 "僧正"を名乗る犯人は不適にも新聞社に犯行声明を送りつけてくる。 アマチュア探偵ファイロ・ヴァンスは、独特の心理学的手法により犯人に迫る。

読み応えのあるミステリが読みたい欲望が高まり久しぶりに本格海外ミステリに舞い戻ってみた。
とりあえず新訳が出版されたのでヴァン・ダイン。
内容や評価については既に素人が口を出せない聖域に達している気がするので怖くてあまり書けない(苦笑)

色々突っ込みたい気持ちに駆られるが、古典ミステリということを考え純粋な気持ちで読み進める。
しかし全て後手に回る捜査の甘さ、ヴァンスの独断による結末についても疑問が残る。
「~に話を聞かねば」「では明日」・・・で夜中に殺されて・・というパターンにはイライラさせられる。

それでも童謡見立て殺人を生み出し、その後のミステリに多大な影響を与えたことを考えれば敬意を払わざるを得ない。

読了日:2010.9.11
★★★★☆

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2010年9月12日

ruru (11:56)

カテゴリ:海外ミステリーヴァン・ダイン

『デパートへ行こう!』真保 裕一

デパートへ行こう! (100周年書き下ろし)デパートへ行こう! (100周年書き下ろし)
(2009/08/26)
真保 裕一

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老舗のデパート鈴善は、下降する売り上げの上に社員の汚職事件が起こり他社との合併の話を受けざるをない状況であった。 仕事も家族もなくした男、駆け落ち中のカップル、手負いの元警察官・・デパートに忍び込んだ男女と鈴善社員らが繰り広げる一晩の悲喜劇。

色々な事情を抱えた登場人物たちが関わりあって最後に大団円、というよくある形式。
舞台は日本橋の老舗デパート。
かつてのようにデパートは憧れの場所ではなくなり、働く者たちも自信を無くしつつある。
そんな現状に合わせて、哀切交えた人間劇となっている。

巧く関係しあっていく流れはさすが真保さん。
登場人物が多く雑然とした印象はあるが、飽きることなくノンストップで読めた。
もう少し登場人物が絞られていれば感情移入できて心に残ったかもしれない。
あまりに詰め込みすぎているせいでさらりと読み流してしまい、これと言った感想が残らない点が残念。

読了日:2010.9.6
★★★☆☆

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2010年9月 6日

ruru (15:37)

カテゴリ:国内ミステリー真保 裕一

『追伸』真保 裕一

追伸追伸
(2007/09)
真保 裕一

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ギリシャに単身赴任中の悟は、妻の奈美子に離婚を切り出され納得がいかない。 二人は手紙を交わすようになり、奈美子は祖父母の手紙を同封してくる。 そこには祖母の逮捕と無実を証明するために奔走する祖父の心情が映し出されていた。

一方的に離婚したがる妻と引き止め切れない夫の手紙のやり取りの中に、戦後の祖父母の夫婦関係を絡ませる為に過去の手紙が用いられている。
全文に渡って書簡形式とし、二組の夫婦を描き出すことで男女の愛とは何かを描こうとしているのだろうが、どうも内容がいまいちである。

まず奈美子と祖母を通して現れてくる女性像に耐え兼ねる。
「こんな女を愛してくださり・・」「私のわがままでしかありません・・」といった表現が多く、卑屈でいやらしい。
設定の娼婦だの愛人関係だのも陳腐。
愛に生きる奔放な女でもなく、かといって自己表現に邁進する女でもなく全く共感できない。

対する夫は「君を愛していると思うけれど自分でもよくわからなくなってきたよ」といった情けなさ全開で、二人のやり取りが長々続くと鬱陶しさこの上ない。
祖父の方は男の愛を貫いた手本のようにまとまっているが、現実としては愚鈍なだけでこのような夫婦関係が良いとも思えなかった。

著者は何かプライベートで嫌な思いをしたのだろうかと邪推したくなるような男女関係の在り方に感じた。
男性目線だとまた違うのかもしれないが、読みきるのに根気がいる作品だった。
好きな作家に真保さんを挙げることが難しくなりそうで残念・・。

読了日:2010.9.2
★★☆☆☆

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2010年9月 2日

ruru (06:46)

カテゴリ:国内ミステリー真保 裕一

『寂しい写楽』宇江佐 真理

寂しい写楽寂しい写楽
(2009/06/26)
宇江佐 真理

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斉藤十郎兵衛説による写楽が江戸に現れ消えるまでを現した歴史小説。
十返舎一九、山東京伝、葛飾北斎が写楽誕生に関与したこととなっており、そんなことも在り得るような無いような・・。

先日読んだ『写楽 閉じた国の幻』(島田 荘司)は、写楽の正体を追求していく内容だが、こちらでは写楽は斉藤十郎兵衛として登場しており、写楽を描くというよりは写楽を巡る人々を描いている小説となっている。

版元の蔦屋重三郎、その周りの戯作者・浮世絵師たちそれぞれに焦点を置き、胸の内に抱える心の隙間を描き出すのが主軸である。
登場人物には他に歌麿、馬琴、太田南畝などもおり、その点は豪華な気分が味わえるのだが、皆一様にタイトル通りの「寂しい」気持ちを抱えていて読んでいて気持ちが沈む。

宇江佐さんらしい人の内面に切り込んだ人情小説の趣でとても読みやすいのだが、謎多い写楽を取り上げながら心躍るところがないのが残念だった。
写楽の絵が挫折や閉塞感の象徴として扱われていることに抵抗があったのかもしれない。

読了日:2010.8.31
★★★☆☆

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2010年9月 1日

ruru (12:07)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

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