2010年11月アーカイブ

『悪霊の島 下』スティーヴン・キング

デュマ・キーに来てから精力的に絵を描き続けたエドガー。 遠く離れて暮らす家族や友人たちを招いての個展は成功を納めるが、エリザベスは会場で倒れ、絵を手にした人々には次々と災厄が降りかかっていく。 エドガーはエリザベスが遺した言葉を頼りに邪悪な力と立ち向かう決意を固め、島の奥へと踏み込んでいくのだった・・。

下巻はエドガーの個展から。
不思議な力に導かれて描いたエドガーの絵は、人々を魅了し、新進の画家として美術界に受け入れられることとなる。
個展は華々しい物語の頂点であり、この日を境に話は急激に展開していく。

認知症が進んでいたエリザベスは正気を取り戻して会場に駆けつけるが、謎の言葉を遺して最期を迎え、エドガーの絵を手にした人々は邪悪な力に操られて不幸な最期を遂げていくのである。

下巻で突然ジェットコースターに乗車!することとなる。
冗長的とも思えた上巻が嘘のように、下巻はスピードアップしていき途中で止まることができない。

明らかになっていくエリザベスと一家の過去。
かつてデュマ・キーで何があったのか?

物語の冒頭と打って変わり、冷静な抵抗者となって邪悪な力と向かいあうエドガー。
少しずつ見えてくる"敵"や超常現象的な展開は好みが分れるかもしれないが、いかにもキング的ではある。
夢中でページを捲りながらも若干冷めた感情も湧いてきたが、壮大な長編で精巧な作りだったことは確か。

時折過去形の回想の描写になるせいか、どこかで安心して読んでいたところがあった。
背筋がぞっとするような恐怖や胃がキリキリと締め付けられるような圧迫感を感じることができなかった点は物足りない。
全て進行形で書いてもらった方が先が読めずに良かったのではないだろうか。

何はともあれ、デュマ・キーの世界に引き込まれ、読後は長い長い夢から覚めたような感覚。
やはりキングは巧い。
あとは好みか。
個人的には上巻で少し飽きたところがマイナス。。

読了日:2010.11.17
★★★☆☆

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2010年11月18日

ruru (01:14)

カテゴリ:海外ミステリースティーヴン・キング

『悪霊の島 上』スティーヴン・キング

建築会社を経営していたエドガーは不慮の事故で右腕を失い、リハビリのためにフロリダの孤島デュマ・キーに移り住んだ。 島の持ち主であるエリザベスの謎めいた過去、島が放つ異様な空気・・。 やがてエドガーは、無くしたはずの右腕に痒みを感じながら激しい衝動に駆られて絵を描くようになる。 それらの絵は不思議な力を秘めた特別なものだった・・。

キングの新刊!
発売当初からそわそわ気にしていたが、やっと手をつけることができた。
期待値は最高潮で読み始めたのだが・・。

上下巻合わせてかなりの長編とは言え、かなり読み進めても話が滑り出さない。
事故後のエドガーの混乱ぶりがそのまま文章に現されているのも読みにくいし、迫り来るような恐怖も事件性もなくひたすら伏線らしきものが張り巡らされ続けていく。

お預け続きの印象で、どうも話しに入り込みにくくページをめくる手が止まりがちだった。
もう少しペースアップしてくれても良かったのではないだろうか。
焦らしすぎでは?キング大先生。。

上巻ではエドガーの事故、デュマ・キーで目覚めた芸術的な力、謎の過去を持つ島の持ち主エリザベス・世話人のワイアマンとの出会いなど物語の背景を丁寧に説明している。
エドガーは徐々に自己と健康を取り戻していくが、同時に島と絵が持つ不思議な力に振り回されるようになる。

超常現象やらホラー要素やらと絵を結び付けているのは面白いし好きな設定。

"予感"はたっぷりだが、まだまだたいしたことは起こらない。
下巻に期待。

読了日:2010.11.15
★★★☆☆

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『蝦夷拾遺 たば風』宇江佐 真理

祝言を間近に控えた幸四郎とまなだったが、幸四郎が突然倒れて体が不自由となったことから縁組は白紙となってしまう。 月日は流れ、別の男の下へ嫁いでいたまなはお家騒動に巻き込まれる。 夫もいない夜に助けにきてくれたのは幸四郎で・・。 表題作『たば風』他蝦夷周辺を舞台とした時代小説短編集。

タイトルに"蝦夷拾遺"とあるように松前藩など蝦夷周辺を舞台にした時代小説ばかりを集めた短編集である。
松前藩が舞台の小説となると江戸物よりもぐっと数は減るが、宇江佐さんは北海道の方なので思い入れがあるのだろうし、珍しいので興味は湧く。

表題作『たば風』は、松前藩の一大事と報われぬ恋が思い出となっていく様を絡めた話。
情緒のある大人の恋愛小説と言えるが、とても切ない。

『恋文』は、いわゆる熟年離婚の話である。
商家から江戸詰めの松前藩士へと嫁いだみくは、夫が隠居後帰郷するのを機に離婚を切り出すことを決意するが、息子に説得をされて気持ちが揺れていく・・。
割と唐突に気持ちが変わっていったように感じたが、連れ添ってきた半生を振り返りながら愛情を再確認していくというテーマは現代にも通じる。

『錦衣帰郷』は、貧しい農家から立身出世を遂げた探検家最上徳内の帰郷を取り上げている。
学問が身を立てた様を故郷の庄屋からの目線で描かれているのだが、羨望を感じつつも己の人生を肯定していく心情が巧い。
単純に最上徳内のことをさらう事ができたのも良かった。

『血脈桜』『黒百合』は明治維新前後の話のためか、血なまぐさく理不尽なものを感じる。
淡々と歴史をなぞりつつ、そこに生きる人々をリアルに描き出しているとは思いながらも、読後感があまり良くないのだが、短編集なので作順の影響もあったかもしれない。

全体的にトーンが暗めな印象。
どれも情緒を持って描かれているが、それほど心には響いてこないような・・。
宇江佐さんの作品の中では、悪くはないのだがやや物足りない気持ちが残る一冊だった。

読了日:2010.11
★★★☆☆

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2010年11月 7日

ruru (10:13)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『恋いちもんめ』宇江佐 真理

水茶屋の娘お初に青物屋の息子栄蔵との縁談が持ち上がる。 突然の話に戸惑っていたお初だったが、徐々に栄蔵に惹かれていく。 しかし結納の直前に栄蔵の家で火事が起こり、その後姿を消してしまう・・。

体の弱い兄がいたために、子供の頃は里親の下で育てられたお初。
実家に戻ってからも水茶屋という仕事や家族と馴染めずにいた。

同じように子供の頃里親に預けられていたという栄蔵と出会い、意識し、惹かれていく少女の初恋が瑞々しく描かれている。
栄蔵にまとわりつくおふじにやきもきしたり、友達に相談をしたりといった恋模様は現代と同じで微笑ましい。

しかし栄蔵の家が燃えてからは一転。

栄蔵は身を持ち崩すが、お初は待ち続ける。
そんな生活の中で、刃傷沙汰やら心中やらと命をかけた報われぬ恋が描かれていく。

若い二人の気持ちが少しずつほぐれて惹かれあっていく爽やかなストーリーでも良かったように思うが、それだけでは物足りないと考えたのだろうか。

お初と栄蔵の成長や絆を深めるためのカンフル剤なのだろうが、あまりにも血生臭い事件や出来事にシフトしていってしまったのが逆に単純な気がしてあまり好みではなかった。

それでもハッピーエンドだったし、いつも通りさらりと読みやすい1冊ではあった。

読了日:2010.11
★★★☆☆

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2010年11月 6日

ruru (12:26)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

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