2011年2月アーカイブ

『天狗風 霊験お初捕物控(二)』宮部 みゆき

風と共に姿を消す娘たち。 神隠しなのか事件なのか・・? 不思議な力を持つお初と算学道場に通う右京之介は、南町奉行根岸肥前の守の命により真相究明に乗り出す。

先日読んだ『震える岩 霊験お初捕物控』の続編。
右京之介は家を出て算学道場に通い始めている。

前作共に死人の執念による事件を追うことになるが、今回は本格的に物の怪といった趣が強く、お初の活躍も著しい。
折角お初に不思議な力があるのだからその方がすっきり読めるし、前作よりも面白かった。
化け猫の存在も愛らしくて私好みの作品になっていたので第三弾以降もこの路線で進んで欲しい。

宮部さんならではの繊細な女性心理描写もお見事。
こちらの作品後随分時は経っているようだが、右京之介との恋もできれば進んで欲しいし次回作を待ちたい。

読了日:2011.2.17
★★★★☆

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2011年2月28日

ruru (01:05)

カテゴリ:国内ミステリー宮部 みゆき(ミステリー)

『東京下町殺人暮色』宮部 みゆき

刑事の父道雄と二人で下町に越してきた中学生の順。 町内のとある家での殺人事件の噂が流れ始めた頃、荒川ではバラバラ死体が見つかる。 噂と殺人事件の関連性はあるのか?順は噂の家を見に行くが・・。

川沿いで見つかるバラバラ死体、犯行声明、無軌道な若者・・『模倣犯』を思い出したが、こちらの方が先の作品のようだ。
つい比べてしまうが、『模倣犯』の方が完成度が高く傑作と言えるだろう。

しかし順の探偵ごっこと父道雄ら警察の捜査が絡み合っていく展開、関係者の心理描写など、目が離せずに一気に読んでしまった。
事件を謎解く中で、親子や友人などの人間関係の在り方が問われていくのも心理描写の巧い宮部さんならではの小説だと感じた下町におい。

軸となる殺人事件はかなり短絡的で残虐なものだが、主人公が素直な中学生であり、父を始め友人や家政婦などとりまく登場人物たちが善良が故に、それほど思い気持ちでなく読むことができる。

老人から子供まで、噂から殺人事件まで、東京大空襲から現代までと幅広い視点が盛り込まれているのが面白い。

読了日:2011.2.25
★★★☆☆

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2011年2月27日

ruru (23:54)

カテゴリ:国内ミステリー宮部 みゆき(ミステリー)

『震える岩 霊験お初捕物控』宮部 みゆき

目に見えないものが見える不思議な力を持つお初。 南町奉行根岸肥前守の命で共に行動するようになった与力見習いの古沢右京之介と共に「死人憑き」の事件を調べ始める。 やがて100年前の赤穂浪士の討ち入りとの関係が浮かび上がり・・。

時代小説にして主人公は超能力者。
不思議な力を使っての捕り物帳となっている。

お初の力は"突然やってくるもの"であってコントロールはできない。
そのためすぐに事件解決というわけにはいかないのである。

そこで右京之介が生きてくる。
一見冴えない右京之介だが、算術を好むこともあって思慮深く的確な助言者となっている。

長屋で起きた「死人憑き」が赤穂浪士の討ち入り事件と繋がっていく謎解きには違和感があったが、不思議話ということでまあいいかという感想。
それよりもおきゃんな超能力少女と内気な学者肌の青年という探偵コンビの活躍が楽しい。

時代小説に超能力を持ち込むというのは宮部さんらしい。
続編も出ているようなので読んでみたいと思う。

読了日:2011.2.
★★★☆☆

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2011年2月23日

ruru (00:29) | コメント(2)

カテゴリ:国内ミステリー宮部 みゆき(ミステリー)

『漂流』吉村 昭

時は天明五年。 土佐の国の三百石船が遭難し、無人の鳥島へとたどり着く。 そこは水も沸かない不毛の土地であった。 仲間たちが次々と死んでいく中、長平はただ一人生き残る。 新たな漂流者たちと協力して島を脱出し、長平が故郷へと戻ることができたのは13年も経ってからのことであった。 史実に基づくノンフィクション小説。

アホウドリの産卵地として有名な鳥島。
現代では保護活動が盛んなアホウドリだが、江戸時代には島を埋め尽くすほど無数にいたらしい。
この鳥の存在が、長平たち漂流者の貴重な食料となり衣類となり命をつないでくれるのである。

江戸時代には黒潮に乗って多くの漂流者たちがここにたどり着き死んでいったとのこと。
また主人公の長平以外にも無事祖国へ帰ることができた者たちもいたというから驚きである。

よくある漂流記のように島の果物を取ったり動物たちをしとめたり・・というようなことはない。
着物一枚でたどり着き、火種もなく、アホウドリをたたき殺し続け、3年間生物しか口にすることもない中で仲間たちは次々と死んでいく。
アホウドリと周囲の海に頼るのみの無人島生活は過酷そのもの。
作品内には常に緊張感が漂っていて途中で休むことができない。

その後2回に分けて他の船からの漂流者と合流できるのが生死の分かれ目か。
後続者たちが持ち寄った道具と長平の知識を融合していくことで、少しずつ人間らしい生活を取り戻す。
たった一人きりの無人島生活から抜け出せて少しはほっとするが、弱いものから死んでいく現実がリアルで怖い。

島での生活の部分は、文献を元に吉村氏が創造で補って描かれたフィクションではあるが、たった一人で生き延びた長平の強靭な精神世界が繊細に描かれており、こうであったに違いないと思わせられ、引き込まれてしまう。
無人島という極限での人間心理に胃をキリキリさせられながら一気に読んでしまった。
助かって帰郷できるという事実が先にあるから読めるようなもの。

見事な人間ドラマ。
本当に面白かった。

読了日:2011.2.17
★★★★★

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2011年2月20日

ruru (16:43)

カテゴリ:国内小説一般吉村 昭

『デヴィ・スカルノ回想記』ラトナ サリ デヴィ・スカルノ

デヴィ夫人の自伝。
彼女のドラマティックな人生と逞しさはやはり突出したものがあり、以前から興味は持っていた。

結婚については時代が大分昔のことというのもあって、私が持つデヴィ夫人のイメージは最近のバラエティ番組で活躍するセレブ女性という印象の方が強い。
本にもあるような政治的関与やすさまじいバッシングなどは何となく知っている程度だった。

一国の大統領夫人になるという玉の輿婚が、シンデレラストーリーではなく生臭いスキャンダルのように扱われたのは、第三夫人であるということととインドネシアという後進国が舞台であったせいだろうか。

語られる大統領夫人としての生活はやはり想像以上の豪華さだが、幾多の女性たちとの争いはすごい。
その中でも正夫人となったというのはやはり知性と根性のなせる業だろう。
ライバルは皆美しかっただろうから、美貌だけで結婚までいくのは難しかったろうし。

当時は財界人が利害の思惑の下にデヴィ夫人以外にも日本女性を紹介していたのだとか。
貢物状態で女性を献上するような体制にはぞっとするが、戦後復興の最中で今とは時代が違ったと思って気持ちを収めることにする・・。

しかし結果的に日本とインドネシアの関係は深まっただろうことは確かだろう。
デヴィ夫人の私的な視点からとは言え、知らなかったインドネシアの政情について少し理解することができたのは面白かった。

また貧しい家庭から自らの力でのし上がっていくパワー、それに伴う一女性としての苦悩と代償には凄まじいものがあって圧倒される。

逞しい人生と強靭な精神に敬意をもって・・。

読了日:2011.2

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2011年2月19日

ruru (11:00)

カテゴリ:自伝・伝記

『海に沈んだ町』三崎 亜記

住むだけで遊園地の夢を見る町、海に沈んだ故郷、夜に閉じ込められた町など・・様々な"町"を描いた短編集。

著者の紡ぎ出す世界は、現実が少し歪んだようなパラレルワールドの連続だ。
どこか異世界、それでいてリアル。
客観的な視点を持つ登場人物たちの存在感の薄さも独特の空気感を醸し出していて不思議な世界観を創り上げている。

今回は9編の短編集だが、どれも似ているようで新しい。
不思議なくらい飽きることがない。
いつもそのうちネタ切れになるのではないかと思うのだが、裏切られる。
この誰も真似できない発想力は本当に素晴らしいと思う。

町に意味を持たせたこの作品集。
三崎作品は独特の薄い心の揺れをもたらしてくるのだが、それが良い。
全ての作品において完成度の高い極上の短編集だった。


読了日:2011.2.18
★★★★☆

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2011年2月18日

ruru (22:09)

カテゴリ:国内小説一般三崎 亜紀

『彼岸花』宇江佐 真理

材木屋の娘おたえは、両親が大阪の叔父の下へ行く間多摩川の村のつうさんの家に預けられる。 貧しい農家の暮らしにとまどいながらも少しずつつうさんと心を通わせていくのだが・・。『つうさんの家』他切ない江戸物語6編から成る短編集。

"彼岸花"というとどうも暗いイメージが強い。
やはりというか切なさや哀しさが漂う話ばかりの一冊だった。

懸命に生き、心を通わせたり傷つけあったり・・。
生身の人生を感じさせるような珠玉の人情物語集ではあると思うが、どの話もやるせなさがつきまとう。

登場人物たちもため息や涙ばかりだが、こちらも読み終わってため息が出てしまった。
しんみりしたい時には良いが、気持ちが疲れている時には向かないかも。

読了日:2011.2.14
★★★☆☆

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2011年2月17日

ruru (00:16)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『斬られ権佐』宇江佐 真理

仕立て屋の権佐は、惚れた女医者あさみを救う為に八十八の傷を負った。 その後あさみと結婚し、八丁堀の与力数馬の元で岡っ引きをするようになった権佐を皆は「斬られ権佐」と呼んでいる。 日に日に弱る身体を抱え、今日も権佐は事件と向き合う。

先に読んでしまった『なでしこ御用帖』の先の作品。

最初からかなりトーンが低い。
何しろ主人公の権佐は生き残ったのが不思議な位の傷を負っており、今でも体のあちらこちらが悲鳴を上げ続けているのである。
読んでいるだけで痛々しい。

幽霊騒ぎに心中、火付け、殺人といった事件の裏には複雑な人間心理が働いている。
権佐は敏感に人の心の動きを読み取り、事件を解決に導いていく。

連作短編集で、一遍ごとの事件と捕物は面白く、人間心理の機微も楽しめる。

しかし根底に権佐の体調悪化があるのでどうも気持ちよく読めない。
ちょっと一太刀、たまに傷が痛む位の主人公なら格好良いというだけだが、読んでいるだけで体がピリピリ痛くなってくるような八十八箇所の傷持ちとなると、物語の展開が読めるところがあって暗澹とした気持ちになってくるのである。

それでも最後には、権佐とあさみの愛情やお蘭の成長なども感じられたことで少しは人心地がついて良かった。

読了日:2011.2.
★★★☆☆

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2011年2月16日

ruru (00:28)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『通りゃんせ』宇江佐 真理

休日にマウンテン・バイクで甲州街道を旅していた連は、小仏峠の滝の裏で突然足元をすくわれる。 意識を取り戻した連がいたのは天明6年の青畑村という貧しい農村だった。 連は村人たちと共に天明の飢饉を乗り越えるために尽力することとなる。

タイムスリップ物語である。
宇江佐さんの現代人を主人公にした作品を初めて読んだ!
どうせ舞台は江戸時代だが(笑)

農村での暮らし、五人組、年貢の理不尽さ、飢え、そして江戸に上ってからの旗本屋敷での中間暮らしなどを通して、諦めずに仲間たちと智恵を絞りあって飢饉と立ち向かうストーリー・・と言った人情物語なのだが、どうも違和感だらけの小説だった。

未曾有の飢饉を目の前に娘を売ったり泥水をすするような生活をせざるを得ない江戸時代の農民たちを描きつつ、連に「自分はわがままだった」とか「現代人は幸せだ」とか感じさせるという趣向が個人的にいただけない。

からっとした現代の若者像を表しているのかもしれないが、タイムスリップした連はすぐに農村の生活に馴染むし、なんと他にもタイムスリップしていた友人がいたというのに一献傾けてハイさよならというのもどうなのだろう。
在り得ない気がして気持ちが入らない。

著者自身が考える現代における問題点を指摘していきたいのかもしれないが、こういった時代小説で描く必要があるだろうか。

とうとう最後には人の死にも関わったというのに、わりとからりと現代に戻り、結末ではまるで幸せな運命への導きのような結び方になっているのも首を捻った。

正直今まで読んだ中では一番イマイチだった。
どこかクールで人生を達観したような宇江佐さんの小説が好きだったのだが、あまりクールでも寂しさが残る。

読了日:2011.2.13
★★★☆☆

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2011年2月15日

ruru (01:36)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『竜が最後に帰る場所』恒川 光太郎

先輩の彼女マミからの突然の電話。 顔も知らぬまま話は盛り上がるが、次の電話では喧嘩となってしまう。 そして彼女は「自分は怨んだ相手を殺せる」と言うのだった・・。 現実と幻想世界を結ぶ五編から成る短編集。

幻想的な恒川ワールドは健在。
ふんわりとした空気の中に度々ぞくりとさせられる緊張が走る。
そういった世界作りは巧い。

『風を放つ』『迷走のオルネラ』は現実的過ぎてあまり面白いと思えなかった。
よくあるちょっとした心理サスペンス小説のようで中途半端だった気がする。

『夜行の冬』は著者らしい作品ではないだろうか。
驚きや感動はないが静かなホラーという感じで良い。

『鸚鵡幻想曲』が一番気に入った。
ちょっと怖いが幻想的で他では読めないだろう点で満足。

『ゴロンド』はよくわからない。
おとぎ話が書きたかったのか。
淡々と竜の話が綴られているがそれだけという淡白な印象。

全体的にはそれほど良い一冊とは言えなかった。
まあ何となく読めるしなるほどというところもあるという程度。
ただこの著者の世界観は好きなので、また他の作品に期待。

読了日:2011.2.13
★★★☆☆

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ruru (01:11)

カテゴリ:国内小説一般恒川 光太郎

『くじけないで』柴田 トヨ

90歳を過ぎて詩を書き始めたという柴田トヨさんの詩集。
多くのマスコミに取り上げられているので知ってはいたものの、何気なく書店で立ち読みしてみて即購入してしまった。

ユーモラスに語った日常生活、深い愛情に満ちた夫婦・親子愛、優しく励ます若年者への言葉。

人柄が言葉ににじみ出ているのはトヨさん個人の優しさからだろう。

心にじんじんと響いてくる温かい詩集だった。

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2011年2月11日

ruru (00:49)

カテゴリ:詩集

『神様のカルテ』夏川 草介

栗原は医局に入らずに地方病院に勤めた内科医。 何日も家に帰れないような過酷勤務をこなしながら、患者と向かい合っての診療に満足感も感じている。 患者の死、大学病院への誘いなど心迷いながらも奮闘する若手医師の日常。

著者は現役医師。
地方病院の現実や医学会の在り様など医療従事者の抱える問題を取り上げた小説は、自らの葛藤を吐き出す手段なのだろうか。

医学界が抱える問題や患者の死や主人公の誠実さなどを書きたいという熱意は感じるので、何となく最後まで読めるしじんとくる場面もある。

しかしどうあってもこの文章と人物設定はいただけない。
古めかしい喋りの主人公、夫に敬語を使う美少女妻、恐竜だか獣だか大男だかどれかに表現を統一して欲しい友人やら"社会の底辺"的下宿の雰囲気など軽い漫画のような紋切り型で拒否反応が・・。

著者は本当に医療とは何か、患者とはどう向き合うべきかを真剣に考えている誠実な医師なのだと思う。
しかしこの荒さで小説家というのはどうだろう。
まあ編集者がこれで出版しようとゴーサインを出したのだから私の単なる嗜好の問題かもしれない。

読了日:2011.2.9
★★★☆☆

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2011年2月10日

ruru (14:53)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『天に遊ぶ』吉村 昭

飢饉の記録を調べる学者市原。
川原で人肉を食べていた女の記述部分の鰭紙には個人名が記されており・・。(『鰭紙』)

結婚間近と思われていたカップル。
女の家に招かれた男はある光景を見て結婚をためらう。(『同居』)

などなど・・各編10ページ程度の作品21編から成る吉村昭の掌編小説集。
小説集としながらもエッセイが混在して収められているので混乱するところがあったが、内容はさすがの一言。

文庫裏表紙に「日常生活の劇的な一瞬を切り取ることで、言葉には出来ない微妙な人間心理を浮き彫りにする、まさに名人芸の掌編小説21編。」とあるが、煽りでも何でもなく正にその通りと言うしかない。

思わぬ一点から背景にあるストーリーを引き出し掘り下げていく作風は、著者の鋭くも優しい人間観察力の高さ故だろうか。
人の心にぽっと浮かんだふとした心情が見事に描き出されている。

明るい話ばかりではないのだが、心が温まったりじんわりと切なさを感じたり・・。
わずか10ページの世界にするっと引き込まれ、かつ余韻まで残してくれる。

落ち着きある大人の一冊だった。

読了日:2011.2.5
★★★★★

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2011年2月 9日

ruru (19:38)

カテゴリ:国内小説一般吉村 昭

『夜想』貫井 徳郎

突然の妻子の死から立ち直れずにいた雪藤は、物に触れるだけで人の心がわかる女子大生怜子と出会う。 怜子の言葉に救われたと感じ、彼女の持つ特殊な力をもっと広めたいと考えるようになった雪藤は彼女の支援を始める。 支援者は徐々に増えていくが、雪藤は新興宗教色を強めていく団体内で孤立していき・・。 宗教と救いがテーマの長編。

絶望的な現実を受け止められずに苦しんでいた雪藤は、怜子の活動を支えることに生きる道を見つける。
ボランティアから始まった怜子の人助けは、徐々に組織化され新興宗教とみなされるようになっていくが、怜子と雪藤が目指したのはこのような道だったのか・・関わった人々の心に溝が生まれ始める。

人の助けになることで自らも救われたいと考える怜子。
怜子を見出し、一番近い存在だと信じることで自分を支える雪藤。
怜子の下に集まった悩める人々。

誰が、何が自分に救いをもたらしてくれるのか。
結論としては自分しか自分を救うことはできないわけだが、そこに至るまでの雪藤の葛藤と心の痛みが繊細に描かれており、怜子を始めとする周囲の人々を含めた複雑な人間心理の機微の表現はさすがである。

ただ同時進行で綴られていく嘉子については、役割に対して扱いが丁重すぎる気がした。
重要な存在ではあるが、当初から登場する必要があったのかは違和感を感じた。
二本柱で話を進めるのが著者の流儀なのかもしれないが、関係性が薄く対としては弱いのではないだろうか。

希望を持っての結末ではあったが、重厚なテーマで内容が暗いので読後疲れが残るものはあった。
殺人、病める人、虐待など素材が先日読んだ『愚行録』と大分類似していた気がする。

読了日:2011.2.6
★★★☆☆

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2011年2月 8日

ruru (20:09)

カテゴリ:国内ミステリー貫井 徳郎(ミステリー)

『なでしこ御用帖』宇江佐 真理

お紺の父方の祖父は元与力、母方の祖父はその小者、今でも叔父は南方奉行所で吟味方与力を勤めている。 おきゃんなお紺は、周りからなでしこちゃんと呼ばれて可愛がられていた。 ある時次兄流吉に殺しの疑いがかかり、お紺は岡っ引きの金蔵に頼み込んで現場へと出かけていくのだが・・。

『斬られ権佐』の続編らしいが、あいにくこちらはまだ読んでいない。
それでも特に困ることはなく読むことができた。

兄二人とは対照的に祖父らの血を濃く受けついたお紺が、身近な事件の捜査に乗り出す。
おきゃんな姿が可愛らしい。

肝が据わっているようで、二人の男からの求婚にはまだまだ子供の対応。
そんなお紺が、事件に関わりあいながらも少しずつ成長していく。

同心の有賀と医者見習いの要之助二人からの求婚に「どちらも足りない」と考えていたお紺が、兄の言葉で見方を変えていく様は、物が分ったと言うべきなのだろうか。
意外な展開に少し驚いた。

事件を扱いながらも人情物語が主という作りは宇江佐さんらしい作品。
いつも通り気軽に楽しむことができた。

読了日;2011.2.3
★★★★☆

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2011年2月 5日

ruru (00:31)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『見た、訊いた、買った古美術』小山 登美夫

現代美術のギャラリスト小山氏が、12箇所の骨董店で身銭を切って古美術品を購入。
店主とのやり取りから背景や価格までを赤裸々にまとめた1冊である。

著名なギャラリストだが、ジャンル違いということもあってか目線も低く丁寧にインタビューしているのでわかりやすくて面白かった。

実際に購入した作品の写真や値段も載っているので参考にもなる。
総額はかなりいったようだが、1つ1つはそれほど高価な作品ばかりでないので身近に感じられるというのも良かったと思う。

初心者向けでオススメ。

読了日:2011.2.4
★★★★☆

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2011年2月 4日

ruru (13:50)

カテゴリ:趣味系

『神田堀八つ下がり―河岸の夕映え』宇江佐 真理

火事で焼け出され、御厩河岸に越してきた元大店の娘おちえ。 暮らしの変化を憂いていたおちえを、船宿川籐の息子勘次が嫁にもらいたいと言って来る。 勘次の母は捨て子を5人も育ててきた男勝りで有名な"どやの嬶"と呼ばれる女性だった。 『どやの嬶』他河岸を舞台にした江戸人情物語短編集。

『どやの嬶』では、"ぼんやり"と言われるお嬢さんだったおちえが新しい暮らしに馴染み、賑やかな船宿へ嫁ぐことを決めるまでの物語。

大店の娘としておっとり育ったおちえが少しずつ変化・成長していくのだがこれがどうものんびりしている。
しかし周囲の人々からあれこれせっつかれながら大人になっていくおちえの様子が微笑ましいような寂しいような。

『浮かれ節ー竈河岸』は少し粋な話。
小普請組の三土路は唄自慢のしがない武士。
都都逸での唄対決で娘の支度金を作ろうとするが・・。
家族の愛情が優しい物語。

『身は姫じゃー佐久間河岸』は、岡っ引き伊勢蔵が再登場。
『おちゃっぴい』の続編となっている。
お姫様らしき迷い子を保護したものの一向に捜査が進展しない。
身分高きお姫様と町人とが心を通わせる光景が温かい。

『百舌ー本所・一ツ目河岸』では年のいった兄弟たちの愛情を感じる物語。
年を取れば取ったなりに心持がある。
しっとりした印象。

『愛想づかしー行徳河岸』は、男女の愛憎。
大店の若旦那が勘当中に付き合っていた女との別れ話がもつれていく。
お幾の心はわかるようなわからないような・・。
いくらでも幸せになりようはあったのにと思えてしまう切ない話だった。

『神田堀八つ下がりー浜町河岸』ではまたまた菊次郎再登場。
素晴らしい青年ながら貧乏故に路が開けない武士の次男を援助しようと考えるが、青年は受け付けない。
武士や商売人、医者、料理人と様々な立場の人間たちが入り乱れて助け合う江戸の人情物語で良かった。

それぞれ独立したようなつながっているような短編集だが、宇江佐さんらしい人情物語集で読後感としては満足である。

読了日:2011.1.31
★★★★☆

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ruru (00:27)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

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