2011年3月アーカイブ

『目線』天野 節子

建設会社社長堂島新之助が、自身の誕生日パーティーの日に死体となって見つかり、状況から自殺と断定される。 しかし初七日の日に再びパーティー参加者たちに新たな惨劇が。 そもそも新之助は自殺だったのか。それともこれは連続殺人なのか・・。

洋館でのパーティー開催日に起こる事件。
参加していたのは家族や友人たちだが、誰もが一般的な普通の人たちの設定ということもあり本格ミステリのような雰囲気は一切ない。

会話が多く読みやすいので何となく一気に読んだが、ミステリとしては全く満足できない。
最後にぶつけてくる"真相"はタイトルからして早くにわかっていたことだ。
ただ多くの登場人物たちの人物像の中に浮かび上がってこないことこそ謎だと思いながら読み進めていただけ。
まさか「実は・・」と仰々しく解決編に持ってくるとはばかばかしすぎる。

堂島新之助に始まり人物像がゆるく、人間関係が掘り下げられていかないことも気になる。

これで"ミステリ"はちょっとないな、という感じ。
『氷の華 』がとても面白かったので期待して読んだのだが残念だった。
また次回作に期待である。

読了日:2011.3.28
★★☆☆☆

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2011年3月28日

ruru (22:58)

カテゴリ:国内ミステリー天野 節子

『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』歌野 晶午

刑事の舞田歳三は、度々兄理一の家に寄り姪のひとみと遊ぶ。 担当する事件が行き詰っているとひとみの言動から解決への糸口が見つかることも多く・・。

元気な小学五年生ひとみがピンポイントでヒントをくれるという設定がうまく生きている。
安楽椅子探偵とまではいかないが、遠まわしの謎解きが違和感なく繋がっていくので面白い。

浜倉という小さな地域内の事件が次々と関係していくのが巧くできていると思いながら読んでいたが、最後に解決もなく終わってしまった事件もあったのでやや拍子抜けした。
次回作につながるのだろうか。

あと1点気になったのは、夢のために子供を捨てる母親なんていないだろうと思うのだが。

軽いミステリでストレスなくすぐ読める。

読了日:2011.3.27
★★★☆☆

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ruru (22:30)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

『聖域捜査』安東 能明

第一線の刑事になることを夢見ていた結城は、40歳にしてようやく私服刑事となる。 しかし配属先はダフ屋と風俗関係の取締りしか能がないと軽んじられている"生活安全特捜隊"だった。

ふと手に取った1冊で初めてこの著者の作品を読んだのだが面白かった。

いわゆる警察小説の連作集である。
主人公は保身を身につけつつも捜査への熱い思いを持つ刑事。
本当は花形部署での活躍を夢見ていたものの、様々な事件に関わるうちに徐々に"生特隊"の仕事に面白みを感じていく。

援交、ごみ屋敷、苦情対応など警察内では軽んじられる風紀案件の裏にある重大事件を嗅ぎ付けて引き出していく展開が面白い。
決着までを描かず余韻を残りしての結末も心地よい。

誰もが持つ他人に触れられたくない心の奥の"聖域"捜査。
脇を固める上司や部下の設定も程よくバランスが良く、ミステリとしても楽しめた。
続編が出たら是非読みたい。

読了日:2011.3.24
★★★★☆

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2011年3月24日

ruru (22:57)

カテゴリ:国内ミステリーその他の作家(ミステリー)

『小さいおうち』中島 京子

老女タキが女中奉公の思い出をノートに綴る。 平和な時代から戦争へ-12年という月日を過ごした赤い三角屋根の家は、タキにとって唯一無二の家だった。

昭和初期、尋常小学校を出て田舎から上京したタキ。
女中という仕事にプライドを持ち、都会的な奥様に傾倒し坊ちゃんをわが子のようにお世話して・・。

めまぐるしく変わっていく時代にありながら、タキの狭い視点は家の中の主人家族の動向に集約されている。
戦争へと向かう暗澹たる時代背景と家の中で繰り広げられる平和な家庭の光景の対比が明暗のコントラストをはっきりさせたり、現代と過去を行き来する構成は巧いと思う。

ただ奉公に上がってからの出来事の淡々とした語りが続くので、飽きはこないものの単調で抑揚がないストーリーだった。
最終章への流れも早い段階で読めるので驚きもない。
女中の心得の逸話がややしつこかったような・・。

強い印象は残らないが、上品に仕上げた丁寧な作品。

読了日:2011.3.23
★★★☆☆

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『孤宿の人 (上) (下) 』宮部 みゆき

江戸から金比羅代参へ向かう途中に置き去りにされた少女ほうは、丸海藩の井上家で女中として働き始める。 同じ頃、丸海藩では罪人である元勘定奉行加賀様をお預かりすることになり落ち着きを失っていた。 鬼と恐れられる加賀様の到着に合わせたように奇怪な事件が続き町中に不安が広がる中、ほうの立場も二転三転していく・・。

著者はこの作品は少女の成長物語だと述べている。
確かに愛情薄く阿呆の"ほう"と呼ばれ自分でもそう信じ込んでいた少女が、徐々に自分で考える力を身につけていく様は成長と言えるだろう。
ほうはたどたどしくも一歩一歩前に進み、物語後に丸海藩で生き生きと暮らすだろう姿を思い浮かべることができるのは少しほっとする。

しかし全体的なトーンとしてやるせなさがつきまとう。
ほうの設定はもちろん、次々と人が死に続ける展開には宮部さんに何かあったんだろうかと訝しい思いを感じてしまうほどだ。

丸海藩は架空の藩だが、繊細な風景描写やそこに住まう人々の生き生きとした心理描写に引き込まれてしまうのはさすがの筆力。
すっかり物語の世界に心が入り込んでしまうのだが、その分心を寄せた人々の死が次々と死んでいくのは切な過ぎる・・。

加賀様にしてもモデルとなった鳥居耀蔵の人生とは大分異なる哀しいものとなっているし、ここまで丸海藩をかき回す必要があったのだろうか。
加賀様がもう少し早く登場してその心情を掘り下げてもらいながらほうの成長を描いてもらった方が、悲しい中にもまだ納得がいった気がする。

しかし穏やかさを取り戻した結末は希望の始まりとも言えるのかもしれない。

読了日:2011.3
★★★★☆

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2011年3月23日

ruru (01:47)

カテゴリ:国内小説一般宮部 みゆき

『幻視時代』西澤 保彦

文芸評論家の悠人にとってミステリ作家オークラは学生時代の文芸部の後輩である。 二人はとある写真展で、1992年に撮られた写真に部活仲間であった風祭飛鳥の姿を見つけて青ざめる。 何故なら彼女は1988年に死んでいたからだ。 自殺とも他殺とも解明されぬまま・・。

写真に写るはずのない仲間の姿を見つける主人公たち。
幽霊なのだろうか・・?と謎を持たせたところで高校時代へと舞台は移る。

その後はしばらく高校生の青春ライフが描かれ、不穏な空気は一切ない。
文芸部で真剣に創作に励む飛鳥、彼女に好意を寄せる悠人、悠人になつくオークラ。
小説家への夢半ばで指導に励む国語教師白州、彼と同窓で文筆の才能豊かだった悠人の亡き母。

創作を通じて絡み合う人間関係だが、それほど重厚なものもなく事件の予感はない。
飛鳥の多面性が伏線のようにはなっているものの、基本的には文芸好き学生たちの青春物語の趣である。

やがて世間に認められ始めた飛鳥が自宅で死体となって発見されるわけだが、そこまでが結構長いので展開が読めずにやきもきした。

最後謎解きに入ってからの方が面白い。
挙げられる論理にひとつひとつ惑わされて振り回されるのが楽しかった。
過去の回想はもっと短くても良かったのではないだろうか。

大体西澤作品というのがくせもの。
淡い青春物語なのかエログロなのか。
この人なら超常現象も大いにあり得るけれど、そう見せかけて気合の入ったミステリかもしれないし・・などと方向性が全く読めない。

一番の謎となった写真の解明はいまいちな気はしたが、登場人物たちの心理描写や結末への流れは納得といったところ。

頭がぐるぐる回って読後に疲れが出た。
でもそこが魅力でもある。

読了日:2011.3.22
★★★★☆

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2011年3月22日

ruru (19:24)

カテゴリ:国内ミステリー西澤 保彦

『金雀枝荘の殺人』今邑 彩

内側から密閉された館内で6人の男女が殺された。 1年後、事件の真相を探るべく館を訪れた新たな6人にも惨劇が繰り広げられることとなる。 呪われた館で起こる事件の真相は・・。

旧家が持つ別邸である館で主の曾孫たちを襲う惨劇。
鍵を握るドイツ人の曾祖母の存在。
内側から閉じられた密閉空間。

館モノの本格ミステリで、読み応えは十分。
トリックや真相にも納得ができて久しぶりに満足できた本格ミステリかもしれない。

美江の存在感が薄く不要な気もしたが、最後までスピード感があって一気に読んでしまった。
クローズドサークル・血縁・反復・・意外性はなくとことん王道という印象。
それでいて複線の張り方が巧いので展開が読みきれない面白さがあった。

館モノが好きな方にはお勧め。

読了日:2011.3
★★★★☆

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ruru (18:38)

カテゴリ:国内ミステリー今邑 彩

『密室殺人ゲーム2.0』歌野 晶午

互いに正体を明かさぬままインターネット上で殺人トリックを披露し合う仲間たち。 犯人役は実際に殺人を犯し、密室トリックを実践するという究極の推理ゲームが行き着く先は・・。

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』続編。
含みを持たせた結末だったので気になってすぐ読むことにした。

読み始めてもなかなか謎はすっきりしない。
前作と同様のトーンながらどこかねじれがあるような構成。
著者の狙い通り"ずらし"が深みをもたらしている。

読んでいくうちにあっと言わされるトリックがあちらこちらにあってすごい。
ただえぐさが増しているので読み進めるのに苦痛を伴う。
気分が悪くなる箇所も・・。
何とか最後まで読んだが、色々とミステリを読んでいる私でもこうなのだから馴染みがない人には厳しいのではないだろうか。

前作に続き無駄のない構成と意外な展開は良かった。
技巧は素晴らしいと思うので後は好み次第だろうか。

読了日:2011.3.10
★★★☆☆

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ruru (18:08)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

『ほら吹き茂平』宇江佐 真理

大工の棟梁茂平は気楽な隠居の身。 ほらで周りを笑わせたり呆れさせたりしながらのんびり暮らしている。 つらいことはほらで吹き飛ばして生きてきた茂平と家族の話『ほら吹き茂平』他江戸人情物語集。

副題に「なくて七癖あって四十八癖」とあるように、人のちょっとした癖にスポットを当てた短編集。
宇江佐作品では久しぶりに明るい人情話が多かったように思う。

茂平の話は力強く暖かい家族の話にほっとできた。

霊が見える尼浮風が主人公の千寿庵の話は2話あるが、切ないながらも心温まるものがある。
設定が面白く話が膨らみそうなのでシリーズ化しても良さそう。

『金棒引き』では、噂話好きの町人たちを主人公にしながら幕末の様子を描く歴史小説の一面もある話。
雑然とした町人の暮らしと将軍家茂に嫁いだ皇族和宮が組み合わさっているところが面白い。

『せっかち丹治』は貧しい長屋でせっかちな父の背中を見て育ったおきよ。
大店からの縁談に裕福な暮らしを夢見てみるものの・・・。
父娘の繋がりと愛情、分相応の幸せを感じられる温かい話だった。

割と温かい話が多くてなんだか違和感があるなあと思っていたら、最後の『律儀な男』は切ない話になっていた。
意外かつやりきれないような展開にため息が出る。
しかしこれも熱い義理人情話でじんときた。

全体的には人のつながりを感じられる人情物語ばかりで読み応えのある一冊だったと思う。

読了日:2011.3
★★★★☆

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2011年3月21日

ruru (23:09)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『占い屋重四郎江戸手控え』池永陽

重四郎は五度に一度だけぴたりと的中するという天眼通の持ち主。 柳剛流の使い手ながら占い屋で生計を立てている重四郎の下には次々と訳ありの客がやってくる。 そんな重四郎が一番気になるのは暗い影が見えた長屋のおみつの存在なのだが・・。

自分に見えた"未来"が当たるか外れるか。
結果が気になってついつい客に関わってしまう重四郎。

剣は強く、しかし欲もなく貧乏暮らしののんき者。
時代小説の主人公としての魅力は十分ではないだろうか。

1話毎に客が代わり事件が起こって解決していく連作集でとても読みやすい。

全話を通して登場するおみつの存在がどうも男性目線過ぎるというか・・最初から含みがありすぎてあまり魅力がないのが残念。

重四郎の性格と反して話が意外と悲しいものが多いのが寂しいところだが、友人の左内、剣の達人源内などの存在感も程よく、シリーズ化しても面白そうである。

天眼通という特殊な要素があるものの"the時代小説"といった話で軽く読むことができた。

読了日:2011.3
★★★☆☆

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2011年3月20日

ruru (22:53)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『幻色江戸ごよみ』宮部 みゆき

酒問屋伊丹屋で小火が出た。 出火元は神棚上の注連縄。 そこには子を思う母親の強い想いが込められていた・・『鬼子母火』他江戸を舞台にした幻想人情物語集。

12話の短編から成る1冊。
どの話もどこか不思議でそして切ない。

ほっとするような話もあるが、やりきれない哀しい物語が多い。
それでも読後にはむなしさよりも読ませてくれたという満足感の方が高い。

1話1話全く異なるごく短い物語ばかりだが、市井の人々の心の隅々にスポットを当てるような完成度が高い作品ばかりである。
どれか1話となっても甲乙つけがたくどれも良かった。

宮部さんが心理描写に長けているのは現代小説でも時代小説でも変わらないと強く感じた。
全編を通してややもの悲しいトーンではあるが、上質な時代小説短編集でお勧めしたい一冊。

読了日:2011.3
★★★★★

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『密室殺人ゲーム王手飛車取り』歌野 晶午

素顔を明かさずにwebチャットで殺人推理ゲームを楽しむ5人。 ここでのルールは、出題者自らが実際に起こした殺人事件を他の4人が推理するというもの。 「殺したい人間がいるから殺したのではなく、使いたいトリックがあるから殺してみた」。 それぞれが趣向を凝らしたトリックを披露し合う彼らに待ち受ける結末とは・・。

ただの探偵ごっこではつまらない。
ミステリ好きが高じて実際に殺人を犯して謎解きをし合う5人。
順番に事件を起こし問題を出し合うのである。

軽いノリで人を殺し推理しあうという悪趣味な設定。
しかし、作者が書いているように荒唐無稽とは言い切れない危うさが現代にはある気がする。

一つ一つのトリックは彼ら5人のように論理的なようでいて稚拙さもあるようなものばかりなので、それだけではやはり物足りない。
完全犯罪となっていることが前提だが、しっかり警察に捕まりそうである。
しかし、関わる5人の素性への興味がつきないことで面白味が増している。

「茫然自失のラスト」と裏表紙にあるが、確かに意外な展開で読みきれなかった。
途中のトリックにはう~ん・・と引き気味だったが、全体的には面白かったと思う。

結末に含みを持たせているのでどうもすっきりしない。
続編が出ているので早速読んでみたいと思う。

読了日:2011.3.5
★★★★☆

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2011年3月 6日

ruru (06:08)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

『たぶらかし』安田 依央

葬式の死体、セレブな女社長、理想通りの嫁・・マキは一般人の依頼に合わせて演じる代役女優である。 先が見えない曖昧な仕事に埋没しているマキに、弟子となった若い俳優モンゾウが心の波紋をもたらす。

結婚式や葬式の人数合わせ、PTAや親戚づきあいの代行など、実生活での代役専門女優という仕事。
こういった代行業は実際にあるように聞いたことがある。

多少大げさに仕立ててあるので、代行俳優業をおもしろくエンタメ化したかったのか。
それとも一女優または女性の生き方への葛藤を描きたかったのか。
一応マキと依頼者たちの心の葛藤と成長、人間関係のあり方などが主題なのだろうか。
何となく読みきれるのだが、何が言いたいのかは軸がぼやけていてよくわからなかった。

第二十三回小説すばる新人賞受賞作。
出版業界から見た将来性は一般人が理解するのは難しいのかもしれない。

読了日:2011.3.4
★★★☆☆

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2011年3月 5日

ruru (08:50)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『虚ろ舟 泣きの銀次参之章』宇江佐 真理

銀次とお芳の長女おいちは武蔵屋の長男清兵衛の元へと嫁いだ。 次女のお次は絵師の和平に思いを寄せているが、二人は和平の足が悪いことを理由に結婚に踏み切ることができない。 そんな頃銀次は空を飛ぶ「虚ろ舟」を見る。 これは良い知らせなのか悪い知らせなのか・・。

『泣きの銀次』『晩鐘 続・泣きの銀次』に続く泣きの銀次シリーズ第三作。

作中銀次が見る「虚ろ舟」とはUFOのことらしく、実際に江戸時代の記録にもあるのだとか。
このUFOに絡めて人の人生の浮き沈みを描いている。

銀次も年を取ったが、勘兵衛がずいぶん老人になって登場したのが少し寂しい。
次世代の子供たちが幸せになってくれればそれもまた良しだが、そうはうまくいかないのがいかにも宇江佐さんらしい。

幸せを掴むおいち、踏み切れずに悪い方へと向かうお次、跡取りとしての自覚を持つ長男盛吉、お三はまだ子供だが兄弟たちから何を学んでいるのか・・。
同じ家に育った子供たちも進む道はそれぞれである。

和平は古くから馴染みの登場人物だったのでこのような話になってしまったのはとても残念。
しかし人の心などどうとでも変化するし、ふとしたことで好転したり悪路へ迷い込むのが人生だとも言える。
人の心の弱さ、なすべき時に正しい決断をくだせないことがもたらす結果の重さは和平と言う重要人物でなければ描けなかったのかもしれない。

寂しさややるせなさは残るが作品としては読み応えがあったと思う。

読了日:2011.2.28
★★★☆☆

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2011年3月 2日

ruru (00:15)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『光と影の誘惑』貫井 徳郎

競馬場で出会った銀行員の西村と日雇い労働者の小林。 二人は銀行の現金強奪を企み、金を奪うことに成功する。 しかし事態は思わぬ方向へと進み新たな悲劇へと足を踏み入れていく・・。 表題作『光と影の誘惑』他中篇ミステリ4編。

『慟哭』での時間軸トリックがあまりに衝撃的だったのでなかなかそれを超える衝撃には出会えないが、貫井さんならではのトリックがふんだんに使われている中編集だった。
この本は再読だったらしく記憶にあるようなないような状態で読むことになってしまったのが残念。

『長く孤独な誘拐』では、子供を誘拐された夫婦が身代金の代わりに別の子供を誘拐させられるという意外性のある誘拐劇が展開される。
自分の子供のために周りが見えなくなる夫婦、金のために残忍な計画を立てる犯人、利用される子供たちの関係性が絡み合って心理サスペンスとしての完成度は高いが後味はよくない。
貫井さんの作品には翻弄される子供たちの存在にやるせない気持ちにさせられることが多い気がするが、こちらもそのような作品だった。

『二十四羽の目撃者』は異質なアメリカを舞台にしたミステリ。
全く別の作家が書いた探偵小説のような作りだが、面白かったと思う。
たまにはこういった作品が書きたいと考えたのだろうか?その点だけが不思議である。

『光と影の誘惑』『わが母の教えたまいし歌』は何となく展開が読めてしまった。
心理描写がとても巧いので惹きつけられるが、冒頭からあのパターンかと気付いてしまうものがあった。

寄せ集め感があった1冊だが、中身は濃かったと思う。
ちょっと物足りなさはあるが、初めて貫井作品を読むのなら良いかもしれない。

読了日:2011.2.28
★★★☆☆

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2011年3月 1日

ruru (15:54)

カテゴリ:国内ミステリー貫井 徳郎(ミステリー)

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