2011年4月アーカイブ

『深尾くれない』宇江佐 真理

鳥取藩士の深尾角馬は多くの弟子を持ち、藩の剣法指南を務めるほどの剣の腕前で周囲からも一目置かれていた。 しかし家庭では姦通した先妻に続き後妻までもを切り捨てることとなる。 残された娘もまた不始末を起こすが斬るべきかどうか・・。 "雖井蛙流"開祖である剣客の半生を描く。

"雖井蛙流"という流派が実際にあり、史実を元にした小説らしい。
大分宇江佐さんなりの肉付けが施されているようだが、元々知らなかった人物の話なのでまっさらな気持ちで読んだ。

前半は後妻かのとの結婚から斬り捨てまで、後半は娘ふきとの暮らしと壮絶な最期までが描かれている。

角馬は一流の剣士としての外の顔と卑屈で不器用な内向きの顔二つを持っている。
人付き合いに無頓着だからこそ剣の道を極めていけたのかもしれないが、もの悲しさを感じる人生だ。
剣士としての活躍以上に家内へスポットを当てて角馬の人生の寂しさを書き上げたのは宇江佐さんならではの視点だろう。

最初はかのに感情移入して読んでいたので、前半の結末にやりきれなさを感じて角馬が嫌いになった。
後半も途中まではふきの目線で読んでいたので印象が悪かったが、角馬の父親らしい言動が出てきたことで最後は何とか角馬にも共感できた気がする。

しかし妻と娘でこうも違うのか・・と思うのは女だから?
何となく納得がいかないようないくような。

"雖井蛙流"を起こすくだりはあまり興味が持てずに読みにくさもあったが、"深尾くれない"なる花を物語の中心に据えて展開していく表現は巧いと思った。

剣豪を描きながら限りなく女性目線なところを良しと思うかが感想の分かれ道だろうか。
個人的にはあまり角馬に魅力を感じられないからか、もうひとつという印象だった。

読了日:2011.4.10
★★★☆☆

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2011年4月11日

ruru (00:14)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『初ものがたり』宮部 みゆき

本所深川一帯を預かる岡っ引き茂七は、最近営業を始めたいなり寿司屋台の味が気に入っている。 元武士の親父との会話から捕り物のヒントを得ることも多く、難事件を抱えるとつい足が向いてしまう。 鰹、白魚、鮭に柿・・初ものがからんだ人情捕り物集。

食と事件という組み合わせはミステリの中では定番とも言える。
各話に登場する”食”と関連性がある事件簿という好きな構成なので読んでいて楽しかった。

食は突き詰めれば関わってくる人の嗜好や内面、人生まで見通せるところがあって話に深みを持たせてくれると思う。
この作品でも人の心を表現するために巧く使われている。

元武士で料理の腕を磨くことに余念のない屋台の親父、情に厚い岡っ引き茂七や下っ引きたち、周囲に敬われる霊能力者の少年など登場人物たちも多種多様で魅力的だ。

今後も続く連作短編集の体を取っているが、その後何年も続きは出ていないようだ。
親父の正体や長助の今後など気になることが多いまま終わっているので残念である。

今のところ宮部さんの時代小説で一番面白いと思ったので是非続きを出していただきたい。

読了日:2011.4.9
★★★★☆

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2011年4月10日

ruru (23:31)

カテゴリ:国内ミステリー宮部 みゆき(ミステリー)

『さらわれたい女』歌野 晶午

便利屋の黒田の元へ自分の誘拐を依頼してきた小宮山佐緒理。 狂言誘拐プランを実行するだけで多額の金を手にできる簡単な仕事のはずだった。 しかし、潜伏場所へ戻った黒田は佐緒理が殺されているのを発見する。 いつ、誰が、何故・・?困惑する黒田に更なる試練が襲い掛かる。

単純な狂言誘拐。
便利屋の黒田にとって大した仕事ではないはずだったのに、事態はとんでもない方向へと動き出す。

誘拐した側の黒田、佐緒理を誘拐された小宮山家と交互に視点は変わる。
誘拐における電話トリックは古くささがあって検討しづらいものがあったが、巧くできていると思う。
スピード感ある誘拐劇に気を取られているうちに殺人事件が発生するという展開が面白い。

全く新しく現れた殺人者に検討がつかないまま話が展開していくのでわくわくできた。
結末もまさか・・と思いつつのどんでん返しで最後まで気を抜かない作り。

軽いタッチですぐに読み終わるのは歌野氏らしいが、中身はかなり充実していたと思う。
本格という分野には入らないが、現代ミステリという中で良作だった。

読了日:2011.4.6
★★★★☆

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2011年4月 7日

ruru (17:02)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

『舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵』歌野 晶午

愛美璃・凪沙・夏鈴は私立の女子中学生。 愛美璃の小学校時代の同級生舞田ひとみと共に身の回りで起こる難事件へと立ち向かう。 募金詐欺らしき女性を尾行した数日後、彼女は死体で発見される。 容疑者が捕まるもののひとみの推理によれば真相は・・?

『舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵』の続編。
月日は流れ、幼く可愛いらしかったひとみが反抗期の女子中学生となって再登場。
成長は嬉しいが、父理一と衝突中なのがちょっと寂しい気もする。

前回は叔父である刑事歳三が主人公だったが、今回はひとみの友人の視点で展開していく。
女子中学生たちが推理を展開し、そこに警察との橋渡しとして歳三が絡んでくるという設定。
今回はしっかりひとみが探偵として活躍するのでタイトルには合っている。

登場人物の少女たちの設定とセリフの言い回しがオタクっぽい紋切り型なので少し拒否反応が出たが、軽くて読みやすいのですぐに読み終わった。

基本的にはそこそこのミステリになっているのでそれなりに楽しめる。

読了日:2011.4.5
★★★☆☆

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2011年4月 6日

ruru (23:39)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

『裸足と貝殻』三木 卓

終戦後、小学5年生の少年豊三は祖父・母・兄と共に引揚げ船で日本へと戻ってきた。 中国で育った豊三にとって日本は未知の国。 敗戦で国が混乱する中静岡で始まった生活は貧しく困難なものだったが、豊三は逞しく生き生きと学校生活を送っていく。

著者の自伝的小説。
終戦後の日本の様子や引揚者の生活を一番無力な子供の視点で追っていくのが新鮮で面白い。

中国で父と祖母を亡くし、着の身着のまま日本へと戻ってきた加納一家。
親戚の家に身を寄せるものの自立を目指して母はすぐに働きに出る。

地元の小学校に入った豊三は、本を読んでは小説を書き、政治に興味を持ち、不自由な左脚にコンプレックスを抱きながらも友人を増やし共に影響しあいながら成長していく。

先生は元軍人に古本屋に芸術家にと多種多様な寄せ集め。
学歴詐称の母小夜も高校生だった兄の鷹次も教職にありつけるような時代だった。

隣り合わせの死、食糧難、貧富の差、アメリカ支配下の政治や思想の取り締まり・・。
混沌とした世の中にあって、あるべきことを受け入れながら逞しく生きる豊三に戦後の少年たちの姿を見ることができる。

悲壮感など全くない。
受け入れて進むしかなかった戦後。

子供の豊三だけでなく周りの大人たちも全て、ただただ前へと進んでいく当時の日本人の底力を感じては静かな感動に浸ることができた。

久しぶりに上質な小説を読んだという満足感がある。

読了日:2011.4.4
★★★★★

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2011年4月 5日

ruru (20:02)

カテゴリ:国内小説一般三木 卓

『新装版 動く家の殺人』歌野 晶午

信濃譲二は小劇団の制作として働き始める。 劇団員とも馴染み無事に公演初日を迎えるが、舞台上で役者が刺される事件が起こってしまう。 何とか公演をやり通すことに腐心する役者たちに対し、信濃は独自の捜査に力を入れるが・・。

前書きに作者の"信濃殺害"宣言があった時点で驚いた。
やっとこの探偵に慣れてきたところだったが、この3作目で終了だったらしい。

少しがっかりしながら読み始めるが、冒頭から違和感が漂い続ける。
二作目から作風が変わったのかと思い発行年月日をなぞってみたほどだが、最終的には仕掛けがわかって納得。

劇中と現実が交差していくのと漂う違和感でなかなか事件に集中できないものもあるが、登場人物たちも事件もいまいち冴えない。
しかし今回は事件は添え物程度で大きなトリックが待ち受けているのでこちらがメインなのかもしれない。

こんな退場の仕方をした探偵がいたか?と苦笑してしまったが設定上仕方ないところか。
探偵のシリーズ物は好きだが、確かにこのキャラクターはあまりファンがつきそうにない。
また復活することもあれば読んでみたいと思うが、完結ならそれでも良いかな。

読了日:2011.3.
★★★☆☆

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2011年4月 3日

ruru (10:40)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

『新装版 白い家の殺人』歌野 晶午

猪狩家令嬢の静香が八ヶ岳の別荘内で逆さ吊り死体となって発見された。 その場に居合わせた市ノ瀬徹は探偵として信濃譲二を推薦するが、信濃の到着前に第二の事件が起こってしまう。 明らかになっていく猪狩家内の愛憎と過去。 信濃は事件の真相を暴くことができるのか。

雪の別荘での密室とアリバイトリック。
定番ではあるが、狂気的な設定や凄惨な現場が多いのは歌野氏らしいと言っていいのだろうか。
まだ数作しか読んでいないがそういう印象だ。

相変わらず信濃の言動が作られすぎている気がする。
今回は表立って"探偵"として登場することもあって余計に芝居がかっている。
しかしキャラクターとしてしっかりイメージ付けられてきたので愛着は沸いてきた。

奇抜なトリックの必要性に疑問も感じたが、テンポがよく飽きることなく一気に読めた。

いつも思うのだが、歌野氏の作品はトリックや人物設定・展開など各パーツに目を向けると首をひねるようなところがあるのだが、総合的にはなんだかまあ良かったかなと思ってしまう。
まとまりが良いのだろうか。

読了日:2011.3.
★★★☆☆

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2011年4月 2日

ruru (14:52)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

『新装版 長い家の殺人』歌野 晶午

大学生バンドメープル・リーフの合宿中に起こった殺人事件。 越後湯沢のロッジ内で忽然と消えたメンバーが、翌日には館内で死体となって見つかる。 殺害現場も犯人もわからぬままメンバーたちは東京に戻り追悼ライブを企画する。 しかし更に新たな犠牲者が・・。

歌野氏のデビュー作。
登場人物たちの言動や展開など、なるほど若いなという印象。

探偵役の信濃のキャラクターは作りすぎている気がするし70年代風のノリに古臭さも感じたが、人の良い市ノ瀬とのコンビは悪くない。

主たる密室トリックはわかりやすく物足りないと言えば物足りない。
しかし付随する暗号やプロローグからの伏線など全体的には読み応えがあって面白かったと思う。

最近歌野氏の作品を読み始めたのだが、文章のテンポがよく読みやすいのはデビュー作から同じようだ。
本格というジャンルの中にありながら軽く一気に読めるのが気楽で楽しい。

読了日:2011.3
★★★☆☆

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ruru (10:26)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

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