2011年8月アーカイブ

『竹島御免状』荒山 徹

柳生十兵衛の元から鳥取藩へと派遣されていた裏柳生が殺された。 陰陽師の柳生友信は、父が遺した仕掛けにより朝鮮妖術師の日本侵入を察知していた。 二人は変事の真相を追究するため鳥取藩へと向かうが、彼らの前には逆生した荒木又衛門・柳生五郎右衛門・深尾角馬が立ちはだかる。

竹島一件をベースにした時代伝奇小説。

妖術師が奇怪な術を使ったり、死んだはずの剣豪が生き返っていたり、柳生十兵衛が90代ながらにバリバリの剣豪であったりとエンターメント性の高い小説になっている。

前作らしきものがあるようだが、私はこの1冊しか読んでいない。
関係なく読み進めることはできた。

読み始めはおどろおどろしい伝奇物なのかと思ったが、進むにつれて印象は変わる。
漫画的なノリがあって結構笑えるものがあるのである。
最後はさくさくと敵が死んでいくのもあっけなくて苦笑いだが、意外と引き込まれて一気読みし、読後の印象も悪くない。

歴史上の人物たちを愛情もって遊んでいる高揚感が伝わってくるのが良いのかもしれない。

時代が異なる剣豪たちが生き返って同時期に戦うというのは誰しも心躍るはず。

だが、深尾角馬に関しては少し前に宇江佐さんの『深尾くれない』で読み込んだところだったので、この小説での扱いはやや寂しい気もした。
雖井蛙流で蛙に転生とは泣ける。

まあ他の人物たちもなかなか可哀想な扱いの者もいるが、豪華ラインナップを楽しめる点で面白かったと思う。
色々と意味を持つ歴史上の出来事を踏まえた上であくまで軽快な伝奇時代小説にまとめたところがお見事。

読了日:2011.8
★★★★☆

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2011年8月19日

ruru (18:49)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『狐笛のかなた』上橋 菜穂子

里から離れて暮らす小夜は、人の心が読める<聞き耳>の力を持っていた。 小夜はある時、犬に追われた子狐を助けるが、この子狐は隣国の呪者の使い魔野火であった。 隣国との争いに巻き込まれていく小夜と野火。 二人の思いが未来へと繋がっていく・・。

『守り人』シリーズと一緒に買ってあったもの。
読みやすいのですぐ読み終わる。

こちらもファンタジー。
時代も国も曖昧だが和風テイストである。

武士同士の争いと異界<あわい>を通した呪者の争いが同時進行していくのだが、このような形は著者のパターンなのだろう。

今回は主人公は自分の力についてもわかっていない小夜という娘。
かつて命を助けられた野火は、主に背き、命をかけて小夜を守ろうとする。
小夜もそんな野火に惹かれていき・・という切ない恋物語にもなっている。

どこか懐かしい設定の舞台と幻想的な異界の存在など面白く読めたが、どこかふんわりしていて心に残らない印象でもある。
小夜の力の発揮具合が曖昧なせいだろうか。
『守り人』でも感じたが、戦いのシーンがやんわりしすぎているため緊張感がないからかもしれない。
幻想的な結末で悪くもないのだが、ファンタジーの中にも人の生き様たるリアリティがなければ物足りない気がしてしまう。
児童文学としてはこのくらいのふんわり仕上げが丁度いいのかもしれないが、大人にはやや物足りないものがある。

読了日:2011.8
★★★☆☆

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2011年8月14日

ruru (00:14)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『青い壺』有吉 佐和子

無名の作家の手による青い壷。 定年退職後の夫婦、子供が独立した夫婦、目が見えなくなった母を引き取った娘、上流生活に思いを馳せる老女・・・青い壷は売られ譲られ次々と持ち主を変えていく。 壷に関わる人々の心情を浮き彫りにしていく連作短編集。

久しぶりの有吉佐和子。
時代が古く現代とそぐわないような描写も多々あるが、鋭い観察眼によって浮き彫りにされる人間心理は、時代を超えて心寄せられるものである。

退職した夫を疎ましく思う妻、子供たちの心無い言葉に傷つく母、戦前の豊かな暮らしに思いを馳せる老女、50年ぶりの同窓会に心躍らせる老女、熱意を持って働く新人社会人・・青い壷はくるくると持ち主を変えながら女性たちの暮らしと心情にスポットを当てていく。

著者らしい細やかな視点で綴られる登場人物たちの心のうちは、共感や寂しさ、暖かさをもって読むことができた。

全13話に渡って主人公をかえていき、最後に作家の知人の下へやってきて終わるこの話。
自分に自信が持てずにいた陶芸家は、長い年月人々にもまれてより美しくなった青い壷との再会を経て、一段上へと登る事ができる。

とても綺麗に上手くまとまったストーリーで安心して読むことができる。
女性の立場や考えが大分昔の時代の話なので、時代性が今と合っていればなお楽しめただろうと思うが。

読了日:2011.8
★★★★☆

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2011年8月13日

ruru (23:14)

カテゴリ:国内小説一般有吉 佐和子

『心に吹く風―髪結い伊三次捕物余話』宇江佐 真理

髪結い伊三次捕物余話シリーズ第10弾。 伊三次とお文の息子伊与太が修業先をとびだし家に戻ってきた。 心配する二人をよそに伊与太は奉行所で人相書きの手伝いを始めるが・・。

代が変わってきてもう既に伊三次の捕り物ではないような気はするが、登場人物たちと一緒に年月を重ねているように感じながらつい読んでしまう。

今回は、不破龍之進ときいの婚礼から二人の夫婦ぶり、伊与太が実家に戻ってから行く道を決めるまでを捕り物と絡めつつ描かれている。
最後は茜が重大な決心をするところで終わる。

伊三次とお文の恋物語だったのに、すっかり子供たちが大きくなってしまっている。
捕り物にはあまり重きを置いていないので、"余話"なわけだが、今回は新しく登場した子供さとちゃんに関係してくる悲しい捕り物話もあった。

茜のその後が気になる。
何となく次回はもう数年後になっているんじゃないかと想像してみたり・・。
いつまでも元気な不破や伊三次、お文を見ていたいのであまり時の流れが早いと寂しい。
そうでないことを祈る。

読了日:2011.8
★★★★☆

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2011年8月12日

ruru (21:51)

カテゴリ:国内小説一般宇江佐 真理

『困ってるひと』大野 更紗

ビルマ難民を救うためにビルマ研究者を目指していた女子大学院生が突然難病に侵された。 発症から今までの病気・福祉制度との苦闘の記録。

書店で平積みになっており、つい手に取ったら途中でやめられなくなったので購入して一気に読んでしまった。

筆者は26歳の女性大学院生。
ビルマの難民を救いたいと情熱を持って取り組んでいたが、自分が難病による本当の「難民」になってしまったと自ら書いている。
内容はとんでもなく重病の闘病記なのだが、若い女性が軽快な語り口で文章を綴っているので涙だけでなく笑いもあるという不思議な内容だ。
本の作りも行間が多く気軽に読めるようになっている。

病名は筋膜炎脂肪織炎症候群と皮膚筋炎。
知らなかった病気だが、この本を読む限り果てしなく大変な病気だ。

前触れもなく突然体に不調をきたすものの、珍しい病気のため病名がわかるまで1年もかかったとのこと。
その間に無理にタイヘ飛んだという作者の根性には恐れ入るが、現代日本でそれほど病名がわからないままたらいまわしにされることがあるという事実にも驚かされた。

やっと病名がわかるもののその治療がつらい。
途中に触れられる特殊病院の描写もつらい。
突然運命が変わる現実がつらい。

一生かかる高額医療費のための福祉制度利用への数々の関門には苛立ちも覚える。
仮病で騙し取ろうとする人間もいるために慎重なのは仕方ないかもしれないが、書類だらけのお役所仕事は何とかならないのだろうか。

というよりも医療が発達しているはずの現代でもう少し効果的な治療や解決法はないのだろうか。

この本は大分売れているようなので、その影響で物事が少しでも動けばいいのだけれど。

研究者を目指しているだけあって、病気について制度について熱心に研究した上で本にまとめてしまうのはさすがである。

この本を読むと、絶望のどん底に落とされるのも前向きに生きる勇気をくれるのも人間だということがよくわかる。
人は一人では生きていけないということを深く感じた一冊だった。

読了日:2011.8
★★★★☆

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2011年8月11日

ruru (01:50)

カテゴリ:エッセイ・随筆・対談

『やなりいなり』畠中 恵

しゃばけシリーズ最新刊。 相も変わらず物の怪たちが集う長崎屋の離れ。 若だんなの周りでは常に事件が起こる・・?

久しぶりの新刊。
発売日に書店で見つけて即購入即読了。

今回は何故か各章毎にレシピが載っているが、特に食べ物がらみの謎解きでもないし、何のためだったのか不明。
連載も長くなると色々趣向を変えていきたいのかもしれない。

賑やかな長崎屋の光景はいつも通りだが、若だんなの冒険は控えめなままだった。
まあこの世界はもう定着しているので、ちゃっちゃと読み進めてしまい、細かいところはあまり気にならない。
漫画だな~と思いながら気楽に読むと楽しい作品である。

読了日:2011.7
★★★★☆

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ruru (00:59)

カテゴリ:国内小説一般畠中 恵

『天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編』上橋 菜穂子

ロタ王国とカンバル王国を味方につけ、新ヨゴ皇国へ帰還したチャグム。 既に祖国はタルシュ帝国の侵攻を受けて血にまみれていた。 祖国を守ろうと戦うチャグム、怪我を負い行方知れずになったタンダを探すバルサ、ナユグの影響による洪水に向けて奔走するトロガイ師・・新ヨゴ皇国と彼らの運命は?

守り人シリーズ完結の作品。

綺麗にまとまって納得の終わり方ではあるものの、久しぶりに読み応えがあるファンタジーだと期待を込めていた分辛口になってしまうのだが、結局小粒に収まった印象で残念なのである。

折角大陸へと話が広がった割りにタルシュ帝国の存在が薄い気がするし、過去から連なる脇役たちがバラバラとたくさん出てくるものの活躍が見られないところなど、もっと過去シリーズを吸い上げた上で膨らませて壮大なストーリーにできたのではないかと思ってしまう。
要の戦闘シーンが弱いのも気になった。
全く臨場感がない。

まあチャグムはしっかり成長したし、バルサとタンダの関係もはっきりしたし、国の行く末も明るく感じられるしで収まるところには収まったのだから悪くはない。

悪くはないが、心震わせてまたシリーズ1巻から読もうと思えるほどの感動は残してくれなかった。
私にとってはどうしてもファンタジー=指輪物語があるのでハードルが高くなっていた仕方がないのかもしれない。
和製ファンタジーでここまでのものを描いてくれたことは素晴らしいとは思う。


しかし久しぶりに指輪物語が読みたくなってしまった^^;
初めて指輪物語を読んだときは、シリーズをぶっ通しで読んだ上、結末までいったら最初に戻るリピート読みを繰り返すという中毒状態に陥り現実世界に戻れないかと思ったほどだった・・。
そんな本にまた会いたい!

読了日:2011.8.4
★★★★☆

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2011年8月 8日

ruru (01:22)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編』上橋 菜穂子

再会を果たしたバルサとチャグムは、最後の望みを託してカンバル王国へと向かうが、この国にも既にタルシュ帝国の策略が潜んでいた・・。 一方草兵として出兵したタンダは、ナユグの春の訪れによる異変に気付く。 果たして彼らに道は拓けるのか・・。

舞台はロタ王国からカンバル王国へ。
懐かしい人々が入り乱れて再登場するも、新しい登場人物も多くあまり活躍はない。

チャグムたちは、対タルシュ帝国というこちらの世界で進む争いと異世界の春がもたらす天災という二つの困難に立ち向かうこととなる。

チャグムが国民のことを思い皇太子として一皮も二皮も剥けて成長していくことを感じられる一作。
力強さと冷静さ。
肉体的にも精神的にもすっかり大人になっている。

こうなるとバルサの存在が以前ほど輝かない気がして残念。
それでも再び二人の旅を読むことができたのは楽しかった。

読了日:2011.8.4
★★★★☆

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ruru (00:09)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編』上橋 菜穂子

チャグムの捜索を依頼されたバルサは、手がかりを追ってロタ王国へと向かう。 迫り来るタルシュ国とナユグの春。 バルサはチャグムと再会することができるのか・・。

とうとう最終章へ突入。
第一部はロタ王国が舞台。

ナユグの春の兆しに備えるトロガイ師とタンダ。
用心棒家業を続けるバルサは極秘の依頼によりチャグムを探す旅に出る。

チャグムがたくましく成長した反面バルサに老いが描かれることに寂しさを感じるが、たくましいバルサが健在なのは嬉しい。
私はどうもチャグムよりもバルサが主役の方が好きなようだ。

『神の守り人』に登場したロタの人々が再登場するのも展開として良かったのだが、広がりを感じるようでもう終わろうとしているのかという残念な気持ちもある。
何となく結末も見えてきた。

最終章に突入したことで自分の中でやや色あせてきた印象。

読了日:2011.8.4
★★★★☆

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2011年8月 7日

ruru (23:38)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『蒼路の旅人』上橋 菜穂子

皇太子チャグムは父帝との確執を抱えたまま15歳になった。 帝と対立し祖父である海軍大提督と共に船でサンガルへと向かったチャグムは、タルシュ人の手に落ちてしまう。 皇太子として祖国を救おうとするチャグムは自ら行動を起こし運命を切り開いていく。

シリーズ第6作。
チャグムは血気盛んな若者へと成長している。
宮廷にこもり神格化されている皇族たちの中で、一度町の暮らしを知ってしまったチャグムは家臣の人望を集めながらも帝と分かり合うことができない。

とうとう罠と分かっているサンガルへの海軍派遣に追いやられてしまい、ここから国外での苦難の道のりが始まる。

皇太子という立場から逃げてしまいたい気持ちと、為政者としての責任に度々押しつぶされそうになりながらも、自らの道を選び取りながらチャグムは確実に成長を遂げていく。

どんどん立場は悪くなっていきハラハラするような出来事が続くのだが、宮廷外で自由に駆け回ることができて良かったね、とも言いたい。

近作はチャグム視点のためバルサが出てこないのは残念だったが、話の舞台が大海原から南の大陸へと大きく広がっていく楽しさがあった。

読了日:2011.8.4
★★★★★

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2011年8月 6日

ruru (22:31)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『神の守り人<上><下>』上橋 菜穂子

バルサは、タンダの共として出かけた草市で幼い兄妹を人買いから助けるが、妹のアスラは隣国ロタ王国の歴史と陰謀に関わる重要人物であった。 追っ手の呪術師たちと闘いながらアスラを守って逃亡するバルサ。 アスラの持つ秘密とは?バルサは無事アスラを守りきることができるのか・・。

常に異世界の見えぬ力と対峙していく守り人シリーズだが、今回の"神"は残忍な殺戮者の顔を見せるためかなりおどろおどろしい展開となっている。

しかし少女を守り抜くバルサの力強さはより強調され、魅力は増すばかりだ。
様々な思惑をものともせず、自分の信念に基づいて行動する芯の強さが美しい。

そんなバルサに人が救われ国が救われていくストーリー展開は、複雑ながらも納得がいくエンディングへ向かっていくことがわかっているので安心して読むことができる。

今回の舞台はロタ王国。
守り人の世界が広がっていくのが嬉しい。

『虚空の旅人』を飛ばして読んでしまったので戻らなければ・・こちらははサンバルが舞台らしいが。

読了日:2011.7.
★★★★★

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ruru (02:51)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『虚空の旅人』上橋 菜穂子

チャグムは隣国サンガルの新王即位儀礼へと招かれる。 同じ頃、サンガルのある島で異世界と繋がる<ナユーグル・ライタの目>の少女が現れる。 サンガル王家を巡る陰謀にチャグムも巻き込まれていき・・。

シリーズ第4弾。
今作はチャグムが主役である。

舞台は隣国サンガル。
島々からなる荒々しい海賊上がりの人々の国だ。

新ヨゴ皇国とも、今まで描かれたロタやカンバルとも全く違う商人の国だが、やはり異世界との繋がりはあるのが面白い。

チャグムは国外の方がのびのびと過ごせるようで、色々と事件が起こる中でも生き生きと過ごせるのはほっとする。
いつも宮廷内で可哀想なので・・。

"大河物語へと導くきっかけとなった一作"とのことで、ここから今まで触れてこなかった南の世界が広がっていくのは事実なのだが、チャグムの不安定さが漂うので不安感がつきまとう。

バルサが主人公の方が面白いように思うが、成長したチャグムの活躍が読むことが出来たのは嬉しい。

読了日:2011.8.3
★★★★★

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ruru (02:47)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『夢の守り人』上橋 菜穂子

人の夢を糧とする"花"に囚われ眠りから覚めない人々。 タンダは姪のカヤのため、トロガイに黙って<魂呼ばい>の儀式を行う。 "花"に操られ人鬼となってしまったタンダを救うため、バルサは"花"の魔力に立ち向かう。

守り人シリーズ第3弾。
今回はタンダに危機が訪れ、バルサはタンダのために闘うこととなる。
二人の関係に発展はないのがもどかしいが、それでもバルサの熱い心のうちを知ることが出来る一作となっている。

また、宮廷に戻ったチャグムの苦悩やトロガイ師の過去なども描かれておりシュガやジンなども登場することから、第1弾『精霊の守り人』の直接の続編のようで楽しく読むことができた。

主役はタンダやトロガイのような呪術師であり、昼と夜の均衡を保つ夢の守り人の哀愁が浮かび上がってくる。
今作ではタンダの存在感が強いのも嬉しいところ。

より幻想的な趣が強い作品だったが、両目を開けて生きることを考えさせられるテーマを持った良作。
心は新ヨゴ皇国に入り込んでしまい、あっという間に読み終わってしまった。

読了日:2011.7.
★★★★★

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2011年8月 1日

ruru (22:10)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『闇の守り人』上橋 菜穂子

女用心棒バルサは25年ぶりにカンバル王国へと戻るが、故郷では養父ジグロが不名誉な裏切り者に仕立てられていた。 真相を知るバルサの帰郷を恐れた存在が襲い来る中、洞窟の奥底では闇の守り人たちが目覚めるー。

幼少期に過酷な運命の元故郷を去ったバルサ。
国や肉親を捨て、自分の人生をかけてバルサを育ててくれたジグロ。

前作『精霊の守り人』でチャグムを守ることでジグロの気持ちを感じることが出来たバルサは、25年の歳月を経て故郷へと戻る決心をする。

貧しい大地に住まい、<山の王>からの宝石を頼みに生きるカンバルの人々。
中央でカンバル王国滅亡へと繋がる企みが進む中、帰郷したバルサは陰謀の渦中へと巻き込まれていく。

ジグロの汚名を晴らそうとする故郷への旅は、バルサの心の重荷を解き放つ精神世界の旅でもある。
登場人物たちの心理描写の深みが物語に重厚感を与えていて惹きつけられる。

人間の弱さと強さ。
真摯な心と卑しい心。
若者の希望と腐敗した権力。

ジグロからバルサへと伝わった心があるように、前作ではバルサからチャグムへと今作ではカッサへとその精神は伝えられていく。

バルサはただ戦闘が強いだけのスーパーウーマンではない。
彼女自身が深く傷つき、葛藤を抱えながら生きる迷える存在だからこそ正しい導き手となれるのではないだろうか。

児童文学のファンタジーの主人公が30代女性というのは一見違和感を感じるものだが、作者の意図は効果的に働いていると思う。
これが少年の冒険物語のようになっては、綿密に練り上げられた世界観も一気に陳腐なものになってしまうだろう。

子供の頃読んだ作品を大人になってから読むと全く違う世界が開けるものだが、このシリーズは大人の視点でしか読めないのが残念。
子供でも大人でも楽しめる作品だが、感じ取るものは大分違うように思う。

読了日:2011.7.
★★★★★

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ruru (11:22)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

『精霊の守り人』上橋 菜穂子

女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二の妃から第二皇子チャグムの身を託される。 100年に1度孵る精霊ニュンガ・ロ・イムの卵を産み付けられたチャグムを狙う幻獣ラルンガと帝の刺客からチャグムを守るバルサの戦いが始まる。

手を出したらはまって他のことができなくなりそう・・と躊躇していたものの、とうとう読み始めてしまった!

和製ハイファンタジーで、世界観やストーリーが良く練りこまれている良作。
ファンタジーと言えば指輪物語。
これはもう宇宙レベルで別格なので比べてはいけないけれど、その他質の高いファンタジーが限られる中で守り人の世界観も考え抜かれていて素晴らしい出来だと思う。
東洋的要素がふんだんに盛り込まれているのも和製らしくて良い。

児童書なのでやや安易にはなっているが、主人公が力強い30女だったり過酷な運命を課せられた人間の苦悩を描いていたりと重厚な作りで大人でもしっかりとした読み応えを感じることができる。

実はアニメを先に見てしまったので映像がちらついて集中力がそがれるところもあったが、原作を読み終わってみるとアニメもイメージを損ねるものではなく完成度は高かったと感じる。
細部に脚色があるものの概ねストーリーは沿ったものだった。

骨太なバルサに惚れる。
チャグムの成長もしっかり感じることができる。

挿絵が楽しめないのは残念だが、読みやすさ優先で文庫版を集めることとした。
児童書なので思っていたよりもすぐに読み終わるので、数日でシリーズ読破できそう。

読了日:2011.7.
★★★★★

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ruru (09:59)

カテゴリ:国内小説一般上橋 菜穂子

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