2011年11月アーカイブ

『裏窓」殺人事件―警視庁捜査一課・貴島柊志』今邑 彩

自殺とされた女性の転落死。 しかし、向かいのマンションに住む少女は犯行時刻に男の姿を目撃していた。 少女の部屋にかかってくる無言電話・・。 一方同時刻に起こった別の殺人事件も同一犯の犯行と思われるが、犯人像が浮かんでこない。 密室トリックと怪奇の融合。

意味ありげな「窓」の絵に密室・アリバイトリック。
「怪奇と本格推理の融合」への挑戦とのことで難しそう。
怪奇要素はあまり活きていないような気がしたが、全体的に流れる緊張感を醸し出しているからこれで良いのかもしれない。

刑事貴島が主人公の2作目らしいが、毎回この怪奇推理物になっているのだろうか。
この主人公もあまり血の通った人間像が見えてこないが、雰囲気には合っている。

トリック自体は王道でしっかりしている。
怪奇要素に気がそらされるので読みきれなかったこともあり満足。
そう考えてみれば融合は成功しているのではないだろうか。

読了日:2011.11
★★★☆☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月25日

ruru (20:41)

カテゴリ:国内ミステリー今邑 彩

『町医 北村宗哲』佐藤 雅美

江戸で評判の医師宗哲は、過去には人を斬って16年もの逃亡生活を送っていたため、裏家業の人間にも顔が利く。 持ち込まれる厄介ごとを医師として、また裏の人脈を活かしながら解決していく。

人望厚い医師ながら実は凶状持ちという設定は面白い。
渡世者が改心して突然医師になったのかと思いきや、そもそもが医学生だったのについ事件を起こしたということで納得。

表では医師、しかし実は裏家業を仕切る親分・・・というわけではなく、過去のなりいきから裏家業の男たちに多少顔が効くという程度。
すぱっと力で解決するだけでないところので、その曖昧さに好みが分かれるかもしれない。

しかしそれなりに裏から手を回すことができたり、医師としての見識から難題を解決したりのバランスが面白い。

登場人物たちにはあまり魅力を感じなかったが、所々に入る時代考証的なうんちくが興味深く、読み応えある時代小説だった。

読了日:2011.11
★★★★☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月24日

ruru (20:13)

カテゴリ:国内小説一般佐藤 雅美

『母恋旅烏』荻原 浩

元大衆演劇役者の父清太郎は、役者の経験を活かしてレンタル家族派遣業を始めるがどうも上手くいかない。 無理やりつき合わされていた家族は少しずつバラバラになっていき、清太郎はかつて世話になった大衆演劇一座に戻るのだが、ここでも一筋縄ではいかないことばかり・・。

家族がバラバラになる中でそれぞれの道をみつけたり、逆に絆が深まったり。
破天荒な父清太郎に振り回される花菱家のどたばた人情コメディと言えばいいだろうか。

最初家族レンタル業から入るので、このレンタル業の中での出来事が描かれているのかと思ったが、どちらかというと大衆演劇がメインだった。

家族のそれぞれに強めのキャラクター設定をしていたり、笑いあり哀愁ありと盛りだくさんのエンタメ小説。
荻原さんは好きな作家の一人でどんなジャンルの小説でも巧いと思う。
そのためさらりと読めてしまったのだが、内容的にもさらりと薄味な気はした。
娯楽だからこれでいいのかもしれない。
あまり読後残るものはないが、それなりに楽しく読めた。

読了日:2011.11
★★★☆☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月23日

ruru (20:57)

カテゴリ:国内小説一般荻原 浩(一般)

『小説 波の伊八』林 太郎

木彫が好きで以前から興味があった波の伊八。
小説版があることをどこかで見かけて早速読んでみた。

伊八とは、江戸時代「関東に行ったら波を彫るな」と言われていたほどの腕前の彫刻師。
房総半島中心にお寺の欄間に作品が残っている。

一度見て周りたいのだが、やや不便そうなところばかりなので未だ生で作品を観たことがないのが残念。
それでも映像や写真などで観る作品は素晴らしく、心惹かれるものがある。

この本自体は、伊八の生涯と彫り物にかける思いを小説と言う形で描かれたもの。
伊八に興味なく小説として読みたい人にはあまりおもしろくないかもしれないが、当時の房総半島の田舎暮らしが描かれていたり、推定である葛飾北斎との交流などもポイントになっていて興味深かった。
少しは伊八の作品背景を理解することができた気がする。

読了日:2011.11
★★★☆☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月22日

ruru (05:55)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『子どもを放射能汚染から守りぬく方法』武田 邦彦

最近放射線関係の本を何冊か読んでいる。
専門家ですら意見が分かれているので何が正解かはいまだわからないが、それなら様々な主張を情報として取り入れた上で判断をしていきたい。
とは言えあまりに専門的な本には手が出ないのだが・・。

武田先生は元々過激で偏っているところがあり、それでいて丁度良く世論をつかむことに長けているので丸呑みには読まないが、具体的な主張はわかりやすい。

子どもと大人の影響差や注意事項など具体的な数字をあげているので実践的な内容にはなっている。
どうしたらいいかわからず不安に駆られている親御さんには理解しやすくていいのでは。

読了日:2011.10

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月17日

ruru (20:22)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

『世界を変えた10冊の本』池上 彰

池上さんの視点で、現代社会に大きな影響を与えた本を10冊ピックアップして紹介している。

『アンネの日記』
『聖書』
『コーラン』
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
『資本論』
『道しるべ』
『沈黙の春』
『種の起源』
『雇用・利子および貨幣の一般理論』
『資本主義と自由』

宗教や経済学などと共に『アンネの日記』が冒頭に紹介されているのが面白い。

本の内容や発表時の反響や経緯などと共に、現代人の思想や社会にどのような影響を与えたのかをわかりやすく完結に紹介されていてとても読みやすい。

宗教の本や『種の起源』については以前読んだ『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』の方が詳しいのでこちらの方がおすすめかもしれない。

経済学の本は何となく知っている程度でしっかり読んだことはないので素直になるほどという感想。
勉強した人には常識過ぎて物足りないのかもしれないが。

『沈黙の春』では環境破壊という先見的な考えを当時の女性が論じていたということがとても興味深かった。
震災後の日本の現状を考えると強く読んでみたいと思う。

本の紹介であるからかいつまんだ内容とはなっているが、ざっくりと内容を把握するのには丁度良い。
詳しく知りたければその本を読めば良いし、池上さんらしい入門用の本。

読了日:2011.11

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月16日

ruru (10:20)

カテゴリ:ビジネス・自己啓発

『妃は船を沈める』有栖川 有栖

幸薄い若者たちを集めては、女王のように振舞っている三松妃沙子。 身近で起こった殺人事件に彼女は関与しているのかー? 犯罪学者火村英生&推理作家有栖川有栖コンビの推理シリーズ。

2話に渡って妃沙子が関与する事件。

展開はいつも通りの火村&有栖川シリーズのノリなので慣れたもの。
事件の内容としてはそれほど想像外ではなく淡々と読みこなす。

妃沙子があくのあるキャラクターとして登場するのだが、あまり魅力的でなく存在感が狙われているほど濃く感じなかったところが物足りなさの原因だろうか。
小悪人程度の印象だったので、もっと極端に悪女だとか天然だとかの方が面白そう。

それでも安心して読める気楽なミステリ。
シリーズの読みこぼしをまた読んでいくつもりではある。

読了日:2011.11
★★★☆☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月15日

ruru (00:58)

カテゴリ:国内ミステリー有栖川 有栖

『人間の証明』森村 誠一

東京の高級ホテルのエレベーター内で黒人男性ジョニーの刺殺体が見つかる。 スラム街の住人ジョニーが日本へ来た目的とは何か?何故高級ホテルで遺体となって見つかり、犯人は誰なのか? 棟据刑事はホテル近くの公園で見つけた古い麦藁帽子から真相へたどり着けるのか。

「母さん、ボクのあの帽子、どうしたでせうね?・・・」
西条八十の詩のフレーズとこの『人間の証明』はあまりに有名なので知らない人はいないだろう。

大昔に読んで衝撃を受けた推理小説。
ふと読みたくなってかなり久しぶりに読んでみた。

大筋の内容は覚えているものの、細かいところは記憶がなく新鮮な気持ちで楽しめた。
戦後という時代背景的に古臭さは否めないが、やはり名作。

人間であるとはどういうことか。
関係する人々の過去と現在、内なる想いを交差させながら事件の真相を浮かび上がらせていく構成は巧み。

悲しい物語で読後にやりきれなさは残るが、推理小説としては読み応え十分の素晴らしさだった。

読了日:2011.11.
★★★★★

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月14日

ruru (23:59)

カテゴリ:国内ミステリー森村 誠一

『40代のひとり暮らし』岸本 葉子

20代とは違う40代の一人暮らし、という視点で書かれたエッセイ。
何と言うことのない日常の思いつきや考え方がからっとした文章で綴られている。

岸本さんの文章はユーモアがあって嫌味がないところが良い。
無理がないというか。

こだわっている物についてだったり、一人暮らしをしていて感じることだったり。
一人暮らしを楽しみたい女性には共感の持てる一冊だと思う。

読了日:2011.11
★★★★☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月13日

ruru (00:40)

カテゴリ:エッセイ・随筆・対談

『氷の人形(アイス・ドール)』森村 誠一

環境大臣秘書の香山は、産廃処理業者の用地買収計画について調べるために岐阜県へと単身乗り込んだ。 そこで中学時代の憧れの女教師綾子と再会して密会を重ねるようになった矢先、計画反対派の町長が襲撃される。 謎の多い綾子への疑いをもちつつも彼女の虜となってしまった香山の不安は、中学時代の忌まわしい過去へも広がっていく・・。

環境大臣である義父の後継を狙う香山、有名進学塾を経営する北園、やくざの弁護士永坂の3人には誰にも言えない共通の秘密を持っていた。

鍵を握る女教師綾子と三人の関係、現在起こっている事件と綾子との関係、過去の事件の真実・・謎は多く読んでいて飽きない。

ただ中学生の憧れだった女教師綾子の変貌ぶり(というか元々の正体か)がしっくりこない。
20年振りに再会して生徒たちを色気で手玉に取るというのも上手く行き過ぎているように思える。
綾子の色香があってこそ起こる様々な事件なのでおかしくはないのだが、男性の偶像化=妄想に違和感を感じてしまうし、その一点に偏りすぎな印象を受けた。

男女関係だけでなく政治経済も絡んだミステリになっているため広がりはあって、それなりに楽しむことはできた。

読了日:2011.11
★★★☆☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月12日

ruru (00:06)

カテゴリ:国内ミステリー森村 誠一

『新世界より 上・下』貴志 祐介

呪力を身につけることが必須の近未来。 穏やかな暮らしの一方少しずつ減っていく子供たち。 6人組が5人組に、5人組が4人になり、何事もなかったかのようにメンバーは入れ替わって再び5人に。 この世界の真実に気付き始めた早季たちを襲う現実と新たな戦いの行方は・・。

SFファンタジーというべきなのだろうか。
かなりの長編で、割と読むのは早い方だが2日に渡ってしまった。

前半は奇妙な町のルール、取り巻く不気味な生き物たちなどとにかくざわざわと落ち着かない雰囲気と世界観に期待を持って読み進めることができる。
ただ一方で何となく予想できるような、どこかで見たような話だとも感じた。

呪力を持つ人間の支配や淘汰されていく子供たち、人間に似たようなバケネズミの存在などはありがちだが、面白かったのは呪力で人を殺せないという設定。
これがあってこその物語の展開ではあるが巧く生きている。

作者に筆力があるのでそれなりに飽きることなく読めるのだが、主人公の早季が世界の真実に気付いていくところは良いとして、段々激しい戦闘がメインとなり、アメリカ映画でも見ているような冒険物語になっていったのはやや興ざめだった。
対峙するものが町のルールでなく外部のバケネズミへと変わっていったところと、残虐性が増していく展開に嫌悪感が沸いてあまり楽しめないのだ。

バケネズミと戦うことで自分たちの在り方に気付かされるという点はわかるのだが、血みどろ過ぎる気がする。
一応最後には人間の残酷さと愚かさが明らかになるわけだから、物理的な死を積み重ねるよりも大どんでん返しの精神的ショックだけで衝撃を感じられるような作品だったらもっと満足度が高かったように思う。

作者の熱は感じられる。
スケールの大きな大作なことは確か。

読了日:2011.11
★★★☆☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

2011年11月11日

ruru (20:40)

カテゴリ:国内ミステリー貴志 祐介

『スギハラ・ダラー』手嶋 龍一

2008年リーマンショック、2001年同時多発テロ、1987年ブラック・マンデー・・株式市場が大きく動く度にユダヤ系アメリカ人でトレーダーのアンドレイと伝説の相場師松山雷児の影がちらつく。 疑問を持ったインテリジェンス・オフィサーのスティーブンとマイケルは二人の背景を調べ始める。 浮き彫りとなっていくのは、杉原千畝のインテリジェンス・ネットワークへと繋がる70年に渡る数奇な人生の物語だった。

物語は戦中から現代まで、世界中を舞台に描かれている。
事実とフィクションが入り混じり、時代が前後し、舞台を変えながら進んでいくので、たまに頭の中で確認が必要だった。
実は前作のベストセラー『ウルトラ・ダラー』を読んでいないのだが、その点は特に不都合はなかった。

登場人物たちの日常や言動にどうも気持ちを入れにくく一人ひとりに魅力を感じることが出来なかったのは残念だが、金融・政情を軸とした情報戦や雷児やアンドレイ、ソフィの人生の交差は面白かったし、杉原千畝をインテリジェンス・オフィサーとして重厚な存在感で描かいていたのは興味深い。
杉原千畝と言うとどうしても「スギハラビザ」の情緒的なイメージが強かったが、こういった見方もできるのかと思うと面白い。

何となく世界に入り込めずにいつもより読了に時間がかかってしまった。
もう少しエンターテイメント性があって楽しく読めた方がより良かった気がする。

読了日:2011.11.
★★★☆☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

タグ

このページの先頭へ