2012年2月アーカイブ

『しらみつぶしの時計』法月 綸太郎

犯人は重要な証拠を残してきたことに気付き犯行現場へと戻る。 しかしそこは何故か密室になっていて入れない・・? 『使用中』他あらゆるトリックパターンを集めた本格ミステリ短編集。

久しぶりの法月さん。
いかにも法月さんらしいトリック集だが、作品ごとに全くテイストが違うので読み進めるのに切り替えが必要。

悪妻率が高いので、女性観を心配しつつ。
色々なパターンのトリックを楽しむことができた。

『トゥ・オブ・アス』は『二の悲劇』のデモ・バージョンとのこと。
こちらの方がすっきりまとまっていて良かったのではないだろうか。

法月さんは文章が回りくどいので短編の方が面白く読めるかもしれない。
『猫の巡礼』はやや異色のファンタジー?だが、その他の作品はどれもミステリファンならそれなりに納得がいく質の良さではないだろうか。

ただ表題作の『しらみつぶしの時計』は、パズルのようなので就寝前に読んでいて頭がぐったり。
日中元気なうちに読むことをオススメする。

読了日:2012.2.
★★★★☆

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2012年2月29日

ruru (20:38) | コメント(2)

カテゴリ:国内ミステリー法月 綸太郎

『殺す』西澤 保彦

女子高生の連続殺人事件。 性的暴行の跡はないが、全裸にされ、持ち物の中で靴下だけが持ち去られる点が共通していた。 一方警察内では捜査に関わる刑事が次々と襲われる事件が発生するが、上からの指示で仲間の刑事たちは捜査から外されてしまうー。

西澤さんらしいフェティシズムを絡めた連続殺人ミステリ。
一応刑事たちの視点で物事が動き、警察内の問題も平行して進むが、警察小説と言ってしまうのは警察小説の作家さんたちに悪いのではないか。

女子高独特の空気や思春期の女生徒の危うさ、人間の猟奇性などいかにも著者らしい作品だったが、どかどか人が死んでいく展開についていきにくく、純粋なミステリとして楽しめるかというとそうでもないというか・・。
西澤ファンでも一応潰しておこうという感じで読了し、やや物足りなさがあった。

読了日:2012.2.27
★★★☆☆

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2012年2月28日

ruru (12:38)

カテゴリ:国内ミステリー西澤 保彦

『萩のしずく』出久根 達郎

士族の娘奈津は、歌人中島歌子主宰の萩の舎に入門する。 奈津はすぐに頭角を表し歌子に愛されるが、生活のために歌の世界から小説の世界へと筆を移す。 筆名は樋口一葉。 後に文豪として名を残す少女の青春。

萩の舎での生活を中心に一葉の少女時代を瑞々しく描いた作品。

何気なく手にとって読み始めた本だったので、最初奈津が一葉だと気付かずにいた。
短い執筆活動の部分ではなく、萩の舎での女学生同士の友情や恋などに重点を置いているので、一少女の青春小説のような趣きだ。

一葉と言えば生活苦の末若くして死んだ苦労人のイメージが付きまとうが、この小説内の奈津はとても幸せそうである。

時代は明治だが、江戸をまだ引きずっている世の中。
上級士族や華族の娘など上流階級の少女たちと肩を並べて歌を習う一方、家に帰れば貧しく困窮した家族との暮らしがある。

混沌とした時代を生きた奈津の人生は決して不幸ではなかったのだと爽やかな気持ちになれる小説だった。

読了日:2012.2.24
★★★☆☆

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2012年2月27日

ruru (00:17)

カテゴリ:国内小説一般出久根 達郎

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野 晶午

探偵経験のある成瀬将虎は久高愛子から依頼され、ひき逃げで死亡した久高隆一郎の身辺について調べ始める。 隆一郎は生前蓬莱倶楽部という怪しい会社に大金を吸い取られており、家族の知らない保険金がかけられていたからだ。 同じ頃将虎は麻宮さくらという女性と知り合い恋に落ちるが・・。

"あらゆるミステリーの賞を総なめにした""必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本"の煽りはかなり大袈裟。

蓬莱倶楽部という団体を洗っていくのが主軸だが、関係が見えてこない人物の視点になったり場面がどんどん転換していくので読んでいてぶつ切りの印象。
せっせとミスリードを誘っているのだろうが、場面や登場人物がバラバラで散漫なため、まわりくどくていまいちはまらなかった。
半端にハードボイルド風なのもあまり好みでないし。

所謂叙述トリックなわけだが、途中で想像がついてきたし、最後のトリックにたどり着くまでが冗長的で飽きてしまう。
見事な叙述トリックは多々あるので他に面白みがあれば良かったのだが、将虎とさくらの恋愛ももやもやしていて盛り上がりがないし終わり方もなんじゃそりゃという感じ。

読了日:2012.2.25
★★★☆☆

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2012年2月26日

ruru (23:54)

カテゴリ:国内ミステリー歌野 晶午

『サラの鍵』タチアナ・ド ロネ

パリに住むアメリカ人ジャーナリスト・ジュリアは、60年前の"ヴェルディヴ"について記事を書くこととなる。 折りしも夫の祖母のアパートを譲り受けた一家だったが、そのアパートが"ヴェルディヴ"のおかげで手に入れることができた部屋だと知ったジュリアは、元の持ち主であるユダヤ人家族の行方を追い始めるのだが・・。

ヴェルディヴとは、ナチス・ドイツの占領下にあったフランスのヴィシー政権がユダヤ人を一斉検挙した1942年の事件。
当時ユダヤ人たちは、ヴェロドローム・ディヴェールという自転車競技場に集められてからアウシュビッツへと移送され殺されたが、フランスは長い間認めてこなかった・・という汚点のような事件らしい。
この本で初めて知った。
ドイツ以外でもそのようなことが行われていたことを不思議には感じないが、内容はやはり衝撃的だ。

前半は、当時アパートに住んでいたユダヤ人少女サラの視点と現在のフランスで事件を掘り起こそうと奮闘するジュリアの視点が交錯しながら進んでいく。
数ページごとにめまぐるしく変わるので気持ちが切り替えづらく読みづらい。
和書ならもう少し章ごとにまとめるだろうと違和感を持ちながら読み進める。
それでもサラの不条理な出来事への心の叫びやジュリアの葛藤などに心奪われて一気に読んでしまった。

サラは検挙の時に弟を納戸に隠して鍵をかけた。
すぐに戻れると思っていたから・・。

これがタイトルにもなっている『サラの鍵』。
サラは弟を救い出すためになんとか収容所から脱出しようと試みるー。

明らかになっていくサラの人生は悲しくつらいものだが、事件のことすら全く知らなかったジュリアが、取材の過程の中で自分自身や家族と向き合って成長していく姿があるだけ心の逃げ場がある。
サラの人生だけではありがちな感傷的な物語になるところだが、ジュリアの結婚生活や異邦人としての立場、夫の家族のテザック家の問題を絡ませたことで物語に深みが出ていると言えるのではないだろうか。

時代のうねりに負けた人間の良心の在り方について心を沿わせ、史実を掘り起こしていくことは結局自分たち自身の尊厳を取り戻す作業でもある。
ジュリアやエドゥアール、ウィリアム・・彼らから現実に立ち向かう勇気や希望を感じることができる気持ちの良い終わり方だった。

一点ずっと違和感があったのは夫のベルトランがどうしようもない男すぎてジュリアの悩みが理解できず。
まあ最後は納得の流れだったので別に良いけれど。

読了日:2012.2.23
★★★★★

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2012年2月25日

ruru (19:52)

カテゴリ:海外小説一般その他の作家(海外小説一般)

『必然という名の偶然』西澤 保彦

"逃げられ癖"がある倉橋譲の結婚式当日。 高校の同級生のケーカクとオヤカタは、また花嫁に逃げられるかどうか賭けることにする。 前回は花嫁が死体で見つかるという悲惨な挙式だったが今回は・・?『エスケープ・ブライダル』他櫃洗市を舞台にした連作ミステリー集。

軽快な文章で読みやすいミステリ集。
笑いあっていた仲間が被害者になったり犯人だったりするにも関わらず軽~いノリで進むのが西澤さんらしい。

軽い動機、あっさりした殺人事件ばかりだが、それなりの謎解きがあって楽しめた。

オヤカタ、ケージやヒロっちなど主要人物のキャラが立っていて面白い。
今後も活躍しそうな予感。

読了日:2012.2.22
★★★☆☆

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2012年2月24日

ruru (19:35)

カテゴリ:国内ミステリー西澤 保彦

『ヒマラヤのドン・キホーテ―ネパール人になった日本人・宮原巍の挑戦』根深 誠

ヒマラヤに魅せられ、ホテルエベレストビューを建てた宮原氏。
ネパールに定住し長年観光業の発展を目指して行動してきた宮原氏が、70歳を過ぎてネパール国籍を取得。
政党を結成して選挙に打って出た話を中心に氏の半生とネパールへの情熱について書かれている。

以前何かのテレビ番組でこのホテルと宮原氏について取り上げており、その際紹介されていた本。
いつか読みたいとチェックしていてやっと読むことができた。

とにかく山男の一途な情熱がほとばしっている。
無謀とも思える挑戦を続けるところは”ドン・キホーテ”とも言えるが、夢を実現させようとするパワーがすごい。

ネパールに持つイメージはヒマラヤとトレッキングだが、トレッキングというのも宮原氏あっての観光とのこと。
常に挑戦と開拓を続けてきた今、政治の世界からネパールの役に立ちたいと立ち上がる力は年齢を感じさせない瑞々しさだ。

山と自然に囲まれた国のイメージが覆されるようなネパールの現状に衝撃があった。
自然破壊、公害、政治腐敗、粛清・・。
宮原氏を知ることはもちろんだが、ネパールについても理解を深めることができた。
NGOや国連についても考えなおす機会になった。

しかし山登り人脈は本当に強い。
命を預けあうからだろうか。
著者を含め、宮原氏の夢を後押しする山男たちも大きな存在感を示していて感慨深い。

読了日:2012.2.21
★★★☆☆

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2012年2月22日

ruru (20:31)

カテゴリ:自伝・伝記

『赤い糸の呻き』西澤 保彦

エレベーター内で強盗殺人の容疑者をはっていた二人の刑事早瀬と智香。 停電と同時に居合わせた中学生が刺殺され、容疑者が犯行を認めたため事件は解決したと思われていた。 しかし単独で真相を追い続けていた早瀬の死に疑問を持った智香は、義理の妹真音に話すことで事件を整理しようとするが・・・『赤い糸の呻き』他ミステリ5編。

連作ではなくまるきりの短編集。
内容も割と普通のミステリで西澤さんには珍しい気がする。

それでもやや尋常ではない思考の人々が多いのは西澤色か。
同姓愛などが多いのも。
特に表題作は著者らしい動機かもしれない。

軽くパラパラと読めるミステリ。
特別凝ったものはないが、どれもそれなりの謎解きになっていて楽しめる。

読了日:2012.2.19
★★★★☆

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2012年2月21日

ruru (00:04)

カテゴリ:国内ミステリー西澤 保彦

『ハードラック』薬丸 岳

派遣切りでネットカフェ難民となった相沢仁。 困窮極まった仁は闇の掲示板で仲間を集い、とある別荘に強盗に入る。 しかし殴られて意識を失っている間に別荘が燃え、焼け跡から三人の死体が見つかったことで殺人犯として追われることに。 無実を証明するために、逃亡しながら自分を嵌めた闇の仲間たちを探す仁だったが・・。

常に社会問題をミステリに取り入れていく薬丸さんだが、今回は派遣切り・ネットカフェ難民・振り込め詐欺などを題材にしている。

主人公は何となくうまくいかないことが続いただけの平凡な青年。
帰る家がないわけではないが、意地とプライドで頼ることができない。
家がなければ仕事にありつけず、仕事がなければ家を借りることもできないという悪循環をさまよっていた仁は、なけなしの貯金を騙し取られたことをきっかけに、闇の世界へと足を踏み入れていく。

主軸は仁がハンドルネームしか知らない仲間を探しながら真相を追うところにあるが、世相を反映したリアリティ溢れるミステリに引き込まれて一気に読んでしまった。
ネットという身近な手段から簡単に闇への入り口が開くことや浅慮が招く後戻りできない怖さが現実的だ。
一般人と犯罪者の薄い壁や罪悪感が希薄なまま軽犯罪に関わることの罪深さが巧く描かれている。

現実的なテーマのためいつもながら後味は悪いが読み応えある1冊だった。

読了日:2012.2.
★★★★☆

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2012年2月20日

ruru (12:28)

カテゴリ:国内ミステリー薬丸 岳

『空夜』帚木 蓬生

幼馴染の慎一が診療所の医師として戻ってきた。 旧家の一人娘として村を出ることなく暮らしてきた真紀の心は揺れる。 一方行きつけのブティック店主俊子は、愛人のいる夫に愛想を尽かし若い恋人との逢瀬を重ねていた。 山あいの村を舞台にした二つの大人の恋愛の行方は・・。

大人の純愛というと聞こえは良いがつまりは不倫小説。

真紀の夫はギャンブル依存症で二人の仲は冷え切っている。
このギャンブル依存症については、精神科医である帚木さんの専門分野であるとどこかで読んだ。
妻を振り回すひどい夫として登場する誠だが、現実にも多く存在するのだろうし、この誠こそ著者が書きたかった人物だったのかもしれない。

つらい現実から抜け出すために青春時代の恋へ逆行するというのは良く分かるのだが、真紀の魅力がわからない。
村から出ることなく親の言うがまま、故郷が良いとも思えず人との交わりを避け・・と暗いつまらない女性にしか思えない。
慎一はなかなか魅力的な男性として描かれているが、良い大人の男が何の自主性もない女に「真紀さんはたんぽぽのようで素敵だ」などと陳腐なセリフを言うのもどうなのか。

まだ俊子と年下の恋人達士の恋愛の方が、自立しあった大人の恋愛と言う感じがして好感が持てる。

情緒豊かな情景描写の美しさはさすが帚木さん。
四季の移ろいや能の取り入れ方など素晴らしいところはたくさんあるのだが、軸である恋愛部分に共感が少なくあまり面白いとは思えなかった。

また前から感じていたのだが、帚木さんのファッション描写はちょっと古臭い・・(スミマセン)。
その組み合わせはないだろう、とかその歳でそんな服着ないでしょう、とか気が散ってしまうのである。
いつもは読み流すのだが、今回はブティックが舞台になるシーンが多かったので何度も突っ込みを入れたくなってしまった。
ローセンスで細かい描写を入れるのならいっそ触れない方が良いと思う。

元々恋愛小説があまり好きでないこともあって個人的にはイマイチな印象だが、文章や情景はとても美しい小説だった。

読了日:2012.2.
★★★☆☆

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2012年2月19日

ruru (19:07)

カテゴリ:国内小説一般帚木 蓬生(一般)

『停電の夜に』ジュンパ ラヒリ

毎日の停電の時間に、夫婦はお互いの秘密を明かし合う。ぎこちなかった二人の距離が縮まってきたように思えた頃、停電は終わり・・『停電の夜に』 アメリカからインドに観光に来た家族を案内するドライバー。奥さんとの会話が盛り上がり心は弾むが、二人きりになった時に打ち明けられた話は・・『病気の通訳』他。 インド系アメリカ人著者による9つの短編。

ジュンパ ラヒリは、以前から気になっていた作家。
ピュリツァー賞やらO.ヘンリー賞、ヘミングウェイ賞など多くの受賞暦を持つ女性作家である。

インド系アメリカ人ということで、インド系移民やインド人を主人公にした作品ばかりだった。
舞台はアメリカだったりインド本土だったり。
他の作品も全てそうなのだろうか。

作品に漂う異国情緒な雰囲気が受けている要素の1つではあるだろうが、人間の感情の機微の描写が繊細で巧いところが魅力的だった。

どの作品も人生や感情を鋭い観察眼で描いていて胸にぐっとくる。
きっと原文で読んだらもっとストレートに感動できるのではないだろうか。

表題作『停電の夜に』も良かったが、『三度目で最後の大陸』が一番気に入った。
インドからイギリスへ、イギリスからアメリカへと渡った移民一世の話で、最後に主人公が人生を振り返るところが良い。

あの宇宙飛行士は、永遠のヒーローになったとはいえ、月にいたのはたった二時間かそこらだ。 私はこの新世界にかれこれ三十年は住んでいる。(中略) これだけの距離を旅して、これだけ何度も食事をして、これだけの人を知って、これだけの部屋に寝泊りしたという、その一歩ずつの行程に、自分でも首をひねりたくなることがある。 どれだけ普通に見えようと、私自身の想像を絶すると思うことがある。
日本人にはあまり馴染みがない移民だが、世界に飛び出し、自国の文化を保ちながら新しい国に溶け込んで暮らしていく人々の力強さを感じられる一作。
移民二世の著者が大きな誇りを持って書いたのだろう。

最初の家主との触れ合いや見合い結婚で呼び寄せた妻との新しい生活など、1つの人生を柔らかい視線で捉えていて静かな感動があった。

近いうちに他の作品集も是非読んでみたい。
 
読了日:2012.2.
★★★★★

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2012年2月18日

ruru (21:16)

カテゴリ:海外小説一般ジュンパ ラヒリ

『現実入門』穂村 弘

「人生の経験値」が低い著者が色々と体験していく様子を綴っている。
初めての献血、初めての占い、合コン、おばあちゃんのお見舞い、バスツアー、子供の相手などなど。

本当にどうでもいいことにぐだぐだ言いながら”挑戦”していくだけなのだが、文章が面白いので結構楽しく読めた。

こんな何も経験したことがない人も一応社会人なのかと思うとぞっとするが、これだけユーモア溢れる文章が書けるのだから思考力も観察眼も人並み以上なわけだし何をもって立派な大人とするのかは難しいものだ、などと思いながら読む。

最後は少ししかけあり。
こういったまとめをする著者はかなりくせのある人のようだ。
共感する人もいそうだし好きな人は好きそう。

読了日:2012.2.
★★★☆☆

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2012年2月17日

ruru (21:03)

カテゴリ:その他

『こぼれおちる刻の汀』西澤 保彦

打ち捨てられた宇宙ステーション、繰り返す時間、絞殺されようとしている老女の記憶・・時空が交錯するSFミステリ。

元々別の三作を繋げた作品とのことで、宇宙人視点のカデンツァ・宇宙ステーションが舞台のオブリガート・老女の記憶のコーダの章が入れ替わりながら話が進む。

うまく合体できているか、と著者が後書きで心配しているが、確かに色々なシーンを行ったり来たりするので気持ちが途切れてストーリーに入り込みづらい気はした。

SFミステリと言えば西澤さん。
想像もつかない設定やすこしずつ違う過去、現在、未来を交錯させていく展開は著者らしくて面白いのだが、冗長的な印象もあり何となく物足りない。

読了日:2012.2
★★★☆☆

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2012年2月16日

ruru (18:03)

カテゴリ:国内ミステリー西澤 保彦

『アンのゆりかご―村岡花子の生涯』村岡 恵理

モンゴメリやオルコットなど読書好き少女なら誰もがお世話になった小説はほとんど村岡訳だったはず。
私の中では影響が大きかったかなりの偉人としてインプットされている。

そんな村岡花子の生涯を、孫の恵理さんが小説という形でまとめたのがこの一冊だ。
本屋で見つけて衝動買い、即読了。

物語は戦時中から始まる。
敵国カナダの文学『赤毛のアン』をこっそり隠れながら訳し続ける花子。
防空壕には原稿を抱えて飛び込んだ。

戦争中だからこそアンの想像力と逞しさに惹かれていたという回想があり、日本の少女たちに生きる喜びを伝えたいという花子の強い意志に感動した。

思えば幼い頃から私の側にアンの物語はあった。
あって当然の名作なのだと思い込んでいたが、まさかこれほどの苦労の末に日本で紹介されていたとは・・。
自分が読んできた小説を訳す経緯が知れるのは興味深く、また花子の人生にもひきつけられる。

クリスチャンであった父の考えでカナダ人教師たちから教えを受けるようになった少女時代。
そこで出会った日本にはない少女向けの小説に夢中になった花子は、自らが創作者になりたいという気持ちを持ちながらも使命感を持って訳を続けていく。

この方一人のおかげでどれほどの作品が日本で紹介されたことか。
それがまたすっかり定番化しているのだからすごい。

強き女性の生き方を学びつつ、久しぶりにアンの物語が読みたくなった。
モンゴメリの他の作品にオルコットやバーネット、ポーターも!

読了日:2012.2
★★★★★

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2012年2月 7日

ruru (01:50)

カテゴリ:自伝・伝記

『福島第一原発潜入記 高濃度汚染現場と作業員の真実』山岡 俊介

昨年の夏ごろフリーのルポライターがこっそり福島原発に潜入したという話。
大分前に購入していたこともあって今読むと少し内容は色あせて感じた。

そもそも作業員に混じってささっと中まで行ってきましたよ、というだけの内容で物足りない。
もちろん部外者が簡単に進入できた(今は違うはずだが実際はどうだろうか?)という警備上の問題点をつくことには成功しているが、他に訴えるものもなく、怖い物見たさで見てみただけというような軽さが否めない。
出かけるまでの経緯についての記述が長いのも興ざめである。
何とか世間の注目があるうちに出版しようということだったのだろうが、内容は薄め。

一応後半には原発作業員のインタビューがあり、作業員の実情の一端を垣間見ることができて少し救われる。
元請けに近い立場の作業員ほど原発をなくした方が良いと考えており、末端の作業員は不可欠だと考えているというまとめは確かに興味深い。

丁度今福島第1原発2号機の原子炉温度の再臨界の恐れについてのニュースが流れている。
否定しているが本当はどうなのか。不安はつきない。
原発問題はまだまだ勉強していかなければならないところだが、書籍も玉石混合で選択が難しい。

読了日:2012.1.
★★★☆☆

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ruru (01:25)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

『逃亡〈上〉〈下〉』帚木 蓬生

香港で憲兵の任務についていた守田征二。 敗戦後高まった反日感情に身の危険を感じた守田は、密かに離隊。 名前を変えて命からがら日本へと帰国するが、故郷からも戦犯として追われる身となる。 自分は国のために任務を遂行しただけではなかったのか。 国家と個人を問う柴田錬三郎賞受賞作。

久しぶりに帚木さん。
文庫で上下巻2冊だけなのだが、内容が濃く重量感がある作品でかなりの長編を読んだような気持ちになった。

主人公の守田は広東で敗戦を知る。
身の危険を感じた仲間の軍曹と密かに離隊するところから彼の長い逃亡生活が始まる。
中国人の復讐から逃げるために広東から地元の九州へ、日本では「戦犯」としての逮捕から逃れるために九州から関東へ・・。

戦時中その地位は確固たるものだと思えた。
民間人には恐れられ、疑わしきスパイを拷問して死に至らしめたこともあるが全てはお国のため。
前線では"戦争"として罪に問われることはないのに、自分たちの行為は"殺人"とされる理不尽さ。

敗戦と同時に追われる立場となった憲兵たちの苦悩が、戦時中の記憶と共に繊細に描かれていく。

守田は、憲兵としてスパイをあぶり出し治安維持に務める憲兵の仕事に誇りを持っていた。
土地に密着して時には中国人になりきり、冷徹に職務に当たりながらも地元の人間との交流もある香港での生活は、戦争といって想像する戦地の様子とは全く違う。
敵も銃を持って向かってくる兵士ではなく、普通の生活をしながら活動を続けるスパイたちという点が問題を複雑にしている。

この作品では守田たち憲兵を一方的な立場には置かず、守田の記憶や心情を追うことで戦争について考えさせるよう冷静な視点を保っている。

敵国人にとっては加害者であったことは間違いなく、残忍な行為も赤裸々に明かされる。
しかし、それぞれは赤紙一枚で召集された農家や商店の息子たちでしかなく、彼らをその職務に当たらせたのは"国"だったのではないのか。
末端の兵士までを戦勝国の法廷へ送り出し処刑を手伝う"国"への疑問は、自らの存在への問いかけとなって彼らを襲う。

守田は逃走しながら憲兵時代の職務、自ら手を下した人たち、そして大切な家族へと思いを馳せる。
崩れた信念、後悔、国への疑問、怒り、悲しみ、愛・・。
長い逃亡生活の末に彼は1つの答えにたどり着く。

戦争の理不尽さ、個人の無力さなどを考えさせられる力作だった。
読み応えは十分。
しかし内容が重く、気を引き締めて読み始めないと心が折れてしまうかもしれない。

読了日:2012.2.
★★★★★

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2012年2月 6日

ruru (10:22)

カテゴリ:国内小説一般帚木 蓬生(一般)

『紅梅』津村 節子

作家吉村昭の舌癌発病から死までを妻である作家が綴った闘病記。

津村氏の作品はおそらく初めて読んだと思う。
夫の吉村昭同様取材に基づき事実を小説化している作家さんのようで、この闘病記も客観的な視点の小説として書かれている。

淡々と綴られる病の悪化と夫の言動に対し、出会いから今に至るまで結婚生活の思い出を織り交ぜながら妻として病気の夫に寄り添う心情を情緒豊かに描いている。

反省や後悔ばかりの夫への態度、敏感になってしまう周囲の人々の死、妻としてすべきことをおろそかにしているのではないかと自問自答しながらの執筆の日々。

年代的なものなのか作家という観察眼が優れた職業柄なのか随分細やかに反省ばかりの奥様だという気はしたが、常に夫の死に怯えて感覚が研ぎ澄まされていたということかもしれない。

吉村昭は好きな作家の一人だったので亡くなったと新聞で読んだ時はとてもショックだったことを思い出す。
とても残念だが、この一冊で知らなかった人となりや最期を知ることができたのは興味深く、不思議な感情が沸いた。

読了日:2012.2.2
★★★★☆

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2012年2月 3日

ruru (22:15)

カテゴリ:国内小説一般吉村 昭

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