2012年6月アーカイブ

『月の影 影の海〈上〉〈下〉 十二国記 』小野 不由美

どこか周囲に馴染めない優等生の陽子は、ある日突然現れたケイキと名乗る男性に主と呼ばれて異世界へと連れ出されてしまう。 見知らぬ世界でケイキとはぐれた陽子は、次々と襲ってくる妖魔と戦いながらケイキを探す旅に出る。 必ず自分の家へ帰ると心に決めて・・。

7月に再開すると話題になっているので、今更ながら十二国記に手を出してみた。

中国のイメージらしいが、女子高生が突然異世界へと連れて行かれ、旅をしながら成長していくアジアンファンタジー。
と言っても主人公は次々変わっていくようなので、十二国という世界のお話と言った方が良いかもしれない。

そもそもラノベなので読みやすく、すぐに読み終わってしまう。

思っていたよりも世界観がしっかりあった。
人気があることに納得。

そして意外とハードが戦闘が続く。
普通の女子高生だった陽子が、毎夜血みどろの戦闘をこなし、鍛えられ野宿しながら突き進んでいく姿は凄まじい。
もっとふんわりしたファンタジーをイメージしていたので驚いたが、それだけ骨太な印象も受ける。

人を信じては裏切られ、自分の弱さと向き合いながら成長していくストーリーもしっかりしているし、他の"海客"も存在感があって面白い。
彼らの話で現実と異世界の交差が徹底されるし、十二国の世界観に馴染みやすくなっていると思う。

下巻中盤辺りになって楽俊の存在やら謎の解明やらで安心して読めるようになったが、前半は陽子と共に疑心暗鬼で常にどきどきしていた。
それだけ世界に引きずられたということで、ページをめくる手が止まらず上下巻を一気読みしてしまった。

全巻揃えてしまったのでつまらなかったらどうしようかと心配だったが、既に次作を読み始めている状態。
しばらくは楽しめそう。

後書きに「ファンタジーはほとんど読んだことがなかった」と書いてあったのが印象的。
大体ファンタジー作家はファンタジー好きだと思っていたので(ミステリ作家はミステリ好きだし・・)激しい驚きがあって、それでも書けるのかと目から鱗だった。

読了日:2012.6.30
★★★★★

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2012年6月30日

ruru (10:27)

カテゴリ:国内小説一般小野 不由美

『こんなに変わった歴史教科書』山本 博文

あのお札の聖徳太子も教科書で見た源頼朝も足利尊氏も武田信玄も皆別人!? 昭和と平成の教科書でこれだけ変わった日本の歴史。

度々新聞などで発表される歴史の”新説”。
見かけるたびに衝撃を受けていたが、それらを軽くまとめたのがこちらの一冊。
さらりと読めるのですぐ読み終わる。

三内丸山など「最古の~」といったものは、新しく発掘されれば変わっていくだろうとまあ納得できるが、刷り込まれていた歴史上の人物たちの顔が変わったり、武田騎馬隊はなかったとか(しかもポニー並みの軍馬とは・・)士農工商はなかったとか神風は吹いていないとか鎌倉幕府は1192年成立じゃないとか・・改めて読むと色々と衝撃があってがっくりくる。

そういえば埋め戻して発掘していたという歴史捏造事件もショックだった。
それだけ歴史はあやふやだということで、考証し検証していくのが面白いのではあるが・・。

世のお父さんお母さんは、予習なしで子供に歴史は教えられないことに気付いているのだろうか?
常に新説を取り入れていかないと、昔勉強した名残に囚われたまま真実に置いていかれそう。
その真実も今現在の真実、ではあるが。

立ち止まらずに勉強は常に続けることが必要だと感じた一冊。

読了日:2012.6.19
★★★★☆

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2012年6月20日

ruru (22:53)

カテゴリ:歴史・民俗

『十五万両の代償 十一代将軍家斉の生涯 (講談社文庫)』佐藤 雅美

寛政の改革から華やかな化政文化へ。 将軍徳川家斉と父一橋治済は、意のままにならない田沼意次・松平定信を退け、水野忠成を重用。 水野は期待に答え、貨幣の改鋳などで幕府の財政を立て直していく。

あまり良いイメージのない徳川家斉と悪評高き水野忠成。
家斉を主人公としつつ、水野忠成の業績に重きを置き、彼らの評価を見直させるような視点で書かれているのが興味深い。
徹底的に水野忠成に好印象なところが今まで経験がなかったことで不思議な感覚。

一応小説なのだが、淡々と当時の出来事や事件、改革の内容や権力闘争などが続くので、誰か登場人物に心を移して没頭するような作品ではなく、ひたすら歴史をなぞることで読み進めるような作品。
また、おそらく調べ上げたことを全て書きたいという欲があったのだとは思うが、時代が前後したり、1つの事件の説明が詳細すぎたりと冗長的な印象があって読みやすいとは言えない。

それでも、幕府という官僚機構の内部や改革の裏側などが事細かに取り上げられていて面白かった。
子供を養子に出すたびに持参金が幾ら~などの内訳、老中と大名たちの駆け引き、領地替えの手続き、御三家・御三卿との関係性など、漠然とイメージしていたことがはっきり認識できて読み応えがある一冊だった。

著者の主観による小説とは言え、家斉や水野忠成のイメージが変わってしまったのはしてやられたという感じ。

読了日:2012.6.19
★★★★☆

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2012年6月19日

ruru (22:53)

カテゴリ:国内小説一般佐藤 雅美

『爆心』青来 有一

原爆の火に焼かれた者、その土地に現代を生きる者。 長崎を舞台に様々な人間の愛と欲望、人生を描く連作短編集。

月日が過ぎようとも決して忘れられることのできない原爆の記憶。
信仰心厚い信者たちが何故原爆という枷を背負わねばならなかったのか。
戦争と信仰、人間の欲望と贖罪を丁寧に紡いだ作品集。

被爆地に生まれ育つということは、やはり他の土地とは違うのだとしみじみ感じさせられる。
時代は変わっても、歩く大地、触れ合う人、遺された建物などから常に記憶は掘り起こされていく。
キリスト教信者が多い長崎という土地柄もまた独特の苦しみを生み出している。

神を敬い信仰してきたのに、何故このようなつらい目に合わねばならないのか。
全編に漂うのは、人生の不条理と信仰への疑い、逡巡だ。


嫉妬から妻を殺しておきながら記憶を消してしまった息子を想う両親。
息子が暮らした離れを片付けながら、父はそこに暮らしていた被爆者の伯母を思い出す。(『釘』)

幼馴染の議員をホテルに尋ねてきた知的障害の男性。
優しかった彼の変貌にショックを受け、川原に向かうが、聞こえてくるのは水を求めて死んでいった人たちの声ばかり・・。(『石』)

被爆して障害を負い、家族を失った女性。
好きだった男性は健康な女性と結婚してしまった。
何故自分だけ生き残ってしまったのか。
彼との一夜の思い出は彼女に生き残った意味を与えてくれるー。(『虫』)

医師と結婚し、何不自由ない暮らしを手に入れた主婦。
義父母以外の親族たちが皆固まって亡くなっていたという庭の藤棚。
その藤棚の下で、彼女は式典のサイレンを聞きながら若い男を誘惑するのだったー。(『蜜』)

幼い娘を亡くした父は、海の気配を感じるようになる。
周囲の人間は皆それを病気と言うが、彼には確かに見えるのだ。
被爆者である妹が同じように海の話をしていたというおじさんとの会話に彼は希望を感じるが・・。(『貝』)

自分の両親が誰なのかは知らない。
焼け野原で拾われ、誕生日は昭和二十年八月九日となっている。
人の勧めで原爆体験の原稿を書きながら、男は自分の人生を振り返る。(『鳥』)


一話一話全く異なる設定ながら、全てが原爆と信仰心に繋がりを持たせた巧みな小説ばかりである。
人は過去と行き来しながら今を生きる。
戦争を全面に押し出すことなく取り入れることで、原爆の罪深さと人間が生きる上での深い苦しみや葛藤を見事に描き出している一冊だった。

読了日:2012.6.9
★★★★☆

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2012年6月11日

ruru (19:34)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『幻想即興曲 - 響季姉妹探偵 ショパン篇』西澤 保彦

40年前に起こった殺人事件。 犯人として逮捕された女性のアリバイを証明した少女は、ミステリ作家となっていた。 事件後も検証を続けて小説にまとめた原稿を託された編集者智香子は、妹永依子の推理で真相へとたどり着く・・。

事件の鍵を握るショパンの幻想即興曲を聞きながら読むと雰囲気が出て良さそう。

物語はほとんど40年前の事件前後なので、"響季姉妹探偵"シリーズと銘打つほど姉妹の活躍はないのは残念。
途中で存在を忘れていたくらいだ。

トリックとしては多少ご都合主義ながら、様々な伏線が一気に繋がっていくところはさすが。
西澤作品によくあるレズ設定や大げさな感情描写はどうも苦手だが、展開は十分楽しむことができた。

響季と名づけてあり、探偵役の永依子がピアニストということは、このシリーズはクラシックを絡めたミステリになるのだろう。
曲によって趣が異なることを楽しみたいところ。

読了日:2012.6.
★★★☆☆

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2012年6月10日

ruru (21:08)

カテゴリ:国内ミステリー西澤 保彦

『終の住処』磯崎 憲一郎

30歳を過ぎて結婚した夫婦。 その時既に二人には諦めの気持ちが漂っていた。 夫が結婚から今までの人生を振り返り、流れてきた歳月に思いを巡らせる・・。

おそらく50代位だろうか、男が結婚からこれまでの人生を振り返っていく思考が綴られている。

常に不機嫌な妻、不倫を繰り返す夫、会話のない夫婦、その中での娘の存在、仕事での壁・・。
挟み込まれる社会情勢が時代を映し出す。

漂う倦怠感と閉塞感や起伏のない文章などが芥川賞らしいと言えばらしいのだが、面白くはないし心が動かされる箇所もない。
読んでいてひたすら息苦しい。

男女間の心の隔たりや人生への徒労感などはよくわかるが、共感も新しい視点もない。
すぐに読み終わるところが救いか。

見てみると著者はこの主人公世代より若いので、この世代のおじさんはこうであろうという想像の人生観なのだろうか。
そう考えると愛人を作って家庭を顧みず、しかし男の責任で家を建てて出世をし、子供が離れたことでまた夫婦で向き合わなければならない絶望感・・といった1つの男の定型を妄想的な思考で客観的に綴っているという楽しみ方ができるかもしれない。

読了日:2012.6.5
★★★☆☆

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2012年6月 9日

ruru (20:30)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『聖女の救済』東野 圭吾

妻に離婚を切り出した夫が毒殺された。 発見者は妻の部下で愛人。 一番怪しい妻はその時北海道におり、殺害トリックも不明のまま捜査は難航する。 内海刑事は、美しい妻に魅了されている草薙刑事に黙って個人的に湯川に協力を求めるが・・。

続けてガリレオシリーズを読んでみた。

トリックに関しては強引だし、動機も首をかしげてしまう。
しばらくはトリックが読み取れずに翻弄されるので、読んでいる間はそれなりに集中できたが、結局都合良く展開していくところがやや残念。
根底に流れる子供云々の設定も気分が良くない。

何となく読まされるのだが面白かったとは言い難く、内容はすぐに忘れてしまいそうだ。

読了日:2012.6.
★★★☆☆

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2012年6月 8日

ruru (21:08)

カテゴリ:国内ミステリー東野 圭吾

『容疑者Xの献身』東野 圭吾

シングルマザーの靖子と娘の美里は、つきまとう前夫を衝動的に殺害してしまう。 途方にくれる母子に手を差し伸べたのはアパートの隣人で高校教師の石神だった。 湯川は旧友である天才石神が立案した完全犯罪を暴くことはできるのか。

ガリレオシリーズの1作。
直木賞を取ったり映画化されたり話題になった作品だが、たまたま図書館で目にしたので初読。

東野さんのミステリはどれもそれなりに面白くて安定しているのだが、突き抜ける衝撃もないので、私としては流行が終わった頃にひっそりと借りて読むのが丁度良い。

今回の軸は数学だけに人生を捧げてきた石神が、思いを寄せる女性のためにひたすら身を捧げていくところにある。
数学問題を解くために使ってきた天才的頭脳で警察を翻弄していくが、唯一の理解者とも言える旧友湯川がそんな彼を追い詰めていくというもの。

トリックは基本的なものだし、伏線がはっきりとし過ぎていてすぐにわかってしまう。
大体初動捜査があんなに簡単にぶれると思えない。

だが、やや浮世離れした石神の人物像や湯川との友情などの人間模様には興味をそそられそれなりに楽しめた。

読了日:2012.6.
★★★☆☆

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2012年6月 7日

ruru (17:08)

カテゴリ:国内ミステリー東野 圭吾

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