2012年7月アーカイブ

『損料屋喜八郎始末控え』山本 一力

元同心で今は損料屋を営む喜八郎。
上司であった与力の秋山と共に巨利を貪る札差たちと渡り合う。

山本一力のデビュー作。

理由あって商人に身をやつした元同心喜八郎が暗躍し、世話になった米屋は守りながらも当時権勢を誇っていた札差たちの力を削いでいく、という話。

元同心の活躍というのは時代小説の定番でもあるが、喜八郎の裏家業ばかりがクローズアップされていて損料屋という設定が必要だったか疑問に感じた。
もう少し損料屋の商いの部分が描かれていた方が、"しがない損料屋、しかしその実態は・・・"というように、喜八郎にも興味が沸いてギャップが楽しめるのではないだろうか。

また、手下も多く喜八郎を始め人物像が定着しづらいのも読みにくかった。
喜八郎と秀弥の恋も進んでいるような描かれ方だが、男女の心の機微もあまり感じられない。
女性の登場人物が他におらず、お相手なんだろうと思うからそう思える程度。

札差屋を追い込んでいくのが主軸だが、札差屋の悪行ぶりの描写が薄いこともあって、ひたすらやりこめていく流れもあまりすっきりしなかった。

シリーズとなっているので人気があるのかもしれないが、個人的には少々残念な作品だった。

読了日:2012.7.
★★★☆☆

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2012年7月29日

ruru (15:32)

カテゴリ:国内小説一般山本 一力

『今日は死ぬのにもってこいの日』ナンシー・ウッド

大地に根付くインディアンの教え。

著者はニューメキシコ州サンタフェ郊外に暮らし、タオスのインディアンたちとの交流を持つ女性で、詩集のようなインタビュー集のような混在した作りとなっている。

ジョージア・オキーフが暮らした町と聞いて、あのメキシカンな?作品を思い出してみると街の情景が鮮やかにイメージすることができる。

全ての教えに共通するのは、自然と共生し自己の内部を見つめ、ありのままを受け入れるということ。

文明の恩恵を受けながら原始的な思想に惹かれるのが人間の不思議であり本能。

気になるタイトルとなった詩はこちら。

今日は死ぬのにもってこいの日だ。
生きているものすべてが、わたしと呼吸を合わせている。
すべての声が、わたしの中で合唱している。
すべての美が、わたしの目の中で休もうとしてやって来た。
あらゆる悪い考えは、わたしから立ち去っていった。
今日は死ぬのにもってこいの日だ。
わたしの土地は、わたしを静かに取り巻いている。
わたしの畑は、もう耕されることはない。
わたしの家は、笑い声に満ちている。
子供たちは、うちに帰ってきた。
そう、今日は死ぬのにもってこいの日だ。

死でさえも自然と共に静かに受け入れようとする思想は、やはり文明国に生きる人間なら誰もが憧れるものではないだろうか。

巻末には原文英語も掲載されている。
英語の理解度が高い人はニュアンスの違いも楽しめるはず。

読了日:2012.7.18
★★★★☆

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2012年7月20日

ruru (00:49) | コメント(2)

カテゴリ:哲学・メンタル

『ひっこしました』杉浦 さやか

杉浦さんは、こういったイラストエッセイの中では結構好きな作家さん。
久しぶりに手にとってみた。

こちらは自身の引越し経験を可愛いイラストや写真でまとめた一冊。

DIYリフォームや庭造り、インテリアのこだわりなどが綴られていて可愛らしいイラストを眺めるだけでも楽しい。

古いが味のある新居。
自分もこういったところは好きなので興味を持って読んでいたが、やはりカビの大量発生やネズミ襲来には耐えられない気がする・・。

今までの引越し遍歴なども載っていて面白かった。
女の子なら読んでみると楽しいはず。

読了日:2012.7.16
★★★★☆

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2012年7月19日

ruru (11:42)

カテゴリ:エッセイ・随筆・対談

『京都土壁案内』塚本 由晴・森田 一弥

タイトル通り、京都の見所溢れる土壁案内の本。
三十三間堂、東本願寺、京都御所などが土壁に特化して紹介されており、工法などの説明も添えられている。

漆喰やなまこ壁も魅力的だが、この本の中では大徳寺の瓦塀に惹かれた。

種類も形もまちまちの瓦。
屋根の上での役目を果たして今度は塀の強化に使われているというリサイクル感も素晴らしいし、壊れた瓦を巧く配置した職人さんのセンスも美しい。

マニアックだがとても面白かった。
写真&コラムといった作りなので、専門的になり過ぎずに気軽に読めるのも良かった。

読了日:2012.7.18
★★★★★

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ruru (00:09)

カテゴリ:その他

『奇面館の殺人』綾辻 行人

推理作家の鹿谷は、自分にそっくりな男日向の替わりに奇面館へと出かけていく。 そこはあの中村青司が手がけた館の1つだった。 それぞれがあてがわれた仮面を身につけての儀式が行われた夜、凄惨な殺人事件が起こるー。

久しぶりの館シリーズ。
今回河南の出番はなく、鹿谷のみの活躍。

仮面というのはそれだけでどこか妖しい雰囲気を持つものだが、中村青司の奇妙な設計とのコラボレーションは更に異質度が増し、恐怖感がつのる。

雪に閉じ込められた山荘、鍵をかけられてしまった仮面、謎多き主人、凄惨な死体・・と本格要素をたっぷり楽しむことができるのだが、終結は意外とライトな印象で拍子抜けした部分もあった。
他の館シリーズに比べると全体的にもそれほど陰鬱な展開になっていない気がする。

時々視点が女子大生瞳子になるため緩和剤になっていたこともあるだろう。

仮面をかぶっていて誰が誰やらよくわからなくなる時があり、何度も確認が必要だったので読むのにやや手間がかかった。

これだけ読むとそれほどはまらないだろうが、シリーズとして楽しむ分には十分満足。
お約束の仕掛けなども楽しめた。

館シリーズもあと1作ということらしい。
最後はこってりと遊びつくした大作を期待したい。

読了日:2012.7.6
★★★★☆

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2012年7月10日

ruru (20:59)

カテゴリ:国内ミステリー綾辻 行人

『華胥の幽夢 十二国記』小野 不由美

決して悪政ではないのに国は勢いをつけて傾いていく・・。 台輔采麟は徐々に弱り、采王砥尚と官吏たちの焦りが加速していく中でそれぞれが見た華胥の幽夢とは・・。『華胥』他5作からなる短編集。

十二国記の番外編。

表題の才国、泰麟が見た漣国、祥瓊が去った後の芳国、楽俊と陽子の今、傾く柳国、と見知った登場人物たちのサイドストーリーや今まであまり触れられていなかった国の様子を知ることができてとても楽しかった。
相変わらず時代も場所もコロコロ変わっていくが、さすがにもうこの世界観には慣れたので違和感はない。

ここまで世界は膨らんでいて全く質も落ちないのは素晴らしいこと。
もう少し進行が早ければ言うことはないのだが・・。

楽俊には是非慶国の官吏となって陽子を助けて欲しいのに、とか芳国ではやはり月渓に王になって欲しい!とか戴国はどうなっているんだ!とか色々希望や感想があって落ち着かない。

まさか久しぶりの新刊がまた番外編の短編集とは思えないので、次はやはりしっかりと戴国の内乱を決着させて欲しいのだが・・。

読了日:2012.7.3
★★★★★

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2012年7月 9日

ruru (21:27)

カテゴリ:国内小説一般小野 不由美

『黄昏の岸 暁の天(そら)〈上〉〈下〉―十二国記』小野 不由美

登極から半年、泰王驍宗は反乱の鎮圧へと向かったまま、また台輔泰麒も鳴蝕を起こして行方知れずとなる。 将軍李斎の訴えを受けた景王陽子は、諸国の王と麒麟の力を借りて蓬莱から泰麒を呼び戻そうと力を尽くす。

驍宗の登極で良い方向へ進むと思っていた戴国がひどいことに・・。
行方知れずの王と麒麟。

諸国の王と麒麟たちは、蓬莱へと流された泰麒を探し出す方が簡単だと考えるのだが、なかなか彼が見つからない。

いつの間にか泰麒は高校生に。
少し大人になったのはほっとできるところ。

初めてお目見えの王や麒麟もいて面白かったし、仲間を得た陽子のその後が知れたのも良かった。

しかしこの結末は・・。
その後番外編しか出ていないことを考えると、しばらく戴国の様子は分からない様子。
数ヶ月や1年ならまあ待てるが10年以上時が経っていることを思うと、もう少しきりをつけておいて欲しかったというのが本音。

新潮社に移って新刊が出るのかと思いきやしばらくは新装版の出版が続くらしく期待もできない。
このもやもやした気持ちをどうすれば良いのか・・。

読了日:2012.7.2
★★★★☆

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2012年7月 8日

ruru (19:13)

カテゴリ:国内小説一般小野 不由美

『図南の翼 十二国記』小野 不由美

恭国で先王が斃れてから27年。 豪商の娘として何不自由ない暮らしを送っていた12歳の珠晶は、荒れる母国を見かねて昇山することを決意する。

前作で少し登場した恭王珠晶の登極前の話。

子供だからこその無鉄砲に思える言動の数々だが、国を思い、大人をふがいなく感じて自ら責任を追おうという強い意志を感じることができる。
至らないところは多々あれど、昇山の旅の中で成長していく様子や見守る大人たちとの交流も読み応えがある。

今までは昇山後の話だったので、黄海の旅の過酷さを知れて面白かった。
珠晶の麒麟への言葉はあまりに最もで笑えた。

最後に垣間見えた奏国の様子も興味深い。
そのうちこの国の話も語られるのだろうか。

こちらも番外編らしいが、こうなってくると本編と番外編の区別はつきにくい。
8冊読んでも未だ未知の国ばかりで先はかなり長そうだ。

読了日:2012.7.2
★★★★★

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2012年7月 7日

ruru (20:52)

カテゴリ:国内小説一般小野 不由美

『風の万里 黎明の空〈上〉〈下〉十二国記』小野 不由美

しきたりに疎く、官からも民からも未だ信頼を得ることができない景王陽子。 芳国の公主として何不自由ない生活を送っていたが、父母を殺され仙籍から除されて彷徨う祥瓊。 蓬莱から流され、言葉もわからぬまま苦渋の生活を送っていた鈴。 未だ安定には程遠い慶国で三人の少女たちが出会うー。

やっと陽子のその後。

官吏たちに軽んじられ、自分でもどう動けば良いのか悩み続けて何も出来ない日々。
街に下りて教えを受ける中で、陽子は郷長への反乱軍に加わることとなる。

というわけで陽子の周囲ではやはり生々しい血の臭いがする。
本当に最初のおどおどした女子高生の陽子は何だったのかと笑ってしまうほどの女闘士だ。
どうも落ち着かないが、これが本当の姿なのだろう。

始めの内は自分勝手な祥瓊やネガティブな鈴のターンになるとその人物像にいらいらしてしまったが、三人の少女の人生が絡み合いながら徐々にひとところに集約されていく展開はお見事。

まだまだ不安定ながら景王としてやっと一歩踏み出させた陽子。
この後のストーリーも楽しみ。

読了日:2012.7.1
★★★★★

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2012年7月 6日

ruru (20:58)

カテゴリ:国内小説一般小野 不由美

『東の海神 西の滄海 十二国記』小野 不由美

延王尚隆と延麒六太が雁国の再興を手がけてから二十年。 徐々に国家は形になりつつあったが、反乱が起こり、六太が人質となってしまう。 二人の出会い、六太の友情、尚隆の采配・・未だ不安定な頃の雁国での話。

今回はまた500年近く昔の話。
度々活躍する延王尚隆と延麒六太の出会いと登極すぐの雁国の様子がよくわかる。

尚隆も六太も日本の戦国時代の生まれというのが、この世界観にしっくりくる。
やはり現代の女子高生陽子が剣を持って戦闘を繰り広げるよりはずっと納得がいく。

結果500年も安定した国家を率いることとなる二人の背景や人となりを理解することができて面白かった。

一応番外編だったらしい。

1作目、2作目と順番に読んできての3作目。
行きつ戻りつ、なかなか話が進まないもどかしさを感じつつも大分十二国記の世界観に染まってきた。

読了日:2012.7.1
★★★★★

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2012年7月 5日

ruru (21:22)

カテゴリ:国内小説一般小野 不由美

『風の海 迷宮の岸〈上〉〈下〉十二国記』小野 不由美

蓬山の木に実った戴国の麒麟の実が、蝕によって流されてしまう。 10年の月日が経ち、泰麒は蓬莱の地で人として育っていたが、戴国の王を選ぶためにと女仙たちに連れ戻される。 自らの運命と大きな使命を知った泰麒は葛藤の中一人の男を王と定めるがー。

戴国の麒麟・泰麒は前作の陽子同様の胎果。
10歳まで現代の日本で育ち、突然蓬山へと連れてこられて自分の運命を知る。
普通の麒麟が自然と出来ることができずに悩む泰麒だったが、使令を持ち転変を覚えと少しずつ成長していく。

時代は陽子が十二国に渡るよりも少し前になる。
時代も主人公も場所もすっかり移してのストーリー展開に最初は違和感があったが、次第に慣れた。

練りこんで作られたファンタジーの世界なのだが、日本から突然渡った少年の視点を通すことで読者も共に疑問を解消しながら徐々に馴染んでいくことができる。

陽子の場合はひたすら戦闘・疑心・苦悩だったが、泰麒の場合は怯え・萎縮・葛藤という感じ。
そこが王と麒麟の違いでもあるのか。

麒麟という神がかった存在でありながら、それぞれ異なった人格を持つことが面白い。

繊細な麒麟の中でも特別な彼が、周囲との交わりの中で徐々に成長していく姿が微笑ましい。
世界観を理解する上でも、十二国記の二作目がどこの国でもなく蓬山という順番も良かったと思う。

読了日:2012.6.30
★★★★★

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2012年7月 4日

ruru (17:20)

カテゴリ:国内小説一般小野 不由美

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