『最暗黒の東京』松原 岩五郎

明治中期、日本の貧民街への潜入レポート。

500日もの長きに渡り、実際に職を得て最下層の人々と暮らした記録となっている。

文明開化と共に日本は一気に進化したと思いがちだが、取り残された人々の悲惨な暮らしを克明に記されると現実はなかなか衝撃的だ。

貧民窟、最下層と言い切って冷静に観察している辺りが、同じ日本人であるのに自分の生きる世界ではないのだとはっきり線引きしていることを感じさせる。

現在の日本などでは到底想像も付かないような、例えれば発展途上中の某国のような天と地ほどの格差の中では、同じ国内でも全く別の次元で生活が営まれることを当然と考えるものなのかもしれない。
国が落ち着く中で混じり混じって中間層が増えていくのは自然の摂理なのだろう。

ここに登場するのは、不潔極まりない町で、着の身着のまま残飯を当てにするようなその日暮しの人々ばかりだが、皆生命力に溢れていて、切なさよりも逞しさを感じる。
相応の秩序があるのが面白く、人情もあり、喧騒が聴こえてくるような賑やかさもある。

著者は、物価や賃金、職業ごと或いは女子供の暮らしまで細かく記録している。
出版された当時注目を集めたというのが興味深い。

読み始めは取っ付きにくかったが、軽快な文章なので段々読むスピードが上がっていった。

明治の庶民の暮らしというのは何となく色々な書物から想像が付いていたが、更にその枠を超えた下層と言われた人々の暮らしを少しは理解することができたと思う。

記録文学として評価が高いのも納得の内容。

読了日:2012.12.12
★★★★☆

↓ブログランキング参加中です。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

このエントリーを含むはてなブックマーク Buzzurlにブックマーク livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録

タグ

2012年12月13日

ruru (00:14)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

« 『鳥学の100年』井田 徹治 | ホーム | 『明日のことは知らず 髪結い伊三次捕物余話』宇江佐 真理 »

このページの先頭へ