2013年1月アーカイブ

『殺意は砂糖の右側に』柄刀 一


殺意は砂糖の右側に (ノン・ノベル)
柄刀 一

小笠原諸島から初めて都会に出てきた天地龍之介。
IQ190の天才少年が科学的根拠を基に様々な事件を解き明かしていく・・。

素直で世間知らずな龍之介と従兄弟で凡人の光章とのコンビのバランスが良い。
龍之介の朴訥さが小笠原諸島で変人の祖父と暮らし、学究三昧だったからというのはまあわかるが、光章と一美の関係や一美への憧れ具合などは30を過ぎた大人の割に違和感がある。
話のノリも若いし主人公たちは一回り世代が下の印象を受けるが。

しかし謎解きに科学を絡めてあるところが一ひねりあって面白い。
ちょっとしたウンチクも楽しめる。

遠慮がちにズバッと真相に切り込む龍之介のキャラは漫画的な面白みがある。

祖父の友人を探す過程で事件が起こる展開もわかりやすくて良かったと思う。
しばらくは中畑さんを追っていれば世界中でも舞台にできそうだ。

久しぶりに楽しみなシリーズができた。


読了日:2013.1.
★★★★☆

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2013年1月29日

ruru (14:55)

カテゴリ:国内ミステリー柄刀 一

『論より譲歩』土屋 賢二


論より譲歩 (文春文庫)
土屋 賢二


哲学教授のユーモアエッセイ。

ふざけた文章で楽しく読める。
おじさんのぼやきのような内容がほとんどだが、ところどころ哲学要素もあっておもしろかった。

聖人ツチヤ師の回が良い。

頭が疲れている時に最適。


読了日:2013.1.
★★★★☆

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ruru (14:20)

カテゴリ:エッセイ・随筆・対談

『虐殺器官』伊藤 計劃


虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
伊藤 計劃

9・11以降先進国は徹底的な管理社会となりテロを一掃したが、後進国では内戦や大量虐殺が増え続けていた。
米軍兵士のクラヴィスは、虐殺の影にいるアメリカ人ジャン・ポールを追ってチェコへ向かう。
彼の目的とは何か?殺戮を引き起こす"虐殺器官"とは?

あちらこちらで評価の高い書評を見かけるので読んでみたのだが、個人的にはあまり面白いと思わなかった。

細部に渡った設定や文章力は魅力的だし"虐殺器官"というタイトルやアイディアも良いと思うのだが、登場人物たちに血肉を感じられず、戦場を変えていくだけで深まる気配のないストーリー展開に飽きる。

クラヴィスの母の死へのこだわりもルツィアに惹かれる理由もポールの動機も理解しづらく、感情移入ができないためただひたすら戦闘ゲームをしていたような読後感。

文学ではなく映像用脚本という印象。
暗殺部隊が乗り込んでいくスリルや格好良さは表現できているが、それ以上を感じるところが特になかった。

元々短編だったようなのでそれで良かったのではないか。
あっという間にポールへ行き着き"虐殺器官"が判明する方が、わざとらしい死体描写を何度も読まされたり理解しづらい主人公の逡巡に付き合う手間がなくてからっと感心できたかもしれない。


読了日:2013.1.6
★★★☆☆

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2013年1月 7日

ruru (11:52)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『ジャージの二人』長嶋 有


ジャージの二人 (集英社文庫)
長嶋 有

小説家志望で無職の"僕"は5年ぶりに軽井沢の山荘へやってきた。
東京に残った妻は他の男に恋愛中。
3回目の結婚も上手くいっていないらしい父と二人で過ごす夏の日々。

著者らしいゆるくけだるい雰囲気の小説。

出来事や風景を淡々と書き連ねる中に登場人物たちの心理が繊細に描写されている。

話に盛り上がりはなく平坦な展開なのだが、登場人物の感情がじわりと心に入り込んでくる独特の世界観に惹きつけられる。
出来事や行動を細かく観察していく文章も好み。

軽井沢の山荘といえば聞こえが良いが、実際はただのぼろ家。
携帯の電波も入らずスーパーも遠い。
父子はもらい物のジャージを着てひたすら怠惰に過ごす。

義妹を含めて、親子の微妙な距離感が良い。
お互い突っ込みすぎず、かといって無関心ではない不思議な距離感を保っている。

表題作『ジャージの二人』と一緒に翌年夏を描いた『ジャージの三人』も収録されている。
三人目は一体誰かと思えば、"僕"の妻なので驚いた。

一世一代の恋をしていたと言い切る妻は、ブランドジャージを山荘に持参してそっと腕を組んできたりする。

小学校名の入ったジャージを着るゆるい父子とブランドジャージの妻の対比や僕の心の中を駆け巡る妻への感情の波が繊細に描かれていてこちらの小説も良かった。

どこか切ないのだが、現実から離れてただぼんやりと思考する機会があるのは羨ましいなどと思ってしまった。

読了日:2013.1.3
★★★★☆

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2013年1月 3日

ruru (17:59)

カテゴリ:国内小説一般長嶋 有

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