2013年7月アーカイブ

『いつか、ふたりは二匹』西澤 保彦

眠りにつくと猫のジェニイの体に乗り移ることができる小学生菅野智己。
セントバーナードのピーターの力を借りて、小学校で次々起こる事件を調べ始めた智己の身に危険が迫る・・。

西澤さんお得意の前提ありきのミステリ。

子供向けミステリと言うことで小学生が主人公で文章は軽快なのだが、内容はなかなか毒々しい。

猫になって自由に飛び回り、犬と共に探偵ごっこ・・そんなファンタジーのようなミステリだと思って読み進めると悲鳴をあげたくなるような展開となって驚いた。

「子どもたちのトラウマになるようなものを」と編集者からリクエストされたそうだが、かなりトラウマになりそうな内容だった。

謎解きやファンタジー、子供心など様々な要素がバランスよくまとまっていて全体的に悪くはないのだが、子供向けなのかはよくわからない。
個人的には、子供にはもっと綺麗な物に触れて欲しいと思うのだが・・。


読了日:2013.7.
★★★☆☆

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2013年7月24日

ruru (01:18)

カテゴリ:国内ミステリー西澤 保彦

『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』タミ・シェム=トヴ


オランダに住むユダヤ人のファン・デル・フーデン一家は、迫害から逃れるため、名前を変えて別々の田舎村で匿われることとなる。

四人兄妹の末っ子ジャクリーンは、リーネケとして優しいドクター・コーリー夫妻と暮らし始める。
友達もでき、田舎での生活を満喫するリーネケだったが、常に嘘の中で生きなければならず遠くの家族を思う苦しみがあった。
そんな逃亡生活の中唯一の楽しみは内緒で届く父親からの絵手紙だった・・。

戦時下のオランダで追っ手に脅えるユダヤ人と良心に基づき行動する勇気ある人々について書かれた実話。


ドクター・コーリーの家に来るまでに協力してくれた数々の人々、家族たちがお世話になっているそれぞれの家の人々、警告をくれる村人・・・大変な危険を認識しながら皆精一杯一家に協力してくれる。
本来あるべき人間の良識や温かさに触れれば触れるほど、人種差別の理不尽さと愚かさが際立ってくる。


村での生活とこの家に来るまでの回想が丁度良いバランスで綴られており、父親からの手紙の実物がカラーで挿し込まれているのでとても読みやすい。
子供ながらに常に脅えるリーネケの心情に丁寧に寄り添っているため、ついついシンクロしてしまい、読んでいて常に緊張感が漲っていた。


父親は絵心があり、軽やかでとても楽しい手紙を娘に送って励ましてくれる。
娘を手紙で懸命に勇気付ける父親の愛情と、身の安全のためすぐに捨てなければならない手紙を一生懸命暗記する少女を思うとつらいものがある。

しかし涙涙の迫害物語ではなく、家族の絆や人間の良心・在り方について考えさせられる一冊だった。

良質な児童書なので子供たちの夏休みの読書にもおススメ。


読了日:2013.7.23
★★★★★

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ruru (00:56)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

『寒雷ノ坂─ 居眠り磐音江戸双紙 2 』佐伯 泰英

職を失い腹を空かせた磐音は、柳次郎に誘われて内藤新宿まで仕事探しに出かける。
縄張り争いの喧嘩の助っ人にありついた二人だったが、黒幕にはお上の存在が見え隠れする。
一方磐音が国許を離れる原因となった事件には裏があると教えてくれる者が現れて・・。居眠り磐音シリーズ第2弾。

40巻以上既刊のシリーズなのでこのままはまるのは困るのだが、ついつい2巻にも手が伸びてしまった。

今回は短編連作のような流れになっている。
内藤新宿で知り合った南町与力笹塚の存在や国許の不穏な動きなど1巻に比べ物語に更に肉付けされてきている。

長屋の人々や柳次郎、前回関わった今津屋などと交流を続けながら深川に根を下ろしつつある磐音。

恐らく今後は備後関前藩の一派と戦いながら、街中の用心棒家業をこなしていく流れだろう。
そしてそのうち奈緒も現れるに違いない・・などと安易な想像をしつつもう3巻が読みたくなってきてしまった。

最新刊は43巻らしい。
これは危険極まりない・・。


読了日:2013.7.
★★★★☆

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ruru (00:12)

カテゴリ:国内小説一般佐伯 泰英

『シュリーマン旅行記 清国・日本』ハインリッヒ・シュリーマン


トロイの遺跡を発見したことで有名なシュリーマンが江戸末期に日本を訪れていた!

遠い国で活動していた冒険家というイメージだったが、貪欲に世界を周り好奇心を満たしていたようだ。
こちらは当時清国だった中国を経て来日した2カ国の旅についてまとめられた一冊。


清国では外国人が重用されていること、纏足に驚いたこと、万里の長城に感動したことなどが詳細に綴られている。
食事や生活風景など庶民の暮らしについてもよくわかる。


日本では横浜に滞在し、江戸にも出かけている。
1856年のことらしいので幕末期にあたる。
家茂の行列まで見学したと言うから驚きである。

毎日風呂に入り世界一清潔好き、賄賂を受け取らない(権力者は受け取っていたと思うが・・)、繊細な工芸品、教育(本の普及、識字率など)の高さなど日本の良いところは当時から変わらないようだ。

人足たちに皮膚病が多い、皆刺青で体をまとっている、園芸が愛されているが芳香をはなつ花も風味のある果物もない、などやや意外な記述や娼婦(花魁)を崇める不思議さ、混浴、嘘の文化などなるほどと思う価値観についても書き残している。

江戸幕府としては面倒な客だったろうが、外国人が襲われることもままあった幕末期にのんきに日本を観察するシュリーマンの好奇心は素晴らしい。

ヨーロッパ人ならではの視点や偏見も多いが、情報が先導する現代の旅行記と違い未知の異国を覗き見た新鮮さが感じられてとても面白かった。


読了日:2013.7.
★★★★★

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2013年7月23日

ruru (12:05)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

『楡家の人びと 第3部』北 杜夫

太平洋戦争が激しさを増す中、楡家の人々も戦争によってばらばらになっていく。
峻一は南洋の島で生死の境をさ迷い、藍子の恋人城木は戦死、病院で自由に暮らしていた米国や熊五郎も中国へ徴兵されていく。
空襲で病院は壊滅状態となり、日本は終戦を迎える。
残された者たちは何を思うのかー。

完結編は戦中から終戦まで。
繁栄を極めた楡家の没落を描いているが、時代に翻弄される一人間たちを描いているとも言える。

戦争はお気楽な一家に大きな影を落とす。
第一部はユーモアに溢れていたが、浮世離れした面々に襲い掛かる現実は徐々に厳しさを増していく。

財産を失い、希望を失い、残されたのは諦めのみか・・。

しかし龍子だけは自分を失っていない。
母は強し、と単純でないところが楡家。
身勝手なお嬢様だったからこそ時代に飲み込まれることなく自分を保っていたという皮肉と力強さを感じた。
疲弊感漂う中楡病院の復活を考えるのは龍子ならではだろう。

魅力的な登場人物たちを楽しみながらも、人間の一生と抗うことができない時代の流れの無常さを感じる小説だった。


読了日:2013.7.
★★★★★

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2013年7月19日

ruru (11:16)

カテゴリ:国内小説一般北 杜夫

『池上彰の政治の学校』池上 彰


池上さんによる"政治"の解説。

仕組みの説明から問題点、提案まで。

日本では会社員などは選挙に出づらいのは確か。
議員の質を上げるためには誰でも立候補しやすい環境が必要だろう。
本業が安定している、または情熱のみの活動家と限られてしまっているから政治が身近に感じにくくなっている。

また、選挙権を18歳からという意見には賛同していなかったのだが、「地元で一度は投票してみるべき」という意見には納得できた。
進学や就職で地元を離れる人が多いということに頭が回らなかった。
突然東京で選挙に行っても問題点も立候補者もわかりにくく、投票に行く気になれないというのはそうかもしれない。

政治に興味を持ち、自らも具体案を持って候補者を選ぶという当たり前のことが薄れている。
やはり一番重要なのは教育だとつくづく感じる。

ポピュリズムについての章が面白かった。
閉塞感を打ち破って欲しいという漠然とした期待を持つ民衆に答えるパフォーマンスと政策を見極めていかなくてはいけない。


読了日:2013.7.
★★★★☆

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ruru (10:10)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

『日本のリアル 農業・漁業・林業 そして食卓を語り合う』養老 孟司

養老孟司の対談集。

最初は食事について調査をしている岩村氏。
日本の食卓が変わってきている、家庭の食事に現実味がなくなってきている等食事から見る時代の変化や社会について。

語られる内容に納得はいくが、序章という印象。


次は一番興味を持った不耕起栽培の岩澤氏。

不耕起栽培を知らなかったが、とても魅力を感じた。
田んぼは耕さない方が良い、という今までと間逆の考え。

自然と共存した考え方、いつかベランダでも水田を作れるかもしれないという新しい方法などとても心引かれた。
安易に補助金を出すよりも、こういう研究熱心な方を国でもっと支援して未来を見据えた政策を進めるべきだろう。

この対談後にお亡くなりになったようでとても残念だが、興味を持ったので著書を読んでみたいと思う。


農業の次は漁業。

気仙沼でカキの養殖を営む畠山氏。

海を豊かにするには山からという考えの下植林活動をされてきた方。

どうしてもダムを作るというのなら海までを視野に入れた設計思想で作ってみてはとの提案。
海のことを考える時に山に視線を向けられる視野の広さが素晴らしい。


最後は林業の鋸谷氏。

山が近くになく、一番縁遠い林業の問題について少し理解できたように思う。

日本には無数の山があり資源は豊富なのだから、きちんと守っていかなくてはいけないはず。
個人に任せておけないというのは納得。
外国資本に売り渡したり、ぞんざいな保存では国土が危ない。


第一次産業三つについてボリュームは軽いものの、それぞれ情熱を持って取り組んでいる方々との対談なので熱があって面白い。
現状を憂いていても仕方なく、行動あってこそ道は拓けるのだとつくづく感じた。
どの分野にも素晴らしい人がいるものだ。


読了日:2013.7.
★★★★☆

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ruru (00:20)

カテゴリ:エッセイ・随筆・対談

『孤独な放火魔』夏樹 静子

単純に思えた事件も裁判の中で様々な真相が明らかになっていく。
放火、DV、虐待・・新人女性裁判官の久保が体験した裁判員裁判3件から成る連作短編集。

ミステリ作家なら裁判員裁判を題材にしたいのだろうし、その気持ちは理解できる。

繊細な人間心理が得意な夏樹さんだが、この一冊は題材ありきに思えてミステリとしては物足りなさを感じた。

感情に頼った評議が人を裁く怖さを感じさせるところは女性作家らしいところか。

社会問題も色々盛り込んで考えられてはいるものの、主人公久保の成長もあまり感じられず全体的にあっさりとした小説だった。


読了日:2013.7.
★★★☆☆

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2013年7月18日

ruru (23:31)

カテゴリ:国内ミステリー夏樹 静子

『陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1』佐伯 泰英

直新陰流の達人坂崎磐音は、国許を離れ深川六間堀町にある長屋で貧乏暮らしをしている。
大家の金兵衛の紹介で両替商の用心棒となったことで、幕府の要人に繋がる大きな陰謀に巻き込まれ・・。

人気シリーズに手を出してみた。

腕っ節は強いが人はいい訳あり武士の長屋暮らし。
事件に巻き込まれては大活躍ーという定番パターン。

軽く読める痛快時代小説。

新鮮さには欠けるのですぐに続きが読みたいとはならないが、定番だからこそ気楽に読めるところもあり、時間がある時には楽しめそう。


読了日:2013.7.11
★★★★☆

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2013年7月12日

ruru (21:50)

カテゴリ:国内小説一般佐伯 泰英

『キャパの十字架』沢木 耕太郎


沢木耕太郎がキャパの代表作『崩れ落ちる兵士』の謎に迫るルポ。

兵士が撃たれて倒れる瞬間を捉えたこの写真は戦争の象徴であり報道写真の最高峰とされているが、あまりのタイミングの良さにやらせ論争もあった。

沢木は真贋説の一つ一つを調査し、そもそもこの写真はキャパが撮影したものではないという結論に至る。

個人的にはもう少しキャパの人物像に迫っているかと期待していたが、写真の真実についてのみなのがやや物足りなさを感じた。

調査の過程を詳細に記述した一冊で説得力はある。


読了日:2013.6.30
★★★☆☆

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2013年7月 1日

ruru (22:56)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

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