2013年9月アーカイブ

『絵本への道―遊びの世界から科学の絵本へ』加古 里子


子供の頃からかこさとし好き。

エッセイのような本だと思って購入したが、表現方法や絵の手法など論理的、技術的な内容だった。
絵本作家を目指している人や教育者向けなのだろう。

素人の一ファンとしては、各作品の裏話が楽しめた。
創作意図などを知って読み返すとまた別の感想が浮かんできそうだ。

セツルや紙芝居などかこさんの若かりし頃のエピソードは新鮮だった。

人となりや作品の流れなどを知ることができたのも嬉しい。
科学絵本などを読んで薄々感じてはいたが論理派、教育者だと実感した。

2段組で下段に絵や作品解説などがされているのだが、この構成が読みやすくて良かった。
硬い内容を絵が和らげていてただの絵本好きでも楽しみながら読むことができた。


読了日:2013.9.
★★★★★

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2013年9月30日

ruru (11:54)

カテゴリ:エッセイ・随筆・対談

『ほんまにオレはアホやろか』水木 しげる


漫画家水木しげるの自伝エッセイ。

ひょうひょうとしたキャラクターは周知の通りだが、その人生は波乱万丈である。

落第も戦争も貧乏も全て愉快にのんきに語ってしまうさすがの水木ワールド。
文章は軽快で挿絵も多々あるので漫画的な楽しみ方ができる。

何があっても前を向いていこう。
どうにかなるさと思えてくる。

読めば心が軽くなること間違いなし。


読了日:2013.9.
★★★★★

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ruru (10:50)

カテゴリ:自伝・伝記

『私たちが子どもだったころ、世界は戦争だった』サラ・ウォリス,スヴェトラーナ・パーマー


第二次世界大戦の最中に、様々な国で書かれた16人もの子供たちの日記を時系列で並べたもの。

少年兵として攻め入る側の高揚感、愛国心、望郷の念。
理不尽な状況への憤りや諦め。
戦争や政府への疑問や反論・・。

国が違えば立場も違い、また戦争への考え方も主張も異なる10代の子供たちの本音が綴られている。

写真やプロフィールと共に紹介されているので適度に感情移入しやすく、客観的な歴史書や主観的な小説とは一線を画すドキュメンタリーとなっている。


最前線に身をさらす子供もいれば、戦争を遠くに感じている子供もいる。
飢えに苦しみ死んでいく少年もいるし、戦時下でもおしゃれや恋に夢中の少女もいる。
兵士となって命を懸けて闘い、短い人生を終わらせた少年少女もいる。

学校生活などを記した普通の日記の中に戦争が滑り込んできて圧倒していくところに、戦争がどういうものかを強く感じさせられた。


フランス、ドイツ、イギリス、ポーランド、ロシアなどヨーロッパが中心だが、日本人も二人取り上げられている。

できる限り公平に子供たちの思いを紹介しようとしている努力は十分理解でき、試みは素晴らしい。
ただ、やはり人選や日記の抽出箇所などがどうしても意図的になるのは仕方がないだろう。

同じユダヤ人でも強制収容所へ送られる少年とアメリカで青春を謳歌する少年を両方取り上げたり、日本人も戦争に疑問を持つ特攻隊員を取り上げていて如何にもと思うところもある。


個々人間に焦点を当てれば、どの国にも人々の暮らしがあり、子供たちがいて、否応なしに戦争に巻き込まれていた。
それは敵国でも同様である。

子供たちの日記と言う形で、その空しさは強調されている。


この本を読むのに注意が必要なのは、登場する子供たちが国や人種の代表では決してないということだ。

ある程度の客観性を持って読むには、戦争というものについて考えさせられる良書だと思う。

読了日:2013.9.
★★★★☆

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2013年9月29日

ruru (15:34)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

『江戸時代に描かれた鳥たち 輸入された鳥、身近な鳥』細川 博昭


"花鳥風月"とあるように、絵画の大きなテーマの一つである鳥。

鎖国中の江戸時代にも様々な鳥が輸入され、愛でられ、描かれていた。
江戸絵画の鳥というと日本画の優雅な鳥や若冲の迫力ある鶏などを思い起こすが、こちらで取り上げているのは図鑑的なもの。
本草学の観点から作られた図譜や飼育書、輸入された鳥の種類や渡来経路について書かれた一冊。

珍しい鳥は大名など裕福な立場の人が中心に飼っていたようだが、庶民の間にもインコなど渡来種の認知があったとか。
花鳥茶屋なるものがあったというが、今で言う花鳥園のようなものだろうか。

眺めていると、未だに見たこともなく南国の鳥という印象の鳥たちが江戸時代から日本で愛されていたことがわかって興味深い。

毛利梅園の図譜の種類がすごい。
もちろんこちらでは鳥部門だけを取り上げているのだが、魚、貝、亀、虫、草花、きのこ等々もあったらしい。
分類が弱く批判があるそうだが、この興味の広さと精密画はもっと評価されて良いように思う。
それとも意識せずに色々な展覧会で目にしているのかもしれないので、今後気を付けていきたい。

美術よりは博物学。
絵が多いのでただ鳥が好きというだけでも眺めて楽しめる。

読了日:2013.9.
★★★★★

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ruru (14:38)

カテゴリ:歴史・民俗

『八日目の蝉』角田 光代

希和子は不倫相手の自宅から赤ん坊を誘拐して逃走し、指名手配犯となった。
女性ばかりの宗教団体に逃げ込み、瀬戸内海の島へ渡り、逃亡を続けながらの子育ては4年で終止符を打つ。
元の家庭に戻った子供・恵理菜は大きな葛藤を抱えながら成長していくが、自らも不倫の愛に苦しむようになる・・。

前半は身勝手な女の逃亡劇、後半は誘拐された子供の苦悩。

希和子の哀切はわからないでもないが、本当の母性は子供第一であるはず。
小説なので丁度良く学校へ上がる前に逮捕されるが、偽名で暮らし、病院へも行けず、着の身着のまま逃げ回ることを強制した自己中心的な生活でしかない。

希和子が逮捕されたことで、恵理菜は元の両親の元に4年ぶりに戻る。
そもそもこの家庭が存続していたことが驚きだが、恵理菜の帰還で更に崩壊は加速する。
罪のない子供が一番苦しみ、成長しても恵理菜の葛藤はなくなることがない。


この小説のテーマは何なのだろう。
女の性なのか母性なのか。
人間を描くには女に偏り過ぎている。

色々と刺激的な設定を使っているが、全体的にあっさりしていて物足りない。
要素を全て活かすにはもっと長編の方が良かったのではないか。
新聞小説だったようなので、万人受けするようにわざと薄味にしているのかもしれない。

希和子の造形や、秋山夫妻の衝突、真理菜の心情、エンジェルホームに集う女たちや千草の人生・・。
掘り下げてあればもっと深みが出たと思うのだが。


久しぶりに角田さんの小説を読んだが、女子高の匂いが強くて苦手だったことを思い出した。

恵理菜が前向きに生きようとする結末は良かったと思う。


読了日:2013.9.
★★★☆☆

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ruru (11:35)

カテゴリ:国内小説一般角田 光代

『統合失調症がやってきた』ハウス加賀谷,松本キック


統合失調症であるお笑いコンビ松本ハウス・ハウス加賀谷の半生とコンビ復活への軌跡をまとめている。

発症後グループホームで過ごした後、お笑い芸人になろうと決意。
松本キックと組んだ松本ハウスで大ブレイクするものの、多忙から病気が悪化して入院、コンビは解消される。
その後10年近くの治療の日々を経てコンビを復活し、お笑い芸人として再び活動するようになったという。

ボキャ天は好きでよく見ていたが、松本ハウスについては他の芸人さんたちのようにテレビで見かけなくなったなあという程度の認識でしかなかった。
コンビ解消の背景に病気の悪化があったとは全く知らず、出版が話題になって驚いた。
病気のことは公表していたらしいが当時はネットもなかったし、知る人ぞ知る話だったのではないだろうか。

この本はハウス加賀谷の話を聞きながら松本キックがまとめたそうだが、本人の心情がとても繊細に書かれていて臨場感があった。
文章は読みやすく、ところどころにボケとつっこみがちりばめられている。
涙あり笑いありで一気に読めてしまう。

症状は人それぞれではあるけれど、同じ病気で苦しむ患者や家族の励みにもなり、病気への理解を広めるのにとても良い本になっていると思う。

この本を出版したことで講演会なども行っているようだ。
きっと話もお笑いありで楽しいことだろう。

有名人がこうして語ることには大きな意味がある。

活動の場が広がっていくことを応援したい。


読了日:2013.9.18
★★★★★

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2013年9月20日

ruru (09:42)

カテゴリ:自伝・伝記

『一流たちの修業時代』野地 秩嘉


第一線で活躍する人々の修行時代にスポットを当てて取材した一冊。

ユニクロの柳井会長、伊那食品の塚越会長などビジネス界だけでなく、日本画家の千住博や歌手の横山剣、職人さんからトップ営業マンなど他分野に渡っているところが面白かった。

まだまだ修行中と答える人もいれば、それぞれの区切りについて語る人もいるし、その内容も様々だ。

共通しているのは目的意識と続ける情熱、人との出会いだろう。
何よりも続けることの重要性が一番ではないか。

ガチガチのビジネス成功哲学とはまた少し違う論点で吸収しやすく、文章も軽くて読みやすい。


読了日:2013.9.19
★★★★☆

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ruru (08:30)

カテゴリ:ビジネス・自己啓発

『犬の伊勢参り』仁科 邦男


江戸時代に何度か流行したお伊勢参り。

病気などで行けない主人の代わりに旅をした犬がいたという話を様々な資料から掘り下げる。

犬の首に旅費と代参を記した札などを括り付けて送り出せばおかげ犬の出来上がり。

お伊勢参りに出かける人々や宿場の人々がきちんと面倒を見てくれるので無事に伊勢にもたどり着くし、神官はお札を首に括り付けて送り返してくれたという。

想像しただけで可愛いし微笑ましい。
犬、牛馬は参るが猫は参らずとユーモアを持って書かれているが、豚も参ったという話も残っているとか。
犬一頭で送り出すとは言え、人の力が必要なので人間に懐き付いていくような動物というのが代参の条件だったようだ。

宿場の申し送りにもきちんと犬のことが記されており、偉い犬だと大切に扱われていたということがよくわかる。

著者は全てのおかげ犬が主人のための代参ではなく、お伊勢参りの集団に懐いてついてくうちに仕立て上げられた犬もいただろうと書いている。

丸々一冊犬の伊勢参りについて書かれているのは珍しいのではないか。

伊勢神社でおかげ犬の存在を知り、もっと詳しく知りたくて読んでみたが、とても面白かった。

当時の犬の扱いなどについても調べてあり知らないことも多々あって勉強になった。

風俗的な視点でも歴史的な視点でもただの犬好きの視点でも楽しめる。


読了日:2013.9.
★★★★★

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2013年9月19日

ruru (23:05)

カテゴリ:歴史・民俗

『風にのれ!アホウドリ』長谷川 博


人間が羽毛のために殺し続けた結果、数十羽程度にまで激減したアホウドリ。
生態もあまり知られていなかったアホウドリの研究と保護について第一人者が記した一冊。
ひらがなが多く平易な文章で書かれていて子供向けだったらしい。

以前デコイを使った鳥島での保護活動について書かれた新聞記事を見てから興味を持っていた。
アホウドリが絶滅寸前ということへの驚きとデコイを使ってコロニーを移動させるというアナログな方法が意外だったのだ。

それから随分時が経ち、アホウドリの数は増え続けているようで安心した。

長谷川先生の地道な研究と保護活動には頭が下がる。

人間の勝手で数を減らしたとはいえ当時は絶滅の危機感も自然保護の認識も低かっただろうから責められないとも思う。
増やしていくことは減らすことに比べ何十倍もの時間がかかる。
その苦労をしることができる。


ふと思ったけれど、アホウドリに興味があるのはこの絵本のおかげかも。


読了日:2013.9.17
★★★★★

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ruru (22:10)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』渡辺 一史


動くのは両手の指がほんの少しという筋ジストロフィー患者の鹿野氏。
病院や家族の介護でひっそりと暮らす患者が多い中、ケア付住宅で24時間ボランティアの力を借りて一人暮らしをしている。

ジャーナリストの渡辺氏が、鹿野氏やボランティアたちにインタビューしながら鹿野邸に入り込みその生活をまとめた一冊。

闘病記とも言えるが、主題は障害者の自立と福祉というものへの問いかけである。

寝たきりで社会に関わろうとするのには大変な努力を必要とする。
ボランティアがいなければ食事もトイレもできない状況にありながら、常に対等に、場合によっては上からしっかり物を言う。
言いたいことを言い合い、時には衝突しながら築かれる人間関係は単なる友情とも一線を画し密度が高い。

そこへ至るまでの半生と心境の変化、常に続く葛藤・・。
残念ながらご本人は亡くなってしまいこの本を読むことはなかったそうだが、とても丁寧に鹿野氏を巡る環境や心情を表現していると思えた。

病気や不安と闘いながらこの生活を続けるのには強い意志が必要とされる。
強がってみたり時には弱音を吐いたり・・人間らしい泥臭さにリアリティが増す。

24時間ボランティアのみで介護ということにまず驚かされる。
ボランティアたちの確保が鹿野氏の最優先事項であり、なかなか人がつかまらない日もある。
誰もいなければ何もできないわけだから大変なことである。
綱渡りのようなボランティア確保を続けながら、身をもって福祉の在り方に挑戦していく姿にボランティアたちは大きな影響を受けていく。

きれいごとだけではない現実が赤裸々に綴られていて、身近になかった障害者の現状について知らないことばかりだった。

誰もが"普通"に生活でき、足りないところは"自然と"補い合える社会の実現のためには現状を把握できる情報が増えることが大切だと思う。
意識改革のために多くの人に読んで欲しい。


読了日:2013.9.
★★★★★

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ruru (14:46)

カテゴリ:社会・ルポ・ノンフィクション

『どこから行っても遠い町』川上 弘美



亡くなった妻の元愛人と同居する魚屋、プレイボーイの父親と思春期の少年、不仲な親元から祖母の家に逃げてきた少女、挫折を乗り越えつつある駆け出しのヘルパー・・・一つの町に数々の人生が交差する。

どこか懐かしいような商店街で繰り広げられる人間ドラマ。

ドラマティックに作りこみ過ぎているようには感じたが、基本的には人の感情の機微が表現されていて良かったとは思う。

苦悩する人もいれば乗り越えて今を生きる人もおり、様々な人生を送っている老若男女で影響しあうところに人間愛を感じた。

11話が主人公を変えてうまく流れていく。
魚屋で始まり魚屋で終わる。
現在と過去の交錯も自然で綺麗な小説だった。


読了日:2013.9.
★★★★☆

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『春朗合わせ鏡』高橋 克彦

春朗(葛飾北斎)は、絵を描く傍ら北町奉行所吟味方筆頭与力仙波一之進の調べの手伝いをしている。
寄場で陰間が殺されたという噂を調べ始めた春朗は元役者で陰間の蘭陽と出会う・・。

北斎隠密説がベースにあるのだろう。
若かりし北斎こと春朗は与力の手伝いをしているが、父親は隠密で後を継がせようとしている。

良き理解者である仙波家の人々に美貌の元陰間蘭陽が加わり、様々な事件に当たっていく連作短編集。

前半はあまり面白いと思えなかったが、がたさんの存在や父・叔父との関係など人情深い展開になっていったのは良かった。

後半の雰囲気は自分好みでシリーズとしても面白くなりそうだ。

ところどころ絵を描くシーンがあり、後の北斎を感じさせる描写もちょっとした楽しみとなっている。


読了日:2013.9.13
★★★★☆

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2013年9月13日

ruru (14:11)

カテゴリ:国内小説一般その他の作家(一般)

『団欒』乃南 アサ

死体を持って帰ってきた息子。
始末をするため近年にないほど一致団結したことに家族は皆うきうきする・・『団欒』他家族のミステリ短編集。

逆玉に乗った男が見たのは隠し事0の家族。『ママは何でも知っている』
潔癖症家族が一番汚いと思ったのは・・。『ルール』
子供のままでいたい夫。段々妻だけが変わろうとして・・。『ぼくのトんちゃん』
二階に住む息子家族とぶつかってばかりの老人。テレビで出前家族の存在を知るが・・。『出前家族』

大げさにデフォルメされているが、そこそこありそうな家庭の問題を軸にしたミステリ集。
ホラー要素も強い。

それぞれ自分たちの基準でまい進するところが狂気的で、意外と怖かった。

軽く読みやすい。


読了日:2013.9.12
★★★★☆

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『いつか陽のあたる場所で』乃南 アサ

刑務所帰りの芭子と綾香。
積極的に新しい人生を歩もうとする綾香に対し、芭子は自分の過去を知られることに脅えて内にこもってしまうのだが・・。
おせっかいな下町人情溢れる谷中で再生していく女二人の友情。

自分勝手な動機で罪を犯した芭子は、将来が見えず、できるだけ他人と関わらずに暮らそうとしている。
家族にも見放された心の拠りどころは、全てをさらけ出すことができる刑務所仲間の綾香だ。
綾香は壮絶な過去を持ちながらも夢を持って生きなおそうとしており、彼女にとっても芭子という存在は大きい。

依存しあった二人の暮らしに下町の住人たちはずかずかと入り込んでくる。
おせっかいで頑固なおじいさん、おすそ分けと詮索が好きなおばあさん、情報通のおばさんたち、馴れ馴れしい警察官・・。

この警察官は『駆けこみ交番』の聖大である。
等々力での活躍が見たかったが、谷中に異動になったらしい。
どうやら芭子に恋をしているようだが、警察官ということで避けられるという悲しい役割。

あまりに芭子が後ろ向きで甘ったれなので途中からいらいらしてしまった。
そもそも前科が知られるのが怖ければ、地元東京を離れるのではないかとも思う。

しかし最後にやっと芭子の決意が感じられて少しすっとした。
繊細な心理描写は著者らしく素晴らしい。


読了日:2013.9.12
★★★★☆

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ruru (11:15)

カテゴリ:国内小説一般乃南 アサ(一般)

『駆けこみ交番』乃南 アサ

等々力不動前交番に赴任した新人警察官の高木聖大。
近所の苦情処理や交番に遊びに来るおばあさん・神谷さんの話し相手などが主な仕事だったが、ひょんなことから指名手配犯を逮捕するという大手柄をあげる。
先輩の妬みがひどくなる中、神谷さんに誘われて出かけた老人クラブに入り浸るように。
そこに集うのはそれぞれが特技を持ち地元の情報に詳しい老人たちだった。

正義感に溢れているわけでも、かといってやる気がないわけでもない。
少しふわふわした今風の若者が新米警官聖大だ。

"とどろきセブン"と名乗る老人7人組が持ってくる地元情報から次々と事件に遭遇し、手柄を挙げていく。

地元民と親交を深めながら少しずつ警察官らしくなっていく・・というよりは、お年寄りにうまく転がされている状態である。

事件は割と陰湿だが、お年寄りの正義や知恵と素直な若者の交流は微笑ましい。

軽く読める短編集。

"とどろきセブン"一人ひとりにスポットを当てて掘り下げていくともっと面白そう。
聖大の恋愛も始まるようだし、これ一冊はまだ序章という印象で温まりきっていないと感じた。


読了日:2013.9.
★★★☆☆

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2013年9月11日

ruru (15:09)

カテゴリ:国内ミステリー乃南 アサ(ミステリー)

『ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記』小林 和彦


統合失調症の著者による闘病記。

子供の頃からの振り返り、早稲田大学アニメーション同好会での活動、制作会社への就職、抱いていた将来の夢、発病後の心境や現在の生活などが記されている。

この病気は青春期に発病しやすいというが、著者は社会人駆け出しの頃に発病している。
孤立しがちな闘病生活に対し、友人との深い付き合いができた後だったことは幸いにも思える。

アニメの演出家となり仕事に追われていた最中、発病を機に思い描いていた将来とは全く別の人生となっていく過程を詳細に綴っている。

内容としては、できるだけ冷静に客観的にまとめたのだと思う。
自分の心の中や行動全てを理路整然と現すことは病気でなくても難しい。
それをここまでまとめあげたのはすごい。

100人に一人の割合で発症するという統合失調症。
隔離や薬漬けの対処療法以上の治療ができないのは、何故なのか。
正面から向かい合う研究者が少ないからではないのか。
もっと病気をオープンにできる社会になり、関心を持つ人が増えることで治療の道も拓けるのではないだろうか。
そのためにはこのような本の存在がとても重要だと思う。

闘病記ではあるが、アニメやアイドル、映画や小説などオタクな世界がみっちりとかみ合っているので、年代の近い人や同じ趣味の人は関係なく楽しめるかもしれない。

私としては『タッチ』など自分が昔見たアニメに携わっていた人なのかと知って何だか感慨深かった。


読了日:2013.9.

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2013年9月 7日

ruru (22:35)

カテゴリ:自伝・伝記

『リストラなしの「年輪経営」』塚越寛


長野県伊那市にある寒天メーカー伊那食品。

知らない会社だったが以前テレビ番組で見てから興味を持っていた。

地方の中小企業ながら社員第一の経営方針が注目を浴びているらしい。

利益至上主義を否定し、社員の幸せを第一に考えることで少しずつ成長する「年輪経営」。

安い労働力を目当てにした海外進出はしない、進歩軸とトレンド軸を見極めるなど理想を追う中に確固たる方針があったからこそ成長を遂げてきたのがよくわかる。

経営哲学が学べる本だが、単純に、地方に暮らしてこういう会社に勤めるような生活がしたくなった・・。

読了日:2013.9.2
★★★★☆

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2013年9月 4日

ruru (23:10)

カテゴリ:ビジネス・自己啓発

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