新津 きよみの最近のブログ記事

『同姓同名』新津 きよみ

唯木緑は幼馴染の田中紀之と婚約中だった。 結婚間近のある日、紀之は男にからまれた女性を助けようとして刺殺されてしまう。 「タナカミドリ」と言い残した紀之。 その名前に聞き覚えがあった緑は、名乗り出てこない女性を自ら探し当てるのだが・・。

正しい行動にも勇気と覚悟がいる昨今。
正義感の強い紀之は、男に絡まれている女性を助けて殺されてしまう。
通りすがりの事件のため犯人の目処はなかなかつかず、原因となった女性は名乗り出ても来ない。

もどかしさが募る中、緑は自ら動き出す。
手がかりから探し出した女性は田中緑という同年代の主婦だった。

自分が結婚後に名乗るはずだった氏名。
もうすぐ自分が送るはずだった結婚生活。

唯木緑は田中緑に憎しみを募らせる。

一方田中緑は結婚生活の閉塞感に萎縮しながら毎日を過ごしていた。
専業主婦の枠に反感を持ちながらもなかなか行動に移せない。
それほど満足しているわけでもないのに今の生活を失う怖さから名乗り出ていく勇気を持てずにいた。

同じ緑の対比がお見事。
結婚後性が変わることへの女のジレンマもうまく取り入れられている。
これはきっと男性にはわからないだろうと思いつつ読んだ。

後書きで作者が一番書きたいのは女同士の共感、絆といったことを書かれている。

唯木緑と田中緑は全く相反する女ではない。
いつどちらになるかはその時次第。
反発したり共感したり・・。

女性心理の反映が巧くて毎回唸らせられる。

読了日:2011.1.29
★★★★☆

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2011年1月31日

ruru (02:04)

カテゴリ:国内ミステリー新津 きよみ

『彼女の命日』新津 きよみ

35歳の楠木葉子は、父の代わりに母と妹を養ってきた一家の大黒柱。 恋人からのプロポーズ翌日に、葉子は何者かに刃物で刺されて死亡した。 1年後の命日。別の女性の身体を借りて覚醒した葉子は、自分の死後の様子を知る為に家族の元へ向かう・・。

家族に対して強い責任感を持ちながら重荷にも感じていた葉子は、母や妹と恋人、そして自分を殺した犯人のことが気になって成仏できずにいた。

目が覚めると他人の身体の中。
その後葉子は命日の1日だけ、この世に戻ってこられるようになる。

死後誰かの身体を借りて覚醒するというのはありふれた設定だが、葉子が感じる家族や恋人への複雑な思い、自分がいなくても世界が回っていく空しさ、身体を借りたことで関わった女性たちの人生への関与など、女性心理や人間模様の機微の描写が巧く、飽きさせない。

葉子の気持ちで読むので、妹夏美にいらいらしたりもするのだが、腹を立てる一方心配でたまらない姉妹愛もリアルで共感できる。
葉子の死により成長していく夏美を憎らしく思いながらもつい見守ってしまうのである。

新津さんは女性の心理描写が本当に巧い。
樋口一葉に絡めてある設定も面白いと思った。

犯人探しよりも家族との絆に重きを置いているのでミステリとは一線を画しているが、スピード感もあって一気に読んでしまった。

読了日:2011.1.28
★★★★☆

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2011年1月29日

ruru (01:14)

カテゴリ:国内ミステリー新津 きよみ

『生死不明』新津 きよみ

生死不明 (ハルキ文庫)生死不明 (ハルキ文庫)
(2003/09)
新津 きよみ

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池端弘子の夫茂が行方不明になってからもうすぐ3年。 弘子は自宅で書道教室を営むことで生計を立て、想いを寄せる男性もできた。 夫への気持ちが薄らぎ離婚請求可能な3年目を心待ちにする弘子の下へ、「ご主人は生きています」と書かれた手紙が届く。 揺れる女心と明かされていく男の過去・・。

友人夫婦の紹介で夫と出会い、スピード結婚した弘子。
新婚半年目にして夫が失踪したことに衝撃を受けるが、月日が彼女を変えていく。
いつのまにか夫が行方不明のままでいることを望むようになっているのだ。

3年経てば離婚請求ができ、財産分与で一軒家を手にすることもできる。
失踪後に知ってしまった夫の別の顔に幻滅もしていた。
書道教室で自立もでき、生徒の淳一とその父親である信久と近しくなった弘子は新たな家庭を持つことを夢見るようになっていた。

離婚請求ができる3年を目前に届く夫が生きていることを告げる手紙や電話。
弘子はこれらを握りつぶし、時が過ぎるのを待とうとする。

身元不明の遺体があれば確認へでかけ、出来る限り手を尽くして夫を探してきた。
しかし今となっては戻ってきて欲しくない・・。

良心、恋心、保身や打算など揺れ動く女心の心理描写が巧みである。
徐々に絡み合っていく人間関係があまりにも都合が良すぎる点は否めないが、ストーリーも意外性があって飽きない。
生々しい心理描写の素晴らしさが設定のマイナス面を超えているため、読後感は満たされている。

読了日:2010.9.17
★★★★☆

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2010年9月18日

ruru (11:07)

カテゴリ:国内ミステリー新津 きよみ

『ママの友達』新津 きよみ

ママの友達 (光文社文庫)ママの友達 (光文社文庫) (2010/02/09) 新津 きよみ

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専業主婦典子の元に差出人不明のまま突然送られてきた中学時代の交換日記。
その直後メンバーのリーダー格だったハセジュンこと長谷川淳子が殺されたことを知る。
「NEXT YOUR TURN!」日記の最後のページはハセジュンで終わっていた・・。

かつての仲良しグループは45歳になり、それぞれ全く異なる人生を歩んでいた。
中学生の娘の反抗期に悩む専業主婦の典子、子供を産んだばかりのシングルマザーの明美、既に孫までいながら夫の態度に苦しむ久美・・。

 

交流が途絶えていた彼女たちの現在が緻密に描き出されていき、その心理描写があまりにリアルで巧い。
濃密なようで希薄な女の人間関係や母としての立場、出産・子育て・不妊に嫁姑、介護・・・”何にでもなれる”45歳という年齢を見事に現している。

 

”心理サスペンス”というほどのハラハラ感はなく、殺人事件自体が軽い扱いである。
あらすじから想像してしまうドキドキのストーリー展開とは程遠かったので、キリキリと追い込まれるようなミステリを期待していると裏切られる。

 

しかししっかり書き込まれたそれぞれの登場人物の心情に感情移入してしまい、また共感できる箇所が多いので読後感は充実している。
ミステリと言う形に合っているかは微妙なところだが、作家の力量には感服。

 

読了日:2010.3.31
★★★★☆

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2010年4月 1日

ruru (20:22)

カテゴリ:国内ミステリー新津 きよみ

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