三崎 亜紀の最近のブログ記事

『鼓笛隊の襲来』三崎 亜記



閉鎖された老人ホームから義母を迎え、戦後最大規模の鼓笛隊が過ぎ去るのを待つ家族。鼓笛隊が過ぎ去った後に見えてきたものは・・。『鼓笛隊の襲来』

ある日突然恋人を失った喪失感に襲われた女性。町のギャラリーで開催されている「彼女の痕跡展」では自分の思い出の品が展示されていて・・。『彼女の痕跡展』。』

人間関係や過去の自分をリセットするために覆面をつけることが受け入れられた世界。覆面をつけることで人はどう変わっていくのか・・。『覆面社員』

新興住宅地にある本物の象を滑り台として利用した公園。私は象と親しくなることで町へと根を下ろしていく・・。『象さんすべり台のある公園』

新しい彼女にはボタンが付いていたことにとまどう僕。ボタンが付いている人間は他にもいるが、誰もそのボタンを押したことはない・・。『突起型選択装置』

連絡が取れなくなった旧友。奥さんは夫とは会うことはできても話すことはできない状態だと言う。それも全て家のせい・・。『欠陥住宅』

恋人の住む市が突然「浮遊特区」となり遠距離恋愛を続ける恋人たち。会えるのは彼が仕事で降下してくる時だけ・・。『遠距離・恋愛』

久しぶりに訪れた母校で校庭の真ん中にある住宅と仲間はずれの少女を見た私。しかし他の誰もその存在には気付いていない・・。『校庭』

突然消えた彼を諦められない女性。また今年も年に一度の儀式へ向かうが・・。『同じ空を見上げて』

ふとした日常や人間心理の機微を独特の世界観で味わうことができる短編集。

発想と表現力、組み立ての緻密さにはいつも驚かされる。

他にもありそうな設定の話もあるが、どの作品もはずれなく安定した三崎ワールドを堪能することができる。

激しい感情の動きも強烈なインパクトもないのに何故かじんわりと記憶に残りそう。


読了日:2014.1.8
★★★★☆

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2014年1月 8日

ruru (12:36)

カテゴリ:国内小説一般三崎 亜紀

『海に沈んだ町』三崎 亜記

住むだけで遊園地の夢を見る町、海に沈んだ故郷、夜に閉じ込められた町など・・様々な"町"を描いた短編集。

著者の紡ぎ出す世界は、現実が少し歪んだようなパラレルワールドの連続だ。
どこか異世界、それでいてリアル。
客観的な視点を持つ登場人物たちの存在感の薄さも独特の空気感を醸し出していて不思議な世界観を創り上げている。

今回は9編の短編集だが、どれも似ているようで新しい。
不思議なくらい飽きることがない。
いつもそのうちネタ切れになるのではないかと思うのだが、裏切られる。
この誰も真似できない発想力は本当に素晴らしいと思う。

町に意味を持たせたこの作品集。
三崎作品は独特の薄い心の揺れをもたらしてくるのだが、それが良い。
全ての作品において完成度の高い極上の短編集だった。


読了日:2011.2.18
★★★★☆

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2011年2月18日

ruru (22:09)

カテゴリ:国内小説一般三崎 亜紀

『廃墟建築士』三崎 亜記

廃墟専門の建築士である私は、経営手腕により成功を納めた弟子に対し複雑な思いを抱いていた。 それでも自らの信念を曲げずに廃墟を作り続けていたが、国のあちらこちらで"偽装廃墟"が見つかって・・。 表題作他建築物をテーマにした三崎ワールド短編集。

七階の消滅を決定した行政と住民の闘いを描いた『七階闘争』。
廃墟に魅せられ廃墟のみを新たに作っていくという『廃墟建築士』。
夜になると野生を取り戻す『図書館』と調教師。
蔵を略奪者から守り抜こうとする『蔵守』。

次から次へとよくこんな設定が思い浮かぶなあと驚かされる三崎作品。
在り得ない設定だらけなのだが、何故かするりと受け入れられるのは全くのファンタジーではないからだろう。

パラレルワールドと言っていいのだろうか。
現代の日本をベースに、ある価値観だけが少しずれたような世界観が絶妙。

世相や行政を揶揄したメッセージが込められているようにも感じるし、特に意味はなく現実感を含んだだけの幻想小説とも取れる。

登場人物たちは全て淡々とした性格で人間味がなく、その世界に存在している部品でしかない。
そのため感情移入することはなく、ただただその世界観を楽しむ小説である。

ふわりとした印象の作風は何故か癖になってしまうから不思議だ。
つかみどころのなさが唯一無二の魅力なのではないだろうか。

単行本で読んだのだが、装丁も作品イメージに合っていて良かったと思う。

読了日:2011.1.27
★★★★☆

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2011年1月28日

ruru (23:03)

カテゴリ:国内小説一般三崎 亜紀

『失われた町』三崎 亜記

失われた町失われた町 (2006/11) 三崎 亜記

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30年に一度「町」が消滅する世界。
消滅を拡大させないためには、「町」の痕跡を全て消し、親しい人を失っても悲しみを感じてはいけないこととされていた。 失われた町”月ヶ瀬”に関係した人々がタブーを超えて寄り添いあい、次の「町」の消滅を阻止しようと動き出す。

 


『となり町戦争』に続けて読んだが、全く空気感が同じでとても特徴のある小説だ。
これがこの作家さんの世界観なのだなあと改めて実感した。

今回は消滅していく「町」という理不尽な力に立ち向かう人々を描いている。
居留地だの西域だのと世界が広がり、主要人物が増えた分物語は広がりを見せているのだが、その分まとまりがなく雑然としている印象を受ける。


ストーリーや背景に魅力はあるのだが、冗長的に感じてしまったのが残念。


それでも「町」が意志を持って消滅する理不尽さや汚染や拡大などの詳細な設定は面白いし、色々な形で関わった人々をそれぞれ主役とし、エピローグとプロローグでつながる構成は良かった。


読後の満足感はやや物足りないが、独特の世界観・表現力がある作家さんだと思うので今後に期待したい。


読了日:2009.12.17
★★★☆☆


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2009年12月18日

ruru (10:35)

カテゴリ:国内小説一般三崎 亜紀

『となり町戦争』三崎 亜記

となり町戦争 (集英社文庫)となり町戦争 (集英社文庫) (2006/12) 三崎 亜記

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となり町と戦争が始まり、僕は偵察業務従事者となった。
戦争といっても目に見えた闘いがあるわけでもなく日常は淡々と過ぎていく。
「本当に戦争は行われているのか?」
僕は疑問を感じているが、広報が知らせる戦死者は増える一方で・・。

 

奇抜な設定で注目のこの作品。

以前から気になっていたけれど、この手の作品はがっかりすることも多いので、読みたいと思いながらも今まで避けていた。

たまたま図書館で見かけて読んでみたところ、なかなか面白くて想像以上に良かった。

 

架空の時代と場所設定の下、公共事業として戦争を行う異常な行政と無関心な住民たちを描く。

 

決まったことだからと疑問ももたずに”戦争”を遂行することだけに精力を傾ける役人たち。 

戦争を生業とする戦争コンサルティング会社の介入。

戦争が始まったと聞いても自分たちの利害にしか興味を持たない住民たち。

一部の戦争に関わりを持った人間のみが戦死していく事実。

 

 

目に見えない戦争ということで、風刺的かつ抽象的に話が進むが、時折作者の意図が直接的に描かれている。

主人公の思索のシーンは逆にストレートすぎるくらいだ。

 

戦争は悪いとたたきこまれながらも、大義名分の下戦うことは正当化されている現状。
消極的な否定はあるが、積極的に否定ができるのか?
実際の戦争は予想し得ない形で僕たちを巻き込み、取り込んでいくのではないか?(P76・77要約)

「現にここにある戦争」を、僕たちは否定することができるのであろうか?(P77抜粋)

 

僕たちは、自覚のないままに、まわりまわって誰かの血の上に安住し、誰かの市の上に地歩を築いているのだ。(P193抜粋)

 

 

 

この作品では一般会社員の”僕”が、偵察員という客観的な立場で、戦争についてぼんやりと疑問を持ったりほんの少し恐ろしい体験をすることで、やっぱりこれからも「変わらぬ日常を送っていこう」と決意するところで終わる。

物事は必ず表裏一体なので、戦争を考えることで日常に思いを馳せるというのはセオリー通り。

奇抜な設定ながらも内容としてはオーソドックスでわかりやすい小説と言える。

 

市役所のとなり町戦争係香西さんとの関係はどうでもいいといえばどうでもいいが、話を進める主人公のパートナーとしては適任だっただろう。

 

しかし、やはり読まず嫌いは良くないと改めて感じた。

どんどん読んでみないと自分の琴線に触れる小説にも出会えないのだから。

私にとってこの作品は、絶賛とはいかないまでも予想以上に気に入った作品だった。

 

読了日:2009.12.12
★★★★☆

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2009年12月15日

ruru (13:49)

カテゴリ:国内小説一般三崎 亜紀

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