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『流星ワゴン』重松 清

 

流星ワゴン

流星ワゴン (2002/02) 重松 清

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永田一雄はリストラで職を失い、息子の暴力と妻の不倫で家庭は崩壊、離婚寸前で全てに絶望しているところだった。その上、故郷の父は疎遠なまま余命いくばくもないという状態である。
「・・もう死んだっていいや・・。」駅前にたたずんでそう考えた時、1台のワゴン車が目の前で停まる。
それが幽霊の橋本さん親子がナビゲートする過去へのドライブの始まりだった。

主人公の一雄と息子の広樹、一雄と父親のチュウさん、そして橋本さん親子の父子の物語である。

橋本さん親子は、免許取得直後のドライブで事故死した幽霊親子。
息子の健太君が成仏できずにいるため、もう5年もドライブを続けている。

父親は朋輩のチュウさんとして一雄と同じ歳で現れ、共にこの車の乗客となる。

死を望んだ息子と死にかけている父親。
生と死の狭間に存在するモノたちが時空を超えて共に旅をするのである。

一雄と父親であるチュウさんは、同じ父親の立場となり、対等な付き合いをすることで初めて心を近づけることができるようになる。

「親の心子知らず」「子の心親知らず」とやりあうシーンがあるが、互いに愛情がないわけではない。
ただ分かり合えなかったのである。

一雄と広樹もそうではないのか。

一雄も特別家庭を顧みない父親というわけではないようである。
少しずつの心のずれが大きなひずみとなって二人の距離を引き離しているのだ。

物語は、2世代の父子の触れ合いやそれぞれの心の動き、葛藤などが丹念に綴られていく。

人生に取り返しがつかないことはない。

橋本さん親子とのドライブはそのことに気付かせてくれる。

橋本さん親子に至っては、死んでからこそ父子の絆を深めたことになっているのだ。
この辺は希望をこめたファンタジー的な作りだが。

大切な分かれ道である過去へドライブ、というタイムスリップネタはありきたりだが、その過去でどんなにあがいてもやり直せないところがこの小説の面白いところだ。

色々と抵抗を試みても、決して起こったことは変えられない。
過去は過ぎたこととし、今ある現実を受け入れて道を切り開いていくべきだという姿勢が良い。

ただ、永田家にしろ橋本家にしろ母親の影が薄い。
徹底して男同士の物語なところが、女の私としては100%感情移入できずやや残念だった。

読了日:2009.10.29
★★★★☆

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2009年10月30日

ruru (21:52)

カテゴリ:国内小説一般重松 清

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