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『楡家の人びと 第3部』北 杜夫

太平洋戦争が激しさを増す中、楡家の人々も戦争によってばらばらになっていく。
峻一は南洋の島で生死の境をさ迷い、藍子の恋人城木は戦死、病院で自由に暮らしていた米国や熊五郎も中国へ徴兵されていく。
空襲で病院は壊滅状態となり、日本は終戦を迎える。
残された者たちは何を思うのかー。

完結編は戦中から終戦まで。
繁栄を極めた楡家の没落を描いているが、時代に翻弄される一人間たちを描いているとも言える。

戦争はお気楽な一家に大きな影を落とす。
第一部はユーモアに溢れていたが、浮世離れした面々に襲い掛かる現実は徐々に厳しさを増していく。

財産を失い、希望を失い、残されたのは諦めのみか・・。

しかし龍子だけは自分を失っていない。
母は強し、と単純でないところが楡家。
身勝手なお嬢様だったからこそ時代に飲み込まれることなく自分を保っていたという皮肉と力強さを感じた。
疲弊感漂う中楡病院の復活を考えるのは龍子ならではだろう。

魅力的な登場人物たちを楽しみながらも、人間の一生と抗うことができない時代の流れの無常さを感じる小説だった。


読了日:2013.7.
★★★★★

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2013年7月19日

ruru (11:16)

カテゴリ:国内小説一般北 杜夫

『楡家の人びと 第2部』北 杜夫

失火による楡病院の焼失、カリスマ院長楡其一郎の突然の死。
跡を継いだ娘婿の徹吉は、病院の建て直しに奔走する。
妻の龍子とはそりが合わず、子供たちとも距離を置いて仕事と研究に没頭する徹吉。
病院は徐々に軌道に乗り始めるが、時代は第二次世界大戦へ突入し楡家に新たな試練が・・。

関東大震災を逃れたものの病院は失火により焼失。
建て直しが軌道に乗り始めた頃には戦時色が高まる激動の時代を迎える。

其一郎の息子たちの代と徹吉の子供たちの代がリンクする第二部。

物語中の徹吉は斎藤茂吉がモデルだが、短歌は一切登場せずやや神経質な研究者として描かれている。

第二部にして北杜夫こと周二が登場。
少し気弱な少年像は後年の躁うつ病と繋がるものを感じさせる。
斎藤茂太こと峻一の飛行機好きエピソードなどは、彼らの幼少期そのままなのだろうと想像できて面白い。

また周二の姉藍子の女王様キャラも楡家らしい存在感があって良い。

個性的な登場人物たちの人間ドラマであると共に、昭和初期という時代が見えてくる壮大な小説。

のんきで奇天烈な其一郎の時代から徐々に暗さが増して行くのが寂しく、第三部になかなか入ることができない。


読了日:2013.5.
★★★★★

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2013年5月26日

ruru (12:18)

カテゴリ:国内小説一般北 杜夫

『楡家の人びと 第1部』北 杜夫

ドクトル・メヂチーネこと楡其一郎が一代で築いた精神病院・楡病院。
異彩を放つ建築の大病院で暮らす一族を描く大河小説第一部。
繁栄を極める大正7年から、病院が焼失し、其一郎が倒れる昭和元年まで。

言わずと知れたことだが、北杜夫が自身の一族をモデルに描いた大河小説である。

祖父斎藤紀一が楡其一郎、父斎藤茂吉が徹吉、自身が周二、兄斎藤茂太が峻一。

随分昔にも読んだ本だが、昨年世田谷文学館で開催された「齋藤茂吉と『楡家の人びと』展」を観た際に買いなおした。
これは丁寧なパネル展示でとても良い展覧会だった。
先に小説を読み返しておかなかったのが悔やまれる。

第一部では、不思議な魅力を持つ其一郎と子供たちを中心に、楡病院での生活と人間関係が描き出されている。

一風変わった個性的な人々ばかりでモデルやネタに困ることは無かっただろう。

精神病院を舞台にしながらも自由奔放、患者への愛情も感じられる。

大正から昭和へと変わり行く時代背景と共に濃厚な人間ドラマが展開されるが、軽快な文章ですらすらと読める。

よく知る斎藤茂吉や斎藤茂太・北杜夫兄弟が頭に浮かんでくるし、描かれていることも現実に近いのだろうと想像しながら読むのがとても楽しい。

其一郎が亡くなり楡病院が傾き雲行きが怪しくなってきたところで終わる。
今後の展開を考えると、奇人変人のオンパレードに笑える第一部が一番明るくて面白いかもしれない。


読了日:2013.5.
★★★★★

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2013年5月23日

ruru (01:32)

カテゴリ:国内小説一般北 杜夫

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