長嶋 有の最近のブログ記事

『問いのない答え』長嶋 有

東日本大震災の後、小説家のネムオはツイッター上で問いの半分を隠して回答を先に考えるという言葉遊びを始めた。
質問が全文発表された時の盛り上がりを楽しみに様々な職業、年齢の男女が参加して繋がっていく。
積極的で実際に集まって仲良くなる人々もいればただ読むだけの人もいて・・ツイッターを通して同じ時間を過ごす者たちの群像劇。

あまりに登場人物が多く、文章がゆるゆると続いていくので最初は戸惑いもあったが、段々とそれぞれの人となりや生活背景がはっきりと見えてくる。
震災や巷で起こった事件、個人的な事情に加え多くの思考がゆるやかに描かれる。

ツイッター上のただの言葉遊び。
しかしつぶやかれる言葉には投稿者の実生活や思考が反映されている。

不完全な一つの問いに対して複数の答えがつぶやかれるというズレの楽しさ。
短い言葉の字面を離れて予測もつかない思考が交差し合う面白さと浮かび上がる人間模様。

人の数だけ答えはあり、言葉は人と人を繋げるが文字だけで全てを表現することは難しい。
問いですら本当は一つとは限らないのではないか。

会ったこともない人に勇気付けられたり、同じ時間に笑いあったり・・。

著者らしいゆるい空気感の中、現代の人の繋がり方も悪くないと思えてくる群像劇だった。
ふわりとした文章の中に鋭い人間観察眼が光るところはさすが。


読了日:2014.2.2
★★★★☆

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2014年2月 2日

ruru (23:17)

カテゴリ:国内小説一般長嶋 有

『佐渡の三人』長嶋 有

物書きの道子は、ひきこもりの弟と父と共に佐渡へ向かう。
不思議な距離感を保ちながらの親子三人旅。
メンバーを変えて二度、三度と実施された納骨の旅を描く連作短編集。

祖父母の介護をするひきこもりの弟、再婚して別に暮らす父、主人公である道子。
近所に暮らすおじちゃん、おばちゃん、エリートの従兄弟など個性的な親族たち。

順繰りに生を全うし、次々に佐渡へ送られていく。
介護や死が淡々とおかしみを持って描かれているところが面白い。

どこか他人行儀、それでいてお互いを尊重している人間関係が羨ましくなってくる。
変なのにそれで良いと思えてしまうのだ。

常に客観的な視点を持つ登場人物たちの個性や距離感といった著者独特の世界観が魅力的。
死について語られながらも力を抜いて読めるのも不思議なところ。


読了日:2013.4.19
★★★★☆

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2013年4月21日

ruru (00:51)

カテゴリ:国内小説一般長嶋 有

『祝福』長嶋 有

Aは結婚披露パーティで久しぶりに昔の職場の仲間と再会する。
昔の彼女Qと会話をして恋人なのか曖昧なLの部屋へ・・。『祝福』他淡々とした男女の日常を描く短編集。

まだ何作かしか読んでいないが、長嶋有の作品の特徴は"観察""思索""妄想"ではないかと思う。
この短編集はそれがより顕著に現れていたように感じた。

しばらく読み進めても主人公が男か女か見えてこなかった話が多い。
性別を超えて人間を描いているからだろう。

何か大きな事件が起こるわけでもなく、だらだらとした時間の流れの中に、しかしどこか人間の真髄を突くような言動がある。
読めば読むほど独特の世界観が癖になる作家。

まだ読んでいない作品があるのでこれから読むのが楽しみ。

読了日:2013.3.24
★★★★☆

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2013年3月27日

ruru (00:55)

カテゴリ:国内小説一般長嶋 有

『ジャージの二人』長嶋 有


ジャージの二人 (集英社文庫)
長嶋 有

小説家志望で無職の"僕"は5年ぶりに軽井沢の山荘へやってきた。
東京に残った妻は他の男に恋愛中。
3回目の結婚も上手くいっていないらしい父と二人で過ごす夏の日々。

著者らしいゆるくけだるい雰囲気の小説。

出来事や風景を淡々と書き連ねる中に登場人物たちの心理が繊細に描写されている。

話に盛り上がりはなく平坦な展開なのだが、登場人物の感情がじわりと心に入り込んでくる独特の世界観に惹きつけられる。
出来事や行動を細かく観察していく文章も好み。

軽井沢の山荘といえば聞こえが良いが、実際はただのぼろ家。
携帯の電波も入らずスーパーも遠い。
父子はもらい物のジャージを着てひたすら怠惰に過ごす。

義妹を含めて、親子の微妙な距離感が良い。
お互い突っ込みすぎず、かといって無関心ではない不思議な距離感を保っている。

表題作『ジャージの二人』と一緒に翌年夏を描いた『ジャージの三人』も収録されている。
三人目は一体誰かと思えば、"僕"の妻なので驚いた。

一世一代の恋をしていたと言い切る妻は、ブランドジャージを山荘に持参してそっと腕を組んできたりする。

小学校名の入ったジャージを着るゆるい父子とブランドジャージの妻の対比や僕の心の中を駆け巡る妻への感情の波が繊細に描かれていてこちらの小説も良かった。

どこか切ないのだが、現実から離れてただぼんやりと思考する機会があるのは羨ましいなどと思ってしまった。

読了日:2013.1.3
★★★★☆

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2013年1月 3日

ruru (17:59)

カテゴリ:国内小説一般長嶋 有

『猛スピードで母は』長嶋 有

母親の代わりにやってきた父の愛人洋子さんと薫のひと夏の交流を描いた『サイドカーに犬』。
突然再婚を宣言した母を冷静に見つめる慎の毎日を描いた『猛スピードで母は』。全2編。

『サイドカーに犬』は両親の離婚直前に父の愛人と交流する娘の視点、『猛スピードで母は』は、シングルマザーである母の恋愛を冷静に見つめる息子の視点で描かれている。

どちらの作品も、感受性豊かな子供たちの心情が見事に表現されていた。

登場する大人たちは時に子供のように振る舞い、子供たちは時に大人のような冷静な観察眼を持つ。
近すぎず遠すぎない親子関係の微妙な距離感が味となっていて、独特の雰囲気を醸し出している。

子供たちは常に幸福でも不幸でもなく、状況に対して淡々と受身だ。
『サイドカーに犬』では、母親が出て行っても悩むことなく突然現れた他の女性を受け入れる。
『猛スピードで母は』では、母親が恋人と旅行に出かけて帰らなかった夜に、そのままいなくなってしまっても納得できると考える。

自ら生活を変えることが難しい子供だからこそ、順応力に優れているのか。
2つの作品とも大人が考えるような子供像ではなく、子供そのものの心情がリアルに描かれているように感じた。

しかし暗さはなく、周りの大人たちの力強さで爽やかな読み心地となっている。

力の抜けた文章で繊細な人間心理が表現されていて良い作品だった。

読了日:2012.9.20
★★★★★

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2012年9月21日

ruru (10:44)

カテゴリ:国内小説一般長嶋 有

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